トップ ZEROC PLUS 排出量算定 【Scope3】環境省「1次データを活用した算定ガイド」を解説 !
排出量算定

【Scope3】環境省「1次データを活用した算定ガイド」を解説 !

公開日 2025.11.21 最終更新日 2025.11.21

松井 大輔

(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応

世界的に気候変動が加速するなか、企業の脱炭素化は喫緊の課題です。特にサプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量、いわゆるScope3の開示・排出量削減の重要性が高まっています。

大企業を中心にサプライチェーン排出量を開示する企業が増えてきましたが、特にScope3の算定に当たっては、他社データを用いた算定を行うことが難しいため、業界平均値(2次データ)が用いられることが一般的です。しかし2次データでは、業界平均値の排出係数を算定に用いるため、算定の負荷は下がるものの他社が開発した環境配慮原料を調達したりしても、自社Scope3の数値に反映されにくいという欠点がありました。

しかし、1次データは、各企業によってその数値の算出方法やデータ品質が異なるため、業界平均である2次データと比較して数値の妥当性がむしろ損なわれてしまう場合もあります。こうした課題を踏まえ、環境省は2025年3月に「1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド」を公表し、実測値である1次データの活用を推進しています。

本記事では、Scope3についての基礎知識から1次データの重要性、さらに環境省の1次データガイドで記載されている具体的な活用ステップまでわかりやすく解説していきます。

脱炭素化を推進したい企業担当の方は、ぜひご参考にしてください。

Scope3排出量算定とは 

そもそもサプライチェーン排出量とはなんでしょうか。ここではサプライチェーン排出量の基礎的な知識と、それに伴うScope3の具体的な内容を解説していきます。

サプライチェーン排出量 

サプライチェーン排出量とは、「企業のサプライチェーンすべてにおける温室効果ガス(GHG)排出量」のことを指します。サプライチェーンとは、「原材料の調達から製品の製造、物流、販売を経て、消費者の手に届くまでの一連の流れ」です。サプライチェーン排出量には「Scope」という考え方があり、「Scope1」「Scope2」「Scope3」に分けられます。

サプライチェーンの排出量は、サプライチェーン排出量=Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出」で算定されます。

Scope1(直接排出量)事業者による直接のCO2排出量のこと
Scope2(間接排出量)他社から供給された電気や熱、蒸気の使用に伴うCO2排出量のこと
Scope3(間接排出量)Scope1.2以外で排出されるすべての間接排出量のこと

Scope1.2に関してはこちらの記事に詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

本記事のメインとなるScope3について、次のトピックにてさらに解説していきます。。

出典:環境省「サプライチェーン排出量算定をはじめる方へ」

Scope3とは

Scope3とは事業者のサプライチェーンの上流、そして下流に位置する製品の輸送、使用、廃棄などで排出される全体的な間接温室効果ガス、つまりScope1.2以外の間接排出量のことです。

Scope3を構成する15カテゴリ一覧リスト

Scope3には以下のような15のカテゴリが存在します。カテゴリ1〜8までが上流で、9〜15までが下流に該当します。

1. 購入した製品・サービス 
2. 資本財
3. Scope1.2 に含まれない燃料やエネルギー関連活動
4. 輸送、配送(上流) 
5. 事業活動から出る廃棄物 廃棄物
6. 出張 
7. 雇用者の通勤
8. リース資産(上流) 
9. 輸送、配送(下流) 
10. 販売した製品の加工 
11. 販売した製品の使用 
12. 販売した製品の廃棄 
13. リース資産(下流)
14. フランチャイズ 
15. 投資 

出典:環境省「サプライチェーン排出量算定をはじめる方へ」

Scope3についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

1次データとは

一次データとは

Scope1.2については、自社での排出量削減対策が比較的容易であるといわれています。一方、サプライヤーメインの対策となるScope3 の排出量削減は、困難が伴うといわれています。しかし事業活動全般の脱炭素化推進には、Scope3の排出量削減が重要であるのは明白です。

そのためには業界平均値である2次データの活用ではなく、企業バリューチェーン内の固有活動からなる1次データの活用が不可欠です。環境省は2025年3月、1次データの活用を推進するために、「1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド」をリリースしました。

ここではガイドによる1次データの定義や、種類などを解説していきます。

定義

環境省のガイドは、Scope3 排出量の算定を行う企業が対象です。そのためGHG排出量の算定と報告の基準を開発している国際イニシアチブ「GHGプロトコル」に沿い、1次データを「企業バリューチェーン内の固有活動からのデータ」と定義しています。

具体的には、「ライフサイクルを対象とした製品1個あたりのCO2排出量を定量的に表したもの」です。

種類

データの種類は製品ベースと組織ベースの2種類があり、詳細は以下の通りです。

種類概要
製品ベース製品単位の排出量データとして算定
組織ベース組織レベルの排出量 (Scope1.2.3) を配分等の計算により切り出したデータで算定

品質評価

GHG プロトコルでは、データの品質を判断する基準としてデータ品質指標を以下のように定義しています。

  • 技術的代表性 

データが実際に使用されている技術をどの程度反映しているか

  • 時間的代表性 

活動の実際の時間、たとえば年や時期などをどの程度反映しているか

  • 地理的代表性 

活動の実際の地理的な場所、たとえば国や拠点をどの程度反映しているか

  • 完全性 

関連する活動を統計的にどの程度代表しているか

  • 信頼性

 データを取得するために使用された情報源や、データの収集方法、検証手続などの信頼性はどの程度か

2次データと何が違うのか

2次データとは、「企業バリューチェーン内の固有活動ではないデータ」のことで、いわゆる業界平均値と呼ばれるものです。環境省の排出原単位データベースや 、産業技術総合研究所が開発しているIDEA(Inventory Database for Environmental Analysis)などが主なデータベースになります。

1次データと2次データの違い

データ名概要
1 次データ企業バリューチェーン内の固有のデータ。つまりはサプライヤーから直接提供を受けた排出量データのこと
2次データ企業バリューチェーン内の固有活動ではないデータ。つまり環境省などの排出原単位データベースなどによる業界平均値のこと

2次データの課題 

繰り返しになりますが2 次データとは、データベースにある業界平均値のことです。前段でも解説した通り、サプライチェーン排出量の算定は「活動量×排出原単位」です。そのため2次データの活用では、サプライヤーそれぞれの排出削減努力が、排出量に反映されにくいという課題があります。

例えばある製品を製造する場合に、複数のサプライヤーが存在するとします。それぞれのサプライヤーは製品に対して、GHG排出量削減の努力を行い成果が出ていますが、2次データの使用では排出原単位は同一になってしまい、その成果が反映されません。しかし企業固有の1次データであれば、それぞれのサプライヤーの削減努力を反映することが可能です。

1次データを活用する意義とメリット

1次データのメリット

ここでは1次データを活用することで得られるメリットについて、次の3つの視点から解説していきます。

脱炭素化社会への推進

1 次データを活用する企業が増加することで、脱炭素化社会推進が可能です。なぜなら企業はサプライヤーに排出削減への要請や支援をしたり、もともと排出量の少ない事業所を選択したりなど、企業の事業活動における脱炭素化対策の選択やアクションが促進されるからです。さらに要請を受けたサプライヤーは、自社の排出量を詳細に把握する必要性を認識することで、排出量削減の努力に繋がります。

このような脱炭素化への意識の高まりがサプライチェーン全体に広がることは、一般消費者にも大きく影響を及ぼし、社会全体での排出削減が促されていきます。

Scope3 排出量削減の加速

1次データは企業バリューチェーン内の固有データであるため、サプライチェーンのなかでも大量にGHG排出量の存在している場所やサプライヤーの特定を可能にします。また特定することで、Scope3排出量の可視化を可能にするため、排出量削減に向けて具体的で効率的な取り組みを実現でき、Scope3排出量削減を大きく加速させます。

サプライヤーエンゲージメントの向上

1次データの活用により、企業はScope3排出量削減に向けてサプライヤーに積極的なアプローチを実施するため、サプライヤーエンゲージメントの向上が見込めます。サプライヤーエンゲージメントの向上は、サプライヤーの排出削減に向けたモチベーションを高めるためにも非常に重要です。企業はサプライヤーに対してさまざまなアプローチを試みることで、サプライヤーの意識も向上し、脱炭素化に向けた信頼関係がより強固となります。

1次データ活用の具体的なステップ 

1次データ活用の具体的なステップ 

ここからは1次データ活用のための具体的なステップを、「製品ベース排出量データ」と「組織ベース排出量データ」でそれぞれ解説していきます。

製品ベース排出量データを活用

製品ベース排出量データ活用の場合は、まずはScope3のカテゴリ1に占める割合や、データの入手可能性をもとにして、項目の候補を選定する必要があります。その後、サプライヤーから製品ベース排出量データを排出原単位で収集し、最後に自社のデータ活動量を乗じて計算します。

具体的なステップは以下の通りです。

1. 活用する項目の決定

カテゴリ1に占める割合の大きさや、入手可能なデータなどから製品ベース排出量データを活用する項目を決める

2. 製品ベース排出量・データの収集

1 次データを活用する製品項目のサプライヤーから、当該製品の排出量データを収集し品質を評価する

3. 算定

自社にあるデータ活動量(サプライヤーからの調達量)とサプライヤーから入手した排出原単位を乗じて算定する

  • 製品ベース排出量データを活用した Scope3 排出量算定の計算イメージ

出典:1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド

組織ベース排出量データを活用

組織ベース排出量データを活用する場合は、まず製品ベース排出量データと同様に、カテゴリ1に占める割合や、データの入手可能性をもとにして製品項目の選定を行います。そしてサプライヤーにおけるScope1.2.3の排出量の情報を収集し、取引金額等をもとに「配分」して、Scope3 排出量を算定します。このように組織ベース排出量データには「配分」という手順が含まれているのが、製品ベース排出量データの算定と異なる点です。

組織ベース排出量データを活用した Scope3 排出量算定の基本的な流れは、以下のとおりです。

1. 活用する項目の決定

カテゴリ1に占める割合の大きさや、データの入手可能性などから組織ベース排出量データを活用する製品項目を決める

2. 組織ベース排出量・データの収集

1次データを活用する製品項目のサプライヤーのScope1.2.3 排出量を収集し、入手した1次データの品質を評価する

3. 算定(配分)

パターンA:サプライヤーの組織レベルの排出量(t-CO2e)に、当該サプライヤーとの取引金額(円)を乗じ、Scope3 排出量算定事業者が当該サプライヤーから購入した製品・サービスに係る排出量を算定する

パターンB:サプライヤーの組織レベルの排出量を総売上高で割って原単位化(t-CO2e/円)した上で、Scope3 排出量算定事業者の当該サプライヤーとの取引額などを乗じて排出量を算定する

  • 組織ベース排出量データを活用した Scope3 排出量算定の計算イメージ

出典:1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド

算定結果の開示 

1次データを活用したScope3排出量の算定結果の公表にはさまざまな手段があります。例として、企業ホームページへの掲載やサステナビリティレポートの公開、有価証券報告書等の各種媒体での公表などが挙げられます。そのほか国際イニシアチブであるCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の質問に答える方法も有効でしょう。

公表するにあたっては、Scope3や各カテゴリのサプライヤーから、直接提供を受けたデータで計算された排出量の割合を開示する必要があります。

まとめ

環境省がリリースした「1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド」について解説しました。1次データの活用は、サプライヤーを含めた企業の脱炭素推進、特にScope3の排出削減に非常に有効です。

本記事では、Scope3についての基礎知識から1次データの重要性、さらには活用の具体的なステップまでわかりやすく解説しましたが、これらの取り組みには専門的な知識が不可欠です。

株式会社ゼロックは、Scope3の算定はもちろん、事業活動における環境負荷をどう低減していくかのコンサルティングも含め、一気通貫でご支援が可能です。どうぞお気軽にお問い合わせください。

グリーンウォッシュ連絡窓口
「上辺だけ」の環境主張を見つけた方は、ぜひご報告ください。
私たちは、LCAの専門家として世の中に正しい脱炭素行動が広まるように貢献します。
資料ダウンロード
脱炭素経営のお役立ち資料をご用意しています。
弊社のサービス資料もこちらから確認いただけます。
お問い合わせ
弊社サービスに関するご相談やお見積りなど、
お気軽にお問い合わせください。