ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?事例や手順についてコンサルタントが解説

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?事例や手順についてコンサルタントが解説

LCAの概要

LCA=「ゆりかごから墓場まで」定量的に評価する手法

LCAとは、Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)の略称で、一言で言えば「環境負荷を見える化する手法」のことです。

製品やサービスの素材や原材料の調達から、製造、流通、消費、廃棄に至るプロセス全体での環境負荷を定量的に評価するのがLCAの特徴になります。

製品のゆりかごから墓場までの一例
https://www.jemai.or.jp/lca/dd4ht3000000076a-att/a1528715510852.pdf

例えば、エアコンの例を考えてみると、製造時にCO2をそれほど排出しませんが、使用時に電気が必要となります。この電気を発電するために、化石燃料を燃やす際にCO2が大気中に排出されています。

そして、エアコンがライフサイクルで排出するCO2を見ると、「使用時」のCO2排出量の比率が圧倒的に高いことがわかると思います

ルームエアコンの製造から廃棄までに排出されるCO2の量
出典:エアコンと温暖化の関係

つまり、環境負荷の低いエアコンを開発するためには、いかに使用中の消費電力の低いエアコンにできるかが大きなポイントということになります。

このように、ある製品やサービスの環境負荷を評価する場合、製造・使用・廃棄の中のどのタイミングでCO2が多く排出されるのかをライフサイクルで見ることが重要になります。

「製造」や「使用」の段階だけに注目して「環境にいい商品」がクローズアップされることがありますが、「廃棄」の段階までを含めたライフサイクルで考えてみると、CO2を大きく排出しており、実は環境負荷の低減につながっていないことも多々あります。

LCAを行うことで、製品やサービスのライフサイクルにおける環境負荷を定量化することができるのです。

なぜ今LCAなのか?

LCAの特徴は製品やサービスの環境影響を理論に基づいて、科学的かつ客観的に評価できる点にあります。

例えば、環境問題として「地球温暖化」だけがよく取り上げられますが、実はそれ以外にも、オゾン層の破壊や酸性化、生物多様性など様々な問題が挙げられます。

また、GHG(温室効果ガス)の中でも、比率の多いCO2が注目されがちですが、メタンやフロンも同様に温暖化に寄与する物質となります。(メタンの温室効果はCO2の約25倍)

LCAでは、地球温暖化だけではなく、上記で示したオゾン層の破壊や酸性化、富栄養化、光化学オキシダント生成など様々な観点での環境影響評価を行います。

また、その過程でCO2以外の温室効果ガスについても定量化するため、環境負荷を正しく認識っすることが出来ます。

カーボンニュートラルを実現するためには、正確な現状を把握した上で、効果的に脱炭素につながる施策を推進していく必要があり、LCAの重要性が年々増しているのです。

SCOPE3との違いは?

よく「LCA」と「SCOPE3」は混同されますが、それぞれ異なる意味を持つ言葉となります。

LCAはあくまでも環境影響評価の手法を指しますが、「SCOPE3」とは、いわゆるサプライチェーンと呼ばれる原料調達から製造、物流、販売、廃棄に至る、企業の事業活動全体のことを表します。

そして、SCOPE3排出量というのは、SCOPE1~3の全ての段階での排出量を表します。

SCOPE3の算定には基本ガイドラインが定められており、決められたルール通りに算定が必要となります。SCOPE3を算定する際にはLCAの知識が必要になります。

サプライチェーン排出量の概要
出典:環境省グリーンバリューチェーンプラットフォーム

また、SCOPE3のルールには則らずに単に「企業のLCA」を算定するケースもあります。この場合、GHG排出量の算定基準や算定方法が異なります。

ざっくりとした特徴だと、企業のLCAは「質量」から求めることが多いのに対して、SCOPE3の場合はかかった「金額」から排出量を算定する場合が多いです。

LCAとSCOPE3の関係性

企業のLCAを行う場合、外部へのアピールやSBTとの絡みもあるため、原則はSCOPE3を算定するという方針でいくのが良いと思います。

LCAの流れ

(1)目的・調査範囲の設定

続いて、LCAの算定手順について大まかに解説していきます。

はじめに、何のために製品を評価するのか目的を決め、その目的に応じて「調査範囲」や「影響評価」の方法が決まります。

調査であれば何事にも言えることですが、調査目的によって調査フローや結果の解釈、最終的なアウトプットの形が変わってくるため、目的の設定は非常に重要なプロセスです。

LCAの国際規格(ISO14040及びISO14044)では下記について明確に記載することになっています。

項目内容
意図する用途社内での製品開発に使用環境報告書に記載して一般に公開、など
実施する理由新製品のCO2削減製品の環境負荷を一緒に知らせる
結果を伝える相手社内の製品開発チーム一般消費者
「一緒に開示することを比較主張」を行うかどうか

次に対象となる製品やサービスの製造・使用・廃棄までのライフサイクルフロー図を作成し、LCAにより環境負荷を算定する範囲を設定していきます。(システム境界の設定)

下の図はお米のライフサイクルフロー図です。

お米のライフサイクルフロー

(2)インベントリ分析

インベントリ分析とは、対象製品について、原材料・エネルギーや製品排出物のデータを収集し、環境負荷項目に関する入出力明細一覧を作成することです。

インベントリ分析では、ライフサイクルの各段階における材料使用量、エネルギー消費量、環境負荷物質排出 量、廃棄物量などに関する入力項目と出力項目のデータを収集し、計算します。

表1は、おにぎり(梅干し)1個の製造までの入力・出力項目の例を示したものです。

【機能単位】おにぎり(梅干し)1個の生産に関わる負荷

自社でライフサイクル全てのデータ収集をすることは難しいため、日本の平均値など代替性をもつ「二次データ」を利用することが多いです。代表的な原単位データベースには、「IDEA」があります。

「IDEA」は日本国内の全ての事業における経済活動を網羅的にカバーしており、全データセットを「日本標準産業分類」を中心とした分類コード体系で整理しています。

(3)影響評価

影響評価では、インベントリ分析の結果から得られた環境負荷物質の排出や資源の消費がどれだけ環境に影響を与えるかを評価します。

図にある通り、インベントリ分析結果に、それぞれの物質の地球温暖化係数のような「特性化係数」をかけ合わせ、それらを合計して一つの領域指標(カテゴリインディケータ)にまとめます。

温室効果ガスにはCO2やメタンのほか、亜酸化窒素、フロンなど100を超える物質がありますが、影響評価を通じて、これらの温室効果ガスの排出による地球温暖化への影響を一つにまとめたり、どの物質が最も寄与が大きいかを知ることができるため、地球温暖化への影響を効果的に削減するための方針を検討することが出来ます。

(4)解釈

解釈では、インベントリ分析と環境評価の結果をLCA調査の目的に照らし合わせて、「重要な項目」を特定し、調査結果から何が言えるのかを考えます。

その過程で、インベントリ分析で使われたデータに漏れがないかなどの「安全性」や、用いたデータの地理的範囲が統一されているかどうかなどの「整合性」のチェックが行われます。

また、実施したLCAの方法が国際標準規格ISO14044(2006)にの要求事項に合致しているかどうかを検証する「クリティカルレビュー」を行う場合もあります。

LCAを用いた環境ラベル

CFP(カーボンフットプリント)

LCAを使うとどのようなことができるのでしょうか。身近な例でいうと、CFP(カーボンフットプリント)が挙げられます。

CFP(カーボンフットプリント)とは、Carbon Footprint of Productsの略称で、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みです。

CFP(カーボン・フットプリント)の概念
出典:カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム

カーボンフットプリントの実施により、消費者にとっては、製品やサービスのCO2排出量について信頼できるため、関心が高まりCO2排出量を考慮した商品の購入につながることが期待されています。

また、企業側としても自社製品の環境負荷を客観的に見える化することで、消費者に対してのアピールやブランドイメージの向上にも繋がります。

日本生まれの環境ラベル:【エコマーク】と【エコリーフ】

LCAを活用した環境ラベルには、CFP(カーボンフットプリント)以外にも、「エコマーク」と「エコリーフ」というマークもあります。

名前は似ていますが、それぞれ準拠している国際規格やマークの持つ意味が異なるため、目的によって使い分けが必要となりますので注意しましょう。

その他、エコラベルには企業や自治体が独自で設定したものや海外のものまで多くの種類があります。下記のサイトにまとまっていますので、興味のある方は調べてみると良いでしょう。

参考:環境ラベルデータベース:https://www.env.go.jp/policy/hozen/green/ecolabel/f01.html

LCAで脱炭素経営を始めよう

ここまで説明してきた通り、これからのLCAはこれからの脱炭素経営にとってなくてはならない考え方です。

昨今、LCAを謳う商品やサービスを巷で見かけますが、ISOへの準拠や環境省のガイドライン対応について怪しいものが多いのが現状です。弊社では脱炭素経営コンサルティングの一環としてミニマムなLCAからISOレベルのLCAまで、お客様のご希望に応じて幅広く対応が可能なため、LCAで困ったことがあればぜひ一度弊社にご相談ください。

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