【実事例】SDGsウォッシュとは?回避対策のポイントを解説!

松井大輔
松井大輔

株式会社ゼロック 代表取締役 監修

目次

SDGsウォッシュとグリーンウォッシュの違いや企業の実事例、意図しない炎上を回避するための対策などを解説いたします

2023年に電通が行った消費者調査では、SDGsという言葉の認知率は91.6%で、2022年との比較だと5ポイント以上伸長しました。

2021年から見ると35ポイント以上増加しています。

認知や知識が拡大する一方で、「それって本当にSDGsに関係ある?」という企業や、「定量的な根拠はある?」とツッコミたくなる企業のSDGs施策も多く見かけます。

本記事では、「SDGsウォッシュ」とは何かを解説し、企業がSDGsウォッシュを回避にするために出来ることを環境コンサルタントの観点から説明したいと思います。

SDGsウォッシュとは

SDGsウォッシュとは何かをイメージ

SDGsウォッシュとは「みせかけのSDGs」

「SDGsウォッシュ」とは企業が公表しているSDGs取り組みに関する内容やデータが、見せかけや誤魔化し、酷い場合にはであったりと、実態とは違う状況であること指す言葉です。

「SDGsウォッシュ」に当てはまるのは、主に

  • 実態がないのにSDGsに取り組んでいるように見せかける
  • 実態以上にSDGsに配慮しているように見せかける
  • 不都合な事実を伝えず、良い情報のみを公表している

この3つのいずれかに該当するケースと言われています。

「SDGsウォッシュ」は、英語で「ごまかし」や「粉飾」を表す”whitewash”と「SDGs」を組み合わせた造語で、ヨーロッパで使われ始めた言葉です。

SDGsウォッシュはwhitewashという言葉をかけた造語です

SDGsウォッシュとグリーンウォッシュの違い

同じような文脈で使われる言葉に、「グリーンウォッシュ」という言葉もあります。

「SDGsウォッシュ」「グリーンウォッシュ」は日本において「同じ意味」で使われています。

呼び方が違うだけですが、「SDGsウォッシュ」を使う比率のほうが現在日本国内では多いようです。

グリーンウォッシュの「グリーン」は「環境」という意味。

「SDGsウォッシュ」も「グリーンウォッシュ」も、企業が実態がないのに環境に良いことをしているとアピールしている場合に、批判の言葉として使われます。

SDGsウォッシュに陥ってしまう2つの理由

企業がSDGsウォッシュに陥ってしまう理由を2つ紹介

企業がSDGsウォッシュに陥ってしまう理由は、大きく2つあります。

意図せずにSDGsウォッシュ

1つ目は、意図せずにSDGsウォッシュになってしまっているケースで、「SDGsについて理解していない」という理由が考えられます。

企業の担当者も悪気はなく、単純にSDGsについてよく知らないままなんとなく雰囲気でSDGsにこじつけてしまったり、正確な知識なく発信してしまっているケースになります。

SDGsには17のゴール169のターゲットが設定されており、それぞれ基準となる指標というものがあります。

17のゴールのロゴだけ掲げて、自社の事業と関連付けているだけの企業はよく見かけます。

意図的なSDGsウォッシュ

2つ目は、意図的に消費者やステークホルダーを騙そうとしているパターンです。

自社の活動を実態以上に大きく見せたり、意図的にSDGsの観点で良い事実だけを切り取って公表するケースがこれに該当します。

SDGsウォッシュが起こる2つの理由

SDGsウォッシュが起こる2つの理由は消費者意識やルールの無さ

SDGsウォッシュが世の中にまかり通ってしまう理由は、集約すると下記の2点になります。

  • 消費者の低い理解度(批判されない)
  • 明確なルールやガイドラインがない

消費者の低い理解度

まず1点目は、情報の受け手である消費者や発信者である企業がSDGsについて、あまり詳しくないということが挙げられます。

冒頭で記載した通り、SDGsという言葉の認知度は91%を超えている状況ではありますが、「内容まで含めて知っている」人はそのうち40.4%にとどまっています。

SDGsの認知率は2023年は91%
出典:電通 第6回「SDGsに関する生活者調査」

多くの人は、SDGsがなんとなく「良いこと」というイメージしかもっておらず、それに取り組んでいる企業も良い企業だと認識しているのが現状だと思います。

つまり、仮に企業が発信する情報がSDGsと関係無かったり、間違っていたりしても消費者は気づかないため、誰からも批判を受けることはないという状況になります。

明確なルールやガイドラインがない

また、世の中にSDGsウォッシュがはびこる理由2つ目は、明確なルールやガイドラインがないことが挙げられます。

現状、SDGsの情報公表に関わる明確なルールやガイドラインはありません

そのため、現状は各企業や組織がそれぞれ独自の判断でSDGsへの取り組みをアピールしている状況です。

加えて、SDGsに関わる法律もないため、仮にSDGsに全く関係のない活動をSDGsの一貫としてアピールしても景品表示法に該当しない限り、罰則などはありません。

もちろん、上場企業の場合は社会的な責任も大きいため、公表する情報は事前に第三者機関によるレビューを受けていることが多いです。

SDGsウォッシュ2つの実事例

ではここで、実際にあったSDGsウォッシュの実事例をご紹介いたします。

実際には何もしていない

SDGsウォッシュのよくあるパターンの1つ目は、

SDGsのロゴをWEBサイト等で掲げているだけで、実際には何もしていない(公表していない)

パターンです。

例えば、下記の画像はある中小企業のHPの抜粋なのですが、SDGsの取り組みと記載はあるものの、17のゴールのうち4つのロゴを使っているだけで、具体的な取り組みや活動実績、169のターゲットのどの指標にコミットするのかが何も書かれていません

SDGsウォッシュの実際の事例

この類のSDGsウォッシュは、特に中小企業に多い印象です。

公開情報の操作

2つ目は、

自社に都合の良い情報だけを公表し、都合の悪い情報公表しない

パターンです。

例えば、下記はEV用の電池を生産している会社の環境報告書の一部抜粋画像です。

報告の中では、16~20年度で電池1台あたりのCO2排出原単位を20%以上削減したとされています。

しかし、CO2排出量の計算においては、前提とする数値や算定方法によって結果が100倍以上変わることも多々あります。

この公表には、肝心な算定方法や基準とした数値が書かれておらず、このデータには全く意味がないと言うことが出来ると思います。

SDGsウォッシュの実際の事例2

このように、見せかけだけのSDGsウォッシュは本当によくあります。

上場企業であれば、第三者機関によるレビューが入ることが普通なのですが、今回紹介した中小企業だと、自社の独自の基準で計算した都合の良いデータを公表していることがほとんどなのです。

SDGsウォッシュが企業に与える影響

SDGsウォッシュが発覚したり指摘された場合、企業は一体どうなるのでしょうか?

以下に一例を紹介します。

消費者からの信頼を失ってしまう

SDGsウォッシュは消費者の信頼を裏切る

まず第一に考えられる影響として、自社の顧客を含む消費者からの信頼の低下が考えられます。

先程ご説明した通り、消費者全体で考えるとSDGsの意味まで理解している層は約4割程度に留まっています。

しかし、逆に言うと、4割の消費者はSDGsの内容を理解しており、しっかりとしたリテラシーを持っていると考えられます。

リテラシーの高い消費者は企業のSDGsウォッシュに敏感に反応するため、企業に対する信頼や評判の低下、そこから不買運動にまで発展する可能性があります。

特に現代では、たった1人の不信感でもSNSで炎上する可能性は充分あるといえるでしょう。

投資先としての魅力が低下

SDGsウォッシュは投資家の期待を裏切る

ESG投資の規模拡大とともに、投資家もまた企業のSDGsへの取り組みに注目しています。

消費者と比べて、機関投資家はプロ目線で投資対象となる企業を分析しています。

そのため、SDGsウォッシュかそうでないかは、公表されている情報を見ればすぐに分かります。

もちろん程度にもよりますが、SDGsウォッシュを行っている企業は遅かれ早かれ消費者からの信頼を失い、売上の減少につながると考えられ、投資対象としての魅力が下がり資金が集まりにくくなると言えるでしょう。

関連記事:【経営者必見】ESG経営とは?投資家の評価を下げないために心がけるポイントを解説!

景品表示法に違反してしまう

SDGsウォッシュは景品表示法に違反する可能性

先程、SDGsウォッシュには明確な規制やルール、ガイドラインがないことは説明しましたが、不当表示に関しては「景品表示法」という法律によって、規制がされています。

SDGsウォッシュに限った話ではありませんが、実体のない表示消費者を誤認させる表示は禁止されています。

行き過ぎたSDGsウォッシュは、法的に問題になる可能性があるということを理解しましょう。

SDGsウォッシュを防ぐ対策

ここまでお読みいただくと、SDGsウォッシュを行うことはリスクはあれど、企業として良いことは何もないということが伝わったのではないかと思います。

ここからは、意図しないSDGsウォッシュを避けるためにできることを、紹介したいと思います。

SDGsウォッシュにならないように対策しよう

誇張や曖昧な表現を避ける

まずは、過大に誇張した表現や曖昧な表現を避けるのが無難でしょう。

会社として公表する情報には、しっかりと責任を持ち、信頼性の低い情報や客観的に検証ができない情報の表現は、アピールどころかマイナスになる可能性があるということを理解する必要があります。

また、イラストや写真を用いる際はできるだけ、公表内容と関係性のあるものにして、写真による意図的な印象操作イメージの増幅を狙うことは避けましょう。

結局、第三者からツッコミが入った時に打ち返せるだけの根拠定量的な数値があれば問題ないということになります。

自社でチェック体制を構築する

SDGsウォッシュを防ぐために、情報を公表する前に自社でダブルチェックを行うことも有効な手段となります。

できれば、社内で情報公開に関するガイドラインマニュアルを作成して、それに則って情報を公表していき、そのガイドラインから逸脱していないかという観点でダブルチェックを行うことで、SDGsウォッシュに該当する可能性を減らすことができます。

公表前に各種ガイドラインを参照する

SDGsコミュニケーションガイド

現在、SDGsウォッシュについて、明確なルールやガイドラインはありません。

ですが参考になる情報はいくつかあります。

まずは、電通が公表している「SDGsコミュニケーションガイド」です。

SDGsの概要やSDGsウォッシュについて、「広告コミュニケーション」の観点からまとめられています。

2つ目は、やや古い情報となるのですが、環境省が公表している「環境表示ガイドライン」です。

環境表示ガイドラインは、環境配慮型の商品やサービスが消費者に訴求する際の適用範囲やポイントについて、事業者向けにまとめられた資料です。

評価・選択されることを目的に、事業者環境表示についてまとめられた資料です。

3つ目は、そもそものSDGsの概要や企業の取り組み方について、環境省がまとめている「すべての企業が持続的に発展するために」も参考になるので、ぜひご参照ください。

※上記に紹介した資料は2023年9月時点で最新となります

客観的かつ科学的な評価と公表が大事

SDGsや環境に関する、情報公開や広告出稿を行う時に共通して大事になってくるのが、「客観性」「科学的な評価」に基づいた情報なのかという点です。

特に環境分野では、ゆりかごから墓場までを一貫して考えるライフサイクル思考が重要で、商品やサービスの環境負荷の算定には、LCA(ライフサイクルアセスメント)を行うことが一般的です。

今後は消費者や投資家の目線も今まで以上にシビアになってくるため、SDGsウォッシュにならないように細心の注意を払いましょう。

弊社では、SDGsウォッシュのチェックを始めとした環境広告戦略の支援LCA算定支援をしております。

ご興味のある方はぜひ、お気軽に当社ゼロックまでご相談ください。

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