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カーボンフットプリント(CFP)とは?意味や算定方法まで専門家がわかりやすく解説

公開日 2022.08.09 最終更新日 2026.06.01

松井 大輔

(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応

カーボンフットプリント(Carbon Footprint)とは、製品やサービスがライフサイクル全体で排出する温室効果ガス量を示す指標です。気候変動リスクが高まるなか、企業の脱炭素化が推進され、サプライチェーン全体の排出量を「見える化」することが強く求められています。

自社製品の環境負荷を定量的に示せるかどうかは、取引先からの信頼、投資判断、ブランド価値に直結する重要な経営課題です。

本記事では、日常的にカーボンフットプリントを算定し、さらに環境ラベルプログラムの内部検証員・登録レビューアとしても活動する筆者が、

「そもそもカーボンフットプリントとは何か」
「どのように算定するのか」
「メリットや課題は何か」

を、ビジネスに役立つ視点からわかりやすく解説します。カーボンフットプリントの理解を深め、企業活動にどう活かせるのかを考えるきっかけとして、ぜひご一読ください。

カーボンフットプリント(CFP)とは

炭素の足跡を示すカーボンフットプリントのイメージ

カーボンフットプリント(以下CFP)の意味や注目される背景、混同されやすいライフサイクルアセスメント(LCA)との違いを解説していきます。

CFPとはライフサイクル全体で排出される温室効果ガス 

CFPは、日本語に訳すると「炭素の足跡」という意味です。製品やサービスの価値は「使用段階」にだけある訳ではありません。たとえば、私たちが日常的に使う製品には、以下のような一連のプロセスを経る必要があります。

これら製品の一生といえるライフサイクル全体で排出される温室効果ガスを、CO2に換算した値がCFPです。

車を例にすると、鉄鋼材をつくる段階で大量のエネルギーが必要になり、走行時にはガソリン燃焼によるCO2が発生します。役目を終えた車は解体・処理の工程でもエネルギーを使い、そこでも排出が生じます。そのため、事業者と消費者が共通の基盤として活用できる排出量の「見える化」が求められています。

  • 事業者は、可視化されたデータをもとにサプライチェーン企業と連携し、より効果的な削減策を実行できる
  • 消費者は、環境負荷の低い製品・サービスを選択し、自らの行動を低炭素型へとシフトできる

こうした“行動変容”を促すための指標が、CFPです。製品やサービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスを可視化し、企業の環境経営を強化するための有力な手段となります。

CFPが注目される背景

近年、CFPが注目される背景の主な要因として、以下の2つが挙げられます。

  • 国内の政策強化
  • 国際ルールの変化

日本では、2050年「ネット・ゼロ」の達成が掲げられています。脱炭素を加速する姿勢を明確にしたため、 企業にはサプライチェーン全体で排出量を管理し、透明性を確保することが強く求められるようになりました。また経産省がCFP表示ガイドやCFP実践ガイドを策定し、企業が算定・表示しやすい制度基盤を積極的に整備しています。

また、海外では欧州を中心に、公共調達や民間調達でCFPの提出が必須となり、グローバル企業を中心にCFPの対応が求められるケースが増加しています。

CFPとLCAの違い

LCAとは「ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)」の略です。ライフサイクルとは、製品やサービスの一生を指します。LCAは、その一連のプロセス全体で環境への影響を評価する仕組みで、評価対象は多岐に渡ります。

一方、CFPは、LCAをベースにしていますが、温室効果ガス排出量のみが評価対象です。

名称要旨
カーボンフットプリント(CFP)LCA手法をベースに温室効果ガス排出量を定量化し可視化する
ライフサイクルアセスメント(LCA)環境影響を製品やサービスの一生で評価する仕組みで、気候変動・オゾン層破壊・大気汚染・酸性化など、対象影響領域の範囲が広い

LCAに関しましてはこちらの記事もぜひご覧ください。

CFPとScope3の違い  

サプライチェーン排出量を表すScope1-3とCFPは、「目的」も「範囲」も異なります。CFPは、製品やサービスの温室効果ガス排出量を可視化しますが、Scope3は企業のサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を見る指標です。

名称要旨
カーボンフットプリント(CFP)製品やサービスのライフサイクルにおけるCO2排出量
サプライチェーン排出量(Scope1-3)企業の事業活動を通して排出した温室効果ガス排出量

Scope3についてはこちらでも詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。


カーボンフットプリント(CFP)の最新動向

ここでは世界と日本のCFPの動向について、最新の情報を基に解説していきます。

世界の現状:欧州(EU)の電池規則やDPPの動き

世界におけるCFPの動向は、「義務化・標準化・デジタル化」へと進んでいます。主な例として EU の欧州電池規則や、デジタルプロダクトパスポート(DPP)が挙げられます。

  • 欧州電池規則(欧州バッテリー規則)

EU域内で販売されるすべてのバッテリーの環境負荷を低減するための包括的な規制。EV用バッテリーやポータブルバッテリーを含む各種バッテリーについて、カーボンフットプリントの算定および申告が義務付けられている。

  • デジタルプロダクトパスポート(DPP)

デジタルプロダクトパスポート(DPP)は、EUの「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」に基づき、導入された新たな取り組み。製品等に付与されるデジタルIDカードで、持続可能性や循環性を支えるための情報が保存・収集・表示される。

これらは EU 域外の企業であっても、EU への輸出に伴い適用されます。いざというときに対応できるよう、情報収集や対応策の準備を進めておく必要があります。

欧州電池規則(欧州バッテリー規則)についてはこちらの記事もぜひご覧ください。

日本の現状:GX推進や国際ルールへの対応

EUをはじめとする国際社会では、主要輸出産業において温室効果ガス排出量の開示を市場参入の前提条件とする動きが一段と強まっています。こうした潮流を踏まえ、日本政府もGX(グリーントランスフォーメーション)推進法やGX2040ビジョンに基づき、脱炭素と産業競争力の両立を図る政策を加速しています。その中でCFPは企業の競争力を示す重要な価値指標として、今後さらに活用が進む見通しです。

GX(グリーントランスフォーメーション)については、こちらの記事もぜひご覧ください。

カーボンフットプリント(CFP)の算定方法

カーボンフットプリントCFPの計算方法

それではここから、CFPの具体的な算定方法について解説していきます。算定には複数のプロセスが必要となるため、専門的な知識が求められます。また、算定して終わりではなく、得られた結果をどのように社内で活用していくかについても、併せて検討することが重要です。

1. 算定方針の検討・目的の明確化

まずは、CFP算定の目的を明確にすることが重要です。「環境配慮型製品として市場で差別化したい」「企業価値向上や投資家からの信頼獲得につなげたい」、「社内でホットスポットを特定するため」など、そもそもCFP算定を行う目的を明確化します。

「何を、なぜ行うのか」という目的意識を明確にすることで、必要となるデータ粒度や算定品質も異なるため、非常に重要なステップです。

また、算定には複数部門にまたがるデータ収集やレビューが必要となるケースも多いため、関連部署間での認識共有と協力体制の構築が不可欠です。目的を共有し、共通のゴールに向けて取り組むことで、算定プロセスの効率化と結果の有効活用が進みます。

2.対象製品・システム境界の選定

算定目的を踏まえ、対象とする製品とシステム境界を決定します。算定範囲は、ライフサイクルフロー図の作成を行いながら、算定対象・範囲を明確にします。中間財と最終製品のように製品の用途や特性によって算定が必要となるシステム境界は異なります。例えば、中間財はCradle to Gate(原材料調達段階から製造段階まで)を算定対象とするケー、最終製品ではCradle to Grave(原材料調達段階から廃棄段階まで)を算定対象とするケースが多いです。

3.CFPの算定

決定した算定対象・システム境界に基づいて、入出力物のデータを収集し、CFP算定を行います。

  • 活動量(原材料の使⽤量、製造における電⼒消費量 等) × 排出係数(活動量の単位あたり温室効果ガス排出量)

活動量は基本的に実測値や配分した一次データを基本としますが、難しい場合は二次データを活用します。またデータ入手が困難な場合は 「シナリオ(CFPへの影響が小さいとは言い切れないプロセスに対して与える、算定の前提条件)」 と 「カットオフ(CFPへの影響が小さいプロセスを、算定対象外とすること)」 を活用します。

一次データ自社で直接計測したデータや、サプライヤーから直接提供された実際の排出量データ
二次データ
政府機関や業界団体が提供する統計値を基にした製造方法やサービスの平均的データ

国内データベース:排出原単位データベース AIST-IDEA

4.算定結果の検証

算定終了後、必要に応じて、外部の検証機関や専門家による第三者検証を行う場合があります。また、LCAに基づく算定の信頼性や透明性を高めるため、適用する規格や算定ルールとの整合性、データや算定方法の妥当性などを確認するクリティカルレビュー(Critical Review)を実施する場合もあります。

5.公開・開示

CFPの算定結果を外部に開示する場合は、適切な情報公開・開示手法を検討しましょう。算定の透明性を担保するために、算定条件や参照規格、用いたシナリオ等を開示することも必要です。

発信手段には、プレスリリースやウェブサイト、各種報告書といった自社媒体、製品パッケージや店頭 POP などの製品表示、さらにはテレビ・新聞・雑誌・SNS などの外部メディアなど、多様な選択肢があります。また、製品へのCFP表示や自社ホームページでの公開なども効果的です。

「誰に(ターゲット)」「何を(訴求内容)」伝えることが最も効果的かを明確にし、それに基づいて最適な発信方法を検討することが大切です。


参照:「カーボンフットプリント ガイドライン (別冊)CFP実践ガイド」経済産業省・環境省

カーボンフットプリント(CFP)を算定する企業のメリット

カーボンフットプリントCFP取得のメリット

ここではCFPを算定する企業のメリットについて具体的に解説していきます。

ホットスポットの特定で環境配慮製品開発に活用

CFPは、原材料調達から廃棄までのライフサイクル全体で排出されるCO2量を可視化できるため、どの工程が環境負荷の大きい“ホットスポット”なのかを分析可能です。

【具体例】

  • 原材料の製造工程が全体の60%を占めていた
  • 使用段階の電力消費が最も大きかった
  • 輸送距離が長く、物流が排出量の主要因だった

上記のように、排出量の多い具体的な工程を把握することで、改善すべきポイントを正確に特定でき、効果の高い対策を優先的に実施できます。そして企業単体ではなく、サプライチェーン全体の脱炭素化が推進されるというメリットがあります。

取引先からの開示要求に対応  

前述したように、欧州のDPPや電池規則をはじめ、環境負荷の開示を義務付ける法規制が世界中で強まっています。これに伴い、大手企業では「CFPを開示できない企業とは今後取引をしない」、あるいは「選定基準のスコアを下げる」といった動きが本格化しています。

このような要求に対応できる体制を整えておくことは、リスクの回避だけでなく、競合他社との競争に打ち勝つことにも繋がります。

消費者や投資家へのブランドアピールと差別化 

自社のCO2排出量開示は、環境配慮を重視する消費者に対して「環境負荷の低い商品」という強いアピールになります。特に環境意識の高い若年層の購買意欲を高めることで、将来的な企業価値向上に繋がります。

また、投資家に対しては排出量管理力やリスク管理能力の高さを客観的に示す材料となり、ESG評価の向上やサステナビリティレポートの信頼性を強化します。結果的に資金調達の有利化や、投資対象としての魅力を向上させるでしょう。

カーボンフットプリント(CFP)算定実務でのよくある課題

CFP算定実務でよく発生する以下の3つの課題について、それぞれの背景や、どう対処すべきかを解説していきます。

一次データの不足

サプライチェーンの複雑さと、サプライヤー側の対応力の格差により、一次データが不足する場合があります。一次データが不足すると、二次データベースの平均値で算定する必要があります。しかし、二次データは実態と乖離しやすく、削減ポイントが見えないなど製品の比較性が損なわれ、改善策が立てられないという難点があります。

改善策としては、排出量の大きい工程から優先順位を付ける、サプライヤーに対して必要項目を明確化し、標準フォーマットの提供をすることなどが挙げられます。

排出係数の選定

排出係数は“どれを使うか”で、算定結果を大きく左右するため、選定ルールを明確にし、根拠を残すことが重要です。国内で広くCFP算定に利用される排出係数2次データベース として「AIST-IDEA」があり、詳細な粒度で排出係数を設定可能です。

対応策としては、一次データを優先した選定基準を明文化し、年次・地域・境界の整合性を確認したうえで、採用した係数の根拠を必ず記録することが重要です。

算定の属人化

CFP算定には高度な専門性が求められるため、業務が「社内のサステナビリティ担当者」に集中しやすいという課題があります。その結果、担当者が異動・退職した際に、算定ロジックを誰も理解できず、業務がブラックボックス化してしまうリスクが生じます。

このような事態を防ぐためには、算定ロジックとマニュアルの完全なオープン化、専用の温室効果ガス排出量算定プラットフォームの導入、そして外部専門家への定期的な相談が不可欠です。

まとめ|カーボンフットプリント(CFP)算定に迷ったら専門家に相談を

カーボンフットプリントまとめ

本記事では、カーボンフットプリント(CFP)について、専門家の視点から具体的に解説してきました。以下の点をご理解いただけたのではないでしょうか。

  • カーボンフットプリント(CFP)とは、製品やサービスがライフサイクル全体で排出する温室効果ガス量のこと
  • カーボンフットプリント(CFP)の算定は、世界的に義務化・標準化しつつある
  • カーボンフットプリント(CFP)の算定には専門的な知識が必要

国際的に脱炭素の潮流が強まる中、多くの企業が自主的にカーボンフットプリント(CFP)の取り組みを進めています。しかし、お話した通りカーボンフットプリント(CFP)の算定には高い専門性が必要です。

株式会社ゼロックは、これまでの経験と深い知見で、企業の脱炭素経営の後押しをすることが可能です。
カーボンフットプリント(CFP)に関してお困りのことがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。貴社の取り組みを力強くサポートいたします。

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