
松井 大輔
(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応
目次
建築関連の環境配慮が求められるなか、「グリーンビルディング(Green Building)」が注目を集めています。
グリーンビルディングとは、建築物の設計・建設から運用、維持管理、改修、解体に至るまでのライフサイクルを通じて、環境負荷を低減し、資源効率を高めた建築物のことです。
本記事では、グリーンビルディングの基本的な知識や特徴、導入によるメリット、各種認証制度の概要まで、企業事例を含めてわかりやすく解説します。
建築を通じて環境貢献を目指す方は、ぜひご一読ください。
グリーンビルディングとは

グリーンビルディングの概要と、注目される背景について解説していきます。
概要
グリーンビルディングは、「米国環境保護庁」では、以下のように定義されています。
- グリーンビルディング(Green Building)
敷地の選定から設計、建設、運用、維持管理、改修、解体に至るまで、建物のライフサイクル全体を通じて環境配慮を行い、資源効率の高い構造物を構築するためのプロセスを採用した建築物
グリーンビルディングの認証制度とは、このようなプロセスによって建築された建造物を評価するためのフレームワークで、海外での導入が進んでいます。
注目される背景
グリーンビルディングが注目される背景として、建築物によるCO2排出量や建設・解体に伴う廃棄物の多さが挙げられます。IPCC第6次評価報告書によれば、2019年の建設部門の総温室効果ガス排出量は、CO2換算で12ギガトンにも達しました。これはその年の世界の温室効果ガス排出量の21%に相当します。
世界的に喫緊の課題となっている地球温暖化は、人為的な温室効果ガス排出が主要因といわれています。「国連環境計画(UNEP)」は、2024年の世界の温室効果ガス排出量は、CO2換算で、過去最多の577億トンに達したと報告しました。
また、2021年の日本における産業廃棄物排出量は370,568千トンであり、そのうち建設業から排出された産業廃棄物は75,146千トンにものぼりました。これは全体の約20%を占めます。世界的に持続可能な社会構築が目指されるなか、環境に配慮した建築物の推進は急務です。
出典:IPCC第6次評価報告書
出典:環境省「令和4年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値」
グリーンビルディングの特徴

グリーンビルディングの具体的な特徴には、以下のようなものがあります。
持続可能な建材や用地の活用
グリーンビルディングでは、公共交通機関へのアクセス性を高め、自動車依存を低減するための用地を選定することが望まれます。そのため、交通関連のCO2排出削減を図ることが可能です。また、水道・電力など既存インフラが整う地域に建設を行うことで、新規インフラ整備に伴う環境負荷を抑制します。さらには、再利用材や認証木材、再生ガラス・再生鋼材といった環境負荷の低い建材を活用し、資源効率化やメンテナンスコスト削減を実現します。
脱炭素化対策
グリーンビルディングの最大の特徴の一つとして、CO2排出量の削減があります。高性能断熱材の採用や空調システムの効率化による省エネの実現。そしてエネルギー効率の高い機器の導入や、再生可能エネルギーの活用によって、化石燃料への依存を抑制しCO2排出量を削減します。また、IoTやAIを活用した自動制御により、居住者のニーズに応じて屋内環境を最適化しながら、エネルギー消費の最小化を図ることも可能です。
水資源の効率化
グリーンビルディングは資源の効率化を目指すため、水資源に関しても最小限に抑えるための機能が備えられている場合があります。具体的には、節水型の機器や設備、雨水の回収・貯留、機械設備用の水の再利用、などが挙げられます。
グリーンビルディングのメリット
ここではグリーンビルディングのメリットについて、以下の4つの視点から解説していきます。
- 環境負荷低減
- 不動産価値の向上
- 省エネやコスト削減の推進
- ウェルビーイングな空間の提供
環境負荷低減
前述した通り、気候変動対策のための温室効果ガス排出抑止は世界的な課題です。持続可能な設計および建築工法は、気候変動の影響を緩和するために非常に大きな役割を果たします。さらに再生可能エネルギー促進をはじめとしたCO2削減対策を推進するため、環境負荷低減に大きく貢献することが可能です。
海外においても、グリーンビルディングの手法を建築基準に取り入れる動きが強まっており、「国際エネルギー機関(IEA)」によると、2022年の時点で、およそ80ヵ国がグリーンビルディングに沿った建築基準を導入しているといわれています。
不動産価値の向上
近年、ESG投資の拡大が進む中、不動産業界も影響を強く受けています。グリーンビルディングは、不動産開発業者や建物所有者が、環境・社会・ガバナンス(ESG)基準を満たすことに貢献します。また、グリーンビルディングは、同等の構造物と比べて市場価値が高くなる傾向があり、優良資産となる可能性を高める傾向があります。
省エネやコスト削減の推進
グリーンビルディングを推進することで、建造物の全体的な省エネやコスト削減を図ることが可能です。具体的にいうと、エネルギー消費と水使用の削減により、建物の運用コストや光熱費を削減することができます。
ウェルビーイングな空間の提供
グリーンビルディングでは、IoT 技術を活用することで建築物の環境性能を最適化できます。例えば、室内の換気制御や空気質モニタリングを高度化し、常に良好な空気環境を維持することが可能です。さらに、自然光の活用や屋外景観へのアクセスを考慮したサステナブルな建築設計により、居住者のウェルビーイング向上につながる快適な空間を提供できます。
グリーンビルディング認証制度の種類

グリーンビルディングの認証制度にはさまざまな種類があります。それぞれの概要や特徴を解説していきます。
DBJ Green Building認証
DBJ Green Building認証は、グリーンビルディングを支援するために、2011年、「日本政策投資銀行(DBJ)」により創設されました。評価は対象物件の環境性能に加えて、防災やコミュニティへの配慮、ステークホルダーへの対応まで含みます。社会・経済に求められる不動産を評価・認証するための認証制度です。なお本制度の認証業務は、「一般財団法人 日本不動産研究所」が実施しています。
CASBEE(キャスビー)不動産評価認証
CASBEE不動産評価認証とは、建築物の環境性能を評価するための国内の認証制度です。建築物のさまざまな環境配慮に対して客観的な評価を行い、国の補助事業などの採択や、審査基準に活用することが可能です。
BELS(ベルス)評価
BELS(ベルス)評価は、「Building-Housing Energy-efficiency Labeling System」の略称です。新築や既存の建築物の省エネ性能を第三者評価機関が評価し、認定する制度です。
ZEB(ゼブ)認証
ZEB(ゼブ)認証は「Net Zero Energy Building」の略称で、快適な室内環境を維持しながら、年間の一次エネルギー収支をゼロにすることを目指す建築物を指します。一次エネルギー収支ゼロとは、省エネルギー施策の徹底に加え、太陽光発電などによる一次エネルギー創出を組み合わせることで、年間のエネルギー消費量を実質的にゼロにすることを意味します。
LEED(リード)認証(海外)
「米国グリーンビルディング協会」が開発・運用する認証制度で、環境配慮に優れた建築物を評価する国際的な環境性能評価システムです。取得ポイントの合計で4つのランクに分けられ、プラチナ、ゴールド、シルバーがあります。米国では州、連邦政府の調達基準にEPDを採用しているため、EPDを取得した建材利用による加点項目や、建築物のLCA(ライフサイクルアセスメント)を実施し、温室効果ガス排出量の削減を示すことによる加点項目も存在します。
LCA(ライフサイクルアセスメント)とは
LCAとは、製品やサービスの素材や原材料の調達から、製造、流通、消費、廃棄に至るプロセス全体で、環境負荷を定量的に評価する手法のことです。
LCAに関しては、こちらの記事をぜひご覧ください。
LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?わかりやすい徹底解説
EPDとは
EPDとは日本語で「製品環境宣言」であり、製品の環境情報を第三者が検証する透明性の高い環境ラベルのことです。国際規格であるISO14025に準拠する「タイプ III 環境ラベル」で、製品のLCAにおける環境への影響に関する情報を検証することが可能です。
日本には2024年にエコリーフから、名称が変更されたEPD認証制度の一つであるSuMPO EPDがあります。SuMPO EPDを取得することで、企業はEPDの取得につなげることが可能です。
EPDやSuMPO EPDついては、こちらの記事もぜひご覧ください。
EPD(製品環境宣言)とは│SuMPO EPDについても解説
SuMPO EPDとは?意味やメリット、取得方法まで詳しく解説【企業事例】
海外と日本のグリーンビルディングの動向
ここからはグリーンビルディングの海外と日本の現状や、動向を解説していきます。
海外の現状
海外ではLEED認証の取得が広く進んでいます。2025年時点の取得件数は、米国が90,942件と最も多く、中国が9,945件、カナダが2,601件で続いています。特に米国では、LEED認証が不動産価値の向上に寄与するとの調査結果が示されており、この効果が取得件数の増加を後押ししています。
さらに、「Global Market Insights Inc.」の最新調査によれば、グリーンビル市場は2024年に530.2億ドルと推定され、2025年には580.2億ドル、2034年には1.39兆ドル規模へ成長する見通しです。
日本の現状と課題
国内におけるグリーンビルディング認証の取得件数は、2018年以降、着実に増加しています。認証制度の内訳を見ると、CASBEEおよびDBJが全体の90%超を占めています。海外のLEED認証は少数にとどまり、2025年時点で369件でした。一方で、近年は大手不動産会社を中心に認証取得への取り組みが強化されており、ESG投資への関心の高まりとともに、今後も取得件数は拡大していくことが見込まれます。
ただし、グリーンビルディング認証の取得には一定のコストが発生するほか、EPDやLCAといった専門的な手法への理解と対応が求められます。そのため、企業が認証を取得しやすい環境整備や支援策の拡充が、今後の普及に向けた重要な課題といえます。
国内のグリーンビルディング事例
ここではグリーンビルディング認証制度を取得した事例を紹介していきます。
鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社は、独自に開発したLCA評価システムを用いて、建設関連の廃棄物を予測し、より適正な廃棄物処理方法やリサイクル率の向上などを実施しています。グリーンビルディングにおいても、各国各地域のプロジェクトでこれらの認証を獲得し、環境配慮型社会の構築に貢献しています。
具体的事例としては、シンガポール国立大学のデザイン環境学部の新校舎「SDE4」の建設で「ネットゼロエネルギービル(Net ZEB)」の実現、また鹿島技術研究所本館「研究棟」のLEED、最高ランクプラチナ取得などが挙げられます。
札幌コンベンションセンター
札幌コンベンションセンターでは、持続可能な社会構築に貢献するため、再生可能エネルギー100%電力の導入など、環境負荷低減の取り組みを推進した結果、2025年LEED認証制度の「GOLD」を取得しました。日本の既存MICE施設がLEED認証を取得するのは初になります。
沖縄プリンスホテル オーシャンビューぎのわん
「株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド」が運営する「沖縄プリンスホテル オーシャンビューぎのわん」は、ホテル物件として初の DBJ Green Building認証を取得しています。地産地消を目的とした県内青果市場から仕入れた食材の使用や、バイオマスアメニティーを客室に設置するなど、環境に配慮した取り組みを積極的に行っています。
まとめ
建築物のライフサイクル全体を通じて環境負荷を低減し、資源効率を高めた建築物「グリーンビルディング(Green Building)」について、概要やメリット、具体的事例まで網羅して解説しました。
企業による環境配慮は積極的に行われる時代であり、建築業界においても例外ではありません。むしろCO2排出量や建設・解体に伴う廃棄物の多さを考えたとき、積極的に取り組む必要があります。しかし、グリーンビルディング認証取得には、専門的な知識やノウハウが必要です。
株式会社ゼロックは専門的な知見を活かし、国際規格に準拠した環境負荷の算定から、脱炭素経営におけるご相談を受けることが可能です。
相談してみたいという企業担当者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。












