
松井 大輔
(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応
目次
LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品やサービスのライフサイクル全体を通じた環境負荷を定量的に評価する手法であり、「酸性化」などの環境影響を把握することも可能です。
そこで本記事では「酸性化」について、具体的な内容や環境への影響をわかりやすく解説します。あわせて、ライフサイクル影響評価手法である「LIME」や、環境負荷物質の定量的評価を可能にするデータベース「IDEA」についても詳しくご紹介します。
自社の環境負荷評価を推進する担当者様にとって、有益な情報となる内容です。ぜひご一読ください。
酸性化とは

酸性化とはどのような現象のことなのか。ここでは具体的な物質や原因、影響について解説していきます。
酸性化現象とは
酸性化とは大気から地表への酸性化物質の沈着が長期的に続くことで、陸域および陸水が少しずつ酸性環境に変化することです。一般的に酸性雨と呼ばれるものも酸性化に含まれます。酸性化を発生する物質は、人為的起源と自然的起源に分かれます。
酸性化は自然や生態系にさまざまな影響を及ぼすため、代表的な酸性物質や原因を知っておくことが重要です。
酸性化の代表的な物質と原因
| 主な酸性化物質 | 原因物質 | 主な発生源 | |
| 人為的起源 | 自然的起源 | ||
| 硫酸(H2SO4) | 硫黄酸化物(主にSO2) | 焼却・燃焼 | 火山 |
| 還元態硫黄化合物(H2SおよびDMS等) | 排水処理 | 海洋・底質 | |
| 硝酸(HNO3) | 窒素酸化物(主にNOおよびNO2) | 焼却・燃焼 | 雷 |
| 塩酸(HCI) | 塩化水素ガスとして直接発生 | 焼却・燃焼・塩素 | 火山 |
| 有機酸(RCOOH)※1 | 炭化水素 | 焼却・燃焼 | 植生 |
| アンモニア(NH3)※2 | アンモニアとして直接発生 | 化学肥料・畜産等 | 土壌 |
※1…有機酸は多様な物資の総称
※2…アンモニア自体は塩基性物質だが、地表に沈着した場合は硝酸化成によって酸として働くため、潜在的な酸として考慮する必要がある
酸性化の影響

酸性化による影響はさまざまですが、ここでは酸性雨による例を挙げましょう。
酸性雨は、放出される二酸化硫黄や窒素酸化物が、空気中で酸性物質に変化し、雨・雪・霧に溶け込むことでより強い酸性に変化する現象です。上記のように化石燃料燃焼などによる「人為的起源」と、や火山活動など「自然的起源」などの現象ににより発生します。酸性雨が降ると、川や湖、土壌が酸性化して生態系に影響を与えたり、コンクリートが溶けたり金属が錆びたりして、建物や文化財にも被害が生じます。
酸性化は環境へ大きく影響を及ぼします。そのため自社の事業が、酸性物質を発生させていないか把握することは、環境経営の観点からも非常に重要です。
LCA:さまざまな影響領域を評価

LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品やサービスの環境への影響を評価することが可能な手法で、酸性化の評価を行うこともできます。ここではLCAの概要や重要性について簡単に解説します。
LCA(ライフサイクルアセスメント)とは
LCAとは、製品やサービスの素材や原材料の調達から、製造、流通、消費、廃棄に至るプロセス全体で評価する手法のことです。
LCAに関しては、こちらの記事をぜひご覧ください。
LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?わかりやすい徹底解説
なぜLCAは重要なのか
LCAは製品やサービスの環境への影響を、気候変動といった領域だけではなく、生物多様性や水資源に及ぶ領域まで、定量的に評価が可能です。そのため比較化や最適化の検討が可能となり、より適切な対応策を講じることができます。
環境影響評価手法IDEA とLIME2(統合化指標)
「酸性化」に対する環境評価を実施可能な、環境影響評価手法「IDEA」 と「LIME2」について解説していきます。
IDEA
ここでは、LCI(ライフサイクルインベントリ)データベースの「IDEA」について紹介します。
概要
IDEAは網羅性、代表性、完全性、透明性を担保できるように開発されました。IDEAで評価可能な環境影響領域は18領域に及びます。IDEA Ver.3.5標準版は、データセット数約5,600を有しています。
特徴
階層構造を取ることで網羅性を確保を実施。また日本の平均値をデータにしており、単位プロセスデータを可能な限り採用し、高い透明性を維持しています。信頼性を確保するため、データの品質をしっかりと評価しています。
原単位あたりの環境負荷量の数値を提供するだけでなく、各製品の製造プロセスの入出力データ(単位プロセスデータ)公開による透明性を有し、データ品質も考慮可能なデータベースです。農林水産業、鉱業、建築・土木などの非製造業、飲食料品、繊維、化学工業、窯業・建材、金属、機械などの製造業と電力・都市ガス、上下水道、運輸業など、国内のほぼ全ての製品やサービスを網羅しています。そのため酸性化においては、例えば製品製造時にどれだけの酸性物質を発生しているかを評価することが可能です。

参照:国立研究開発法人産業技術総合研究所 エネルギー・環境領域 安全科学研究部門 IDEAラボ
LIME2(統合化指標)
「LIME2」は、国際規格である「ISO140040」と「 ISO14044」に則り、製品やサービスのライフサイクルでの環境への排出物量や資源の消費量を計算し、それらの環境への影響を評価する手法です。
概要
「LIME(Life cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling)」は、LCA国家プロジェクトによる日本版のLCAの影響評価手法として開発されました。国内の環境条件や知見を反映し、日本独自のライフサイクル影響評価手法として2005 年に「LIME1」が公表 。その後、多数の事例を通じ、改善すべき課題として、特に社会的ニーズの高いテーマが研究され、影響評価モデルの改良、被害係数の更新、評価対象物質の拡充などを行いました。これらを体系的にまとめたものが、「 LIME2」です。
特徴
「 LIME2」では、15影響領域、1000物質を対象とした評価を行うことが可能です。酸性化においては、酸性沈着に伴う土壌酸性化を通じた「植物成長」への間接的な影響、そして陸水(湖沼等)の酸性化による「水産物」への影響を評価することができます。
また、LCA のほか、環境パフォーマンス評価、環境効率、ファクター、環境会計など、さまざまな形で環境評価に活用することができます。

参照:LCA日本フォーラム「LIME2 係数リストの解説(要約版)」
LIME(統合化指標)についてはこちらでも解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。
生物多様性の現状や問題点とは|LCAにおける評価の重要性を解説
まとめ
「酸性化」の具体的な内容や、環境への影響をわかりやすく解説し、ライフサイクル影響評価手法である「LIME2」や、環境負荷物質の定量的評価を可能にするデータベース「IDEA」についてご紹介しました。
経営方針に環境配慮を掲げ、積極的に取り組むことが求められる時代です。しかし、酸性化や酸性物質の発生など、環境への影響を評価するためには専門的な知識が必要です。
株式会社ゼロックは専門的な知見を活かし、国際規格に準拠した環境負荷の算定を承ることが可能です。
環境評価を実施してみたいという企業担当者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。












