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【Scope3】カテゴリ1とは?算定方法・対象範囲・削減の進め方を実務向けに解説

公開日 2022.12.06 最終更新日 2026.03.11

松井 大輔

(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応

Scope3カテゴリ1は、自社が購入した原材料、部品、製品、サービスなどに伴う温室効果ガス排出量を指します。多くの企業で排出量の大きな割合を占めやすく、Scope3算定に取り組むうえで最初の重要ポイントになりやすい項目です。

一方で、カテゴリ1は対象範囲が広く、データ量も多いため、「どこまで算定すべきか」「どの手法を選べばよいか」で迷いやすいのも事実です。

この記事では、Scope3カテゴリ1の基本から、算定方法、算定時のポイント、削減の進め方まで、実務目線でわかりやすく解説します。

Scope3とは

Scope3とは、企業がサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を算定する際の、事業活動に関連した間接的な責任範囲のことを指します。

サプライチェーン排出量のスコープ図
引用:環境省HPより

サプライチェーン排出量はScope1+Scope2+Scope3の計算式で表すことができ、Scope3は、Scope1とScope2以外の間接排出と言い換えることもできます。

Scope1は燃料の燃焼や工業プロセスに伴い事業者自らが排出した温室効果ガスであり、Scope2は電力会社などの他社から共有された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出です。

企業が温室効果ガス排出量を算定しようと思ったとき、Scope1とScope2がイメージしやすいですが、事業活動を行う上では、原材料調達から製造、物流、販売、廃棄・リサイクルといったサプライチェーン全体を考慮することが重要であり、Scope3も欠かせない概念となります。

むしろ、自社内の排出よりも、上流・下流での排出量の方が多いことが大半となっています。

関連記事:Scope3(スコープ3)とは?概要や算定方法を分かりやすく解説

Scope3のカテゴリ分類

Scope3Scope1Scope2以外の間接排出だ」と先述しましたが、実際に算定する際にどこまで算定すればよいのか困ってしまうかもしれません。

そこでGHGプロトコルでは、Scope3の算定範囲を15のカテゴリに分類しており、このすべてのカテゴリを算定できれば、Scope3の温室効果ガス排出量を見える化できることになります。

環境省・経済産業省の基本ガイドラインでは、上流がカテゴリ1から8、下流がカテゴリ9から15です。

カテゴリー項目内容
1購入した製品・サービス原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達
2資本財生産設備の増設(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上)
3Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)
4輸送、配送(上流)調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)
5事業から出る廃棄物廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送(※1)、処理
6出張従業員の出張
7雇用者の通勤従業員の通勤
8リース資産(上流)自社が賃借しているリース資産の稼働(算定・報告・公表制度では、Scope1,2 に計上するため、該当なしのケースが大半)
9輸送、配送(下流)出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売
10販売した製品の加工事業者による中間製品の加工
11販売した製品の使用使用者による製品の使用
12販売した製品の廃棄使用者による製品の廃棄時の輸送、処理
13リース資産(下流)自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働
14フランチャイズ自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1,2 に該当する活動
15投資株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用
Scope3のカテゴリ分類一覧

なお、環境省・経済産業省の基本ガイドラインでは、従業員や消費者の日常生活を指す「その他」という独自カテゴリもあります。

この分類を理解するうえで重要なのは、カテゴリ1が広いからといって、購入に関わるものをすべてカテゴリ1に入れてよいわけではないことです。たとえば固定資産はカテゴリ2、一次サプライヤーから自社までの物流はカテゴリ4、自社から出る廃棄物処理はカテゴリ5に整理されます。カテゴリ1の算定で最も多いミスは、まさにこの線引きの誤りです。

関連記事:GHGプロトコルとは?排出量算定はGHG削減の第一歩

Scope3-カテゴリ1とは

Scope3カテゴリ1は「購入した物品・サービス」を指します。自社が購入・取得したすべての製品とサービスについて、資源採取段階から製造段階までの工程で発生する温室効果ガス排出量が対象となります。

たとえば、自動車メーカーの場合、車体に使用する鋼材、アルミ、樹脂、タイヤ、ガラス、半導体など、サプライヤーから調達する多くの部品・材料がカテゴリ1に含まれます。これらについて、原料の採掘・精製から、材料や部品として製造されるまで(cradle-to-gate)の排出量を算定するのがカテゴリ1の考え方です。

このように、カテゴリ1はScope3の中でも排出量が大きくなりやすく、多くの企業にとって重要なカテゴリです。

また、カテゴリ1の対象は、部品や原材料のような有形のものだけではありません。外注加工、物流以外の委託サービス、クラウドサービス、オフィスで利用する各種サービスなど、無形のサービスも対象に含まれます。

引用:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.7) 

ここで実務上とても重要なのが、なにをカテゴリ1に含めるかです。環境省は、資源採取段階から1次サプライヤーまでの輸送をカテゴリ1に含める一方、1次サプライヤーから自社までの輸送はカテゴリ4と整理しています。つまり、原料の採掘からサプライヤー製造までの上流工程はカテゴリ1、自社まで運んでくる物流はカテゴリ4という考え方です。

また、カテゴリ1とカテゴリ2の違いも迷いやすいポイントです。購入したものが固定資産として会計処理されるならカテゴリ2、そうでなければカテゴリ1と考えるのが基本です。たとえば、生産設備や建物、長期使用する機械はカテゴリ2に入る可能性が高く、原材料や消耗品、外注加工、一般的なサービスはカテゴリ1に入るのが通常です。

さらに、意外と迷いやすいのが水道です。環境省Q&Aでは、上水道は購入した製品・サービスとしてカテゴリ1、下水道は廃水処理にあたるためカテゴリ5と整理されています。実務では総務部門や施設管理部門が持つデータなので、経理や購買だけを見ていると見落としやすい項目です。

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Scope3-カテゴリ1の算定方法

ここからは、Scope3カテゴリ1の算定方法について説明します。

まず温室効果ガス排出量は、項目・品目ごとに「活動量×排出原単位で算定することができ、これが基本式となります。

カテゴリ1における「活動量」とは購入した製品・サービスの個数や重量、金額等を指します。これらは、購買データや会計データなど、社内で把握しやすい情報をもとに整理します。「排出原単位」はこうした活動量1単位あたりの排出量を示す値です。

たとえば自動車メーカーでは、サプライヤーから購入する鋼材やタイヤなどについて、購入重量、購入本数、購入金額などが活動量になります。そして、それぞれに対応する、1kg当たり、1本当たり、1円当たりなどの排出原単位を掛け合わせて、排出量を算定します。

このように、まず把握可能な活動量を確認し、その活動量に合った排出原単位を選ぶことが基本になります。

しかし、カテゴリ1は対象範囲が広いため、購入品目をそのまま機械的に集計すればよいわけではありません。まずは、購入項目のうちどれがカテゴリ1に該当するのかを整理したうえで、それぞれの項目をどの粒度で算定するかを判断することが重要です。

実務では、すべての購入項目を最初から同じ粒度で精緻に算定する必要はありません。影響の大きい項目は個別に把握し、影響の小さい項目は一定程度まとめて算定するなど、項目ごとに粒度を分けて考えることが現実的です。

1次データと2次データの違い

Scope3カテゴリ1の算定方法を理解するうえで、まず押さえておきたいのが、一次データと二次データの違いです。GHG プロトコル Scope3 Standard における 1 次データと 2 次データの定義は以下の通りです。

データの種類定義具体例
1次
データ
企業バリューチェーンないの固有活動からのデータサプライヤー等から直接提供を受けた排出量データ
2次
データ
企業バリューチェーンないの固有活動からでないデータ業界平均値等のデータベース(環境省「排出原単位データベース」、IDEA 等)
1次データと2次データ

参照:1次データを活用したサプライチェーン排出量算定ガイド- 「削減努力が反映されるScope3排出量算定」へ -(Ver1.0)

カテゴリ1でいう1次データの例としては、サプライヤーから直接入手した製品別の排出量データや、事業所単位のエネルギー使用情報などがあります。一般に、1次データのほうが実態に近い算定がしやすく、サプライヤーごとの削減努力も反映しやすくなります。

そのため、サプライヤーがすでに製品別のLCAを実施している場合やEPDを取得している場合は、それらの有無をヒアリングすることも有効です。

一方で、初期段階からすべての購入品について1次データをそろえるのは現実的ではありません。環境省の1次データ活用ガイドでも、まずは2次データを活用して全体像を把握し、そのうえで重要な項目から1次データへ切り替えていく考え方が示されています。排出量への影響が大きい主要部材から、サプライヤーへのヒアリングや製品別データの確認に進む流れが実務的です。

Scope3カテゴリ1の主な算定方法(4つの手法)

Scope3カテゴリ1の主な算定方法として、GHG ProtocolのTechnical Guidanceでは、1次データの活用度合いやデータの具体性に応じて、主に4つの手法が示されています。

手法概要活動量排出原単位
サプライヤー固有手法サプライヤーから製品の原料採掘から製造までの温室効果ガスインベントリを収集する購入した製品やサービスの数量サプライヤー固有係数
混合手法サプライヤー固有手法だけでは不足するデータ部分を2次データを利用する購入した製品やサービスの数量、金額等1次データと2次データの組み合わせ
平均データ手法”量”に対する2次データ排出原単位を利用する購入した製品・サービスの数量数量当たりの排出原単位(IDEA等)
消費データ手法”金額”に対する2次データ排出原単位購入した製品・サービスの金額金額当たりの排出原単位(産業連関表等)
算定手法参考一覧

どの手法を選ぶかは、排出量への影響の大きさ、データの入手性、データ品質、そして算定の目的によって決まります。重要なのは、すべての購入項目に対して一律に同じ方法を使う必要はないということです。

たとえば、排出量への寄与が大きい主要原材料や主要部品については、できるだけサプライヤー固有手法や混合手法を用いて、実態に近いデータを使うことが望ましいでしょう。

一方で、少額で件数が多く、個別のデータ収集が難しい項目については、支出額手法を用いて概算するほうが現実的です。また、重量や数量が把握できる品目については、平均データ手法を用いることで、支出額手法よりも精度を高めやすくなります。

算定時のポイント

ここでは、実際にカテゴリ1を算定する際に、特に押さえておきたいポイントを紹介します。

1.購入項目を正しく各カテゴリに分類する

カテゴリ1は対象範囲が広い一方で、購入に関わるものがすべてカテゴリ1に入るわけではありません。
たとえば、固定資産はカテゴリ2、1次サプライヤーから自社までの物流はカテゴリ4、自社から出る廃棄物処理はカテゴリ5に分類されます。

こうした整理があいまいなまま算定を始めると、後から分類ミスや二重計上が見つかり、修正が必要になることがあります。まずは、購入項目のうちどれがカテゴリ1に該当し、どれが他のカテゴリに該当するのかを整理しておくことが重要です。

2.排出原単位の対象範囲を確認する

排出原単位を使う際は、その原単位がどこまでの範囲を含んでいるのかを確認する必要があります。
たとえば、製造までを対象としているのか、輸送まで含んでいるのかによって、算定結果は変わります。

環境省のQ&Aでも、排出原単位によっては輸送を含むものと含まないものがあることが示されています。ここを確認せずに使うと、カテゴリ1とカテゴリ4の重複や漏れが起こるおそれがあります。そのため、原単位のバウンダリは必ず確認しておくべきです。

3.影響の大きい項目は優先して見直す

カテゴリ1は対象項目が多いため、すべてを同じ精度で扱おうとすると、かえって実務が進まなくなることがあります。
そのため、まずは排出量への影響が大きい項目を把握し、優先的に見直していくことが重要です。

4.全部を一気に精緻化しようとしない

GHG Protocolは、カテゴリ1の中でも排出寄与の大きい項目に、より具体的な方法を使い、その他は簡便法を使うことを認めています。つまり、主要原材料は物量ベースやサプライヤー固有、少額な一般経費は支出額ベースで算定するなど、項目の重要性に応じて段階的に精度を高めていく進め方が現実的です。

Scope3_カテゴリ1_削減方法

Scope3カテゴリ1の削減は、算定より難しいと感じる担当者が多いかもしれません。しかし、考え方はシンプルです。

基本は、まず排出量の大きい調達項目を把握し、そのうえで、何が排出量を押し上げているのかを分解して考えることです。たとえば、原材料そのものの排出量が大きいのか、加工工程の負荷が大きいのか、あるいはサプライヤーの使用エネルギーに原因があるのかが見えてくると、取るべき対策も具体的になります。

1.調達仕様を見直す

たとえば、再生材の活用、低炭素素材への切り替え、製品重量の削減、包装材の見直し、不要な調達の削減などは、カテゴリ1の排出量を直接下げやすい取り組みです。
特に、主要原材料について重量や数量などの物量データを把握できている企業では、仕様変更による削減効果を定量的に示しやすくなります。

2. サプライヤーと連携する

カテゴリ1の排出量は、自社だけでは削減しきれない部分が多く、サプライヤーの協力が欠かせません。
そのため、主要な取引先に対して、どの粒度のデータが必要なのか、どの範囲まで含めたデータが必要なのか、いつまでに収集したいのかを明確に伝えることが重要です。

単にアンケートを送るだけではなく、必要なデータの内容や目的を共有し、継続的にやり取りできる関係をつくることが、実務では大きな差になります。

3. 調達先の評価基準を変える

これまで調達先の評価は、価格、品質、納期が中心だった企業も多いと思います。
しかし、カテゴリ1の削減を進めるには、そこに製品当たりの排出量、再生可能エネルギーの利用状況、第三者検証の有無、削減計画の有無といった観点も加えていくことが有効です。

こうした視点を調達判断に組み込むことで、カテゴリ1は単なる開示項目ではなく、購買戦略そのものに関わるテーマになります。実際には、算定担当部門だけでなく、購買部門や設計部門も巻き込んで進めることが重要です。

企業事例:サプライヤーとの連携によるカテゴリ1の削減

カテゴリ1の削減では、サプライヤーに対して製品別の環境データ整備を促し、その情報をもとに調達先や採用製品を見直す動きも見られます。

たとえばMicrosoft社は、サプライヤーやメーカーに対し、製品別のType III EPDの作成を依頼する公式レターを送付しました。その結果、複数の製品・メーカーで新たなEPDが作成され、プレキャストコンクリートでも新たなEPD整備が進んだと説明しています。

出典:Microsoft, Reducing Embodied Carbon in Construction(2021年7月)

日本企業の事例として、イオン株式会社では、EPDの取得までは求めていないものの、プライベートブランド「トップバリュ」の食品やH&BCの主な製造委託先に対して、気候変動への取り組みに関するアンケートを実施しています。各社の方針や取り組み状況、要望などを把握、将来的には、商品の製造過程で発生する排出量をより高精度に把握したうえで、サプライチェーン全体での具体的な削減計画につなげる方針を示しています。

出典:イオン株式会社,「『スコープ3』排出量の管理・削減を本格的に始動」(2021年7月)

このように、カテゴリ1の削減では、単に自社で排出量を集計するだけでは不十分です。まずはサプライヤーとの対話を通じて環境データの整備を促し、そのデータをもとに、調達判断や製品選定を段階的に見直していくことが重要です。いきなりEPD取得を求めるのが難しい場合は、アンケートやヒアリングから始め、重要な調達先から順にデータの粒度を高めていく進め方をおすすめします。

Scope3算定から企業の環境負荷低減を始めよう!

企業の環境負荷低減はScope1・2・3の算定から始めよう!

ここまでScope3のうち、カテゴリ1について解説してきました。

企業がサプライチェーン排出量削減を検討する場合、まず現状を正しく把握することがスタートになります。

ただ、その「正しく」算定することが難しい分野で、算定者によって解釈が異なる部分も多くあり、それに伴って算定結果が数倍変わってしまい、リスクとなる可能性もあります。

株式会社ゼロックでは、専門的知見を基にScope3算定はもちろん、LCAや企業のカーボンニュートラル化支援まで幅広く対応可能です。

環境対応をご検討中の企業の方は、ぜひ一度お問い合わせください。

よくある質問

Q1. 購入した機械や設備はカテゴリ1ですか。
A. 原則として、会計上固定資産に位置づけられるものはカテゴリ2です。カテゴリ1は、固定資産に当たらない購入製品・サービスが対象です。設備投資と消耗品調達を同じ箱に入れないことが重要です。

Q3. 上水道や下水道はどこに入りますか。
A. 上水道はカテゴリ1、下水道はカテゴリ5です。施設関連費として一括で扱われがちですが、Scope3上は同じではありません。

Q4. 金額ベースだけで開示してもよいですか。
A. 初期算定としては実務上広く使われていますし、GHG Protocolでも他の方法が難しい場合の手法として示されています。ただし、削減実態やサプライヤー努力を反映しにくいため、重要品目から物量ベースや一次データへ移行する前提で考えるのが望ましいです。

Q5. オフセットクレジットでカテゴリ1排出量を差し引けますか。
A. 環境省Q&Aでは、オフセットはScope1、2、3とは独立して分別報告すべきとされています。つまり、カテゴリ1の算定値そのものから差し引く考え方は取りません。

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