
松井 大輔
(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応
要約
- International Sustainability Standards Board(ISSB)は、IFRS S2のGHG開示についてターゲットを絞った修正を公表。解釈のブレが出やすい点が明確に
- Scope3 カテゴリ15(投融資)は、測定・開示を「financed emissions」に限定できる見込み
- 日本では、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)がISSB修正に対応する公開草案を公表
何が変わったのか
今回の修正のポイントは、IFRS S2のGHG排出開示のうち、実務負荷が大きい論点に絞って要件が明確化・緩和された点です。特に、Scope3 カテゴリ15について、開示対象を「企業の投融資に帰属する排出(financed emissions)」に限定できることは大きな変更点と言えます。これにより、デリバティブ等を含むより広い金融活動全般の排出までを無理に対象とした結果、算定の一貫性が崩れてしまう、という状況を防止する狙いがあります。
併せて、financed emissions の内訳をセクター別等に分解して示す際、従来想定されていた特定の分類体系(GICS)に限らず、有用な情報を提供できる代替分類体系の利用を認める方向が示されています。金融機関にとっては、開示の比較可能性と社内データ整備の現実性のバランスを取りやすくなる変更と言えます。
なぜ「限定的な緩和」なのか
今回の修正は、要件を大きく後退させることではなく、厳格性を保ちつつも「実行可能なルール」に寄せることが狙いです。
カテゴリ15は、データ源が多岐にわたり算定境界が曖昧になりやすい領域であり、ルールが曖昧なまま適用を開始すると、企業間比較ができない一方で作業だけが増えやすいという難点があります。そのボトルネックを解消するために、定義や境界の明確化が図られています。
また、国や地域によって、法令・制度上、GHG算定手法や係数の制約がある場合については、救済措置が設けられることも示されました。グローバル基準と各国の制度が揃っていない状況も想定し、制度設計が行われています。
動向を踏まえた対応ポイント
日本の開示実務に直結するのは、SSBJがISSB修正を踏まえた公開草案を出している点です。2026年1月28日まではコメントが可能であり、国内基準の整備が着々と進んでいる状況です。
金融機関・投資関連事業を抱えている企業は、まずカテゴリ15の対象を「financed emissions」を前提として再整理し、データ収集単位(商品・ポートフォリオ・投資先粒度)と算定ロジックを統一するのが近道です。
また、非金融セクターの事業会社であっても、投融資・年金・CVCなどを持つ場合はカテゴリ15が影響の大きい領域になり得ます。そのため、Scope3全体の中でどこまでを取り扱うかは、自社で早めに設計しておくことが望ましいと考えられます。
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