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ニュース解説

GHG Protocol、土地由来排出とCO2除去に関する新基準「LSR」を公表

公開日 2026.04.07 最終更新日 2026.04.07

松井 大輔

(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応

要約

  • GHG Protocolが Land Sector and Removals Standard(LSR Standard)を公表
  • 土地由来排出やCO2除去を定量・報告・追跡するための初の基準
  • 土地由来原料やCO2除去・炭素貯蔵が全体のインベントリに対して大きな影響を持つ企業では、排出削減と切り分けた説明が重要に

概要

2026年1月30日、GHG Protocolは「Land Sector and Removals Standard v.1.0(LSR)」を公表しました。LSRは、土地に関わる事業や、農地で作られた原料・製品を扱う企業が、温室効果ガスの排出量と除去量を定量・報告・追跡するための基準であり、2022年に草案として公表されました。詳しい実務の考え方は2026年第2四半期に公表予定のガイダンスによって補完され、2027年1月1日から適用されます。

対象となるのは、農業や土地利用に関わる活動が自社事業またはバリューチェーンに含まれる企業です。具体的には、食品、飼料、繊維、バイオ燃料、先端バイオマテリアルなど、農地由来原料への依存度が高い企業が該当します。

加えて、土地管理由来の除去や技術的CO2除去を、自社のScope 1・Scope 3インベントリや対外開示に取り込みたい企業も対象となります。

今回の公表により、企業には土地由来排出やCO2除去に対して、より丁寧な把握と説明が求められるようになりました。

背景:なぜ今この基準が必要になったのか

従来のGHG Protocolでは、製品単位のProduct Standardや、農業分野向けのAgricultural Guidanceなど、土地利用に関するルールは一部存在していました。

しかし、農業や土地利用に由来する排出量、土壌や植生による炭素吸収、CO2除去を企業のGHG会計の中で横断的かつ一貫して扱う枠組みは十分に整理されていませんでした。

一方で、農業および土地利用の変化に伴う排出量は、世界の温室効果ガス排出量の約4分の1を占めるとされており、土地に関わる活動は多くの企業のサプライチェーン全体に広がっています。そのため、排出だけでなく、吸収や除去も含めて整理する必要性が高まっていました。

こうした背景を踏まえ、GHG Protocolは、土地に関わる排出量とCO2除去をより明確に扱う基準としてLSRを公表しました。

LSRのPart 2では、土地利用変化、リーケージ、土地管理由来排出、バイオ由来製品に関わる排出、CO2除去、地中貯留、製品中の炭素貯蔵などを章ごとに整理し、GHGインベントリの中で一貫して扱う構成となっています。

特に、設備などを用いた技術的CO2除去や、CO2を回収して地下に貯留するケースについては、LSRで初めて枠組みが示されました。

土地関連排出・除去・炭素貯蔵に関する要件
出典:https://ghgprotocol.org/sites/default/files/2026-01/Land-Sector-and-Removals-Standard.pdf

この公表で何が変わるのか

2022年の草案からの変更点を以下にまとめました。

変更点内容
基準の正式化2022年版は草案ガイダンスだったが、
Land Sector and Removals Standard v.1.0 として公表
対象範囲の明確化農業とCO2除去技術を対象とし、森林は対象外
土地利用に関する要件の強化トレーサビリティ、土地利用変化、リーケージなどの要件が見直され、土地利用やその間接的な影響の扱いが整理された
炭素の扱いの明確化土地管理による除去、技術的除去、地中貯留を伴うCO2回収も含めた報告の枠組みが明確となった

最終版では、土地由来排出やCO2除去を企業のGHG会計の中でどのように扱うかが、草案時点よりも明確になりました。

特に、対象範囲が農業とCO2除去技術に絞られたことに加え、土地利用変化やトレーサビリティ、リーケージなど、土地に関わる影響をより丁寧に捉える方向が示されています。

また、CO2除去についても、排出削減とは切り分けて報告する考え方がより明確になりました。

コンサルタントによる解説

今回の公表は、日本企業に対して直ちに一律の対応を求めるものではありません。ただし、農地由来の原料を扱う企業や、今後CO2除去を活用した開示・主張を検討する企業にとっては、将来の説明責任を見据えて準備を始めるべきです。

特に、原料の調達先をどこまで把握できるか、土地利用変化の影響をどのような根拠で説明できるかは、今後の算定や開示の質に影響すると考えられます。

国際的な開示やサプライチェーン管理の厳格化が進む中で、関連企業は2027年の適用開始を見据え、早い段階から自社への影響を確認しておくことが望まれます。

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