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SSBJとは?サステナビリティ基準委員会の概要や最新動向を解説

公開日 2025.07.07 最終更新日 2025.07.07

松井 大輔

株式会社ゼロック 代表取締役 監修

SSBJは、日本における企業のサステナビリティ情報開示の基準を策定する組織で、日本語では「サステナビリティ基準委員会」と呼称します。国際的な基準を開発したISSB(国際サステナビリティ基準審議会)との連携を目的として、2022年に設立されました。

本記事ではSSBJの概要から、開示基準、最新の動向まで詳しく解説していきます。経営に持続可能性や気候変動対策を求められる時代、ぜひ一読し自社のサステナビリティ経営の一助としてください。

SSBJ(サステナビリティ基準委員会)とは 

SSBJ(サステナビリティ基準審査会)とは 

ここではSSBJ「サステナビリティ基準委員会」の概要や設立された背景、組織構造を解説していきます。

SSBJの概要

SSBJ(サステナビリティ基準委員会)とは、日本における企業のサステナビリティ情報開示の基準を策定する組織です。2022年「公益財団法人財務会計基準機構(FASF)」内に設立されました。「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」との連携を目的に設立されたため、基本的にSSBJ基準はISSB 基準の要求事項が取り入れられています。

SSBJが設立された背景

SSBJが設立された背景には、国際的なサステナビリティ開示基準の開発を目的とする「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」の存在があります。ここではISSBやSSBJの意義について詳しく解説していきます。

ISSB (国際サステナビリティ基準審議会)

ISSBの正式名称は「International Sustainability Standards Board」であり、日本語では「国際サステナビリティ基準審議会」と訳されます。企業のサステナビリティ情報開示に関する国際的な基準を策定する機関「国際会計基準(IFRS)」によって2021年に設立されました。

ISSB設立の背景には、ESG投資の拡大に伴う非財務情報開示の重要性が挙げられます。世界の気候変動対策やSDGs推進に伴い、非財務情報の開示基準が一時期乱立しました。そのため企業のサステナビリティ性を公平に評価できる国際的で統一された基準が必要とされ、設立されたのがISSBです。ISSBはサステナビリティ関連の基準を統一する目的で設立されたため、「気候変動開示基準委員会(CDSB)」や、SASB基準を提供している「価値報告財団(VRF)」などの機関を統合しています。

SSBJの意義

SSBJの意義は、「日本基準の開発」と「国際的なサステナビリティ開示基準の開発への貢献」になります。それぞれを簡潔に解説します。

  • 日本基準の開発

SSBJは、ISSBの国際的な開発基準と整合性をとりつつ、日本の資本市場で用いることのできる開示基準の検討・開発を行います。市場関係者のニーズに応じ、リサーチを行い、日本固有の要求事項の検討や関連する法令や規制などを考慮した具体的な開発が行われています。

  • 国際的なサステナビリティ開示基準の開発への貢献

SSBJは国際的なサステナビリティ開示基準を、高品質なものとすることに積極的に貢献しつつ、日本の開示基準の質を高めていくことを目指しています。そのため、ISSBの公開草案及び情報要請等に対してコメント・レターの提出、国際会議での意見発信を実施。またリサーチ活動の成果では、国際的に有意義と考えられるものは積極的に発信しています。

組織構造

SSBJの運営母体は、「公益財団法人財務会計基準機構(FASF)」になります。FASFは⺠間10団体よりなる独立した組織です。「企業会計基準委員会(ASBJ)」が、国内と国際的な会計基準開発への貢献を行い、国内と国際的なサステナビリティ開示基準の開発への貢献は、SSBJが行います。FASFは、日本のIFRS財団のカウンターパートとして、資⾦拠出の窓口の役割を担います。

組織構造

引用:サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の概要

 SSBJの開示基準

SSBJ基準には「適用基準」と、テーマ別となる「一般開示基準」と「気候関連開示基準」があります。ISSBの「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(IFRS S1号)と、「気候関連開示」基準(IFRS S2号)をもとに開発されています。

適用基準

適用基準は、ISSBのサステナビリティ開示基準を基本としています。企業は適用基準においてサステナビリティ開示基準に従って、サステナビリティ関連の財務開示を作成、報告を行わなくてはなりません。たとえ国内で財務諸表が一般的に公正妥当であっても、適用基準ではサステナビリティ開示基準の適用は必須となるため、注意が必要です。

 一般開示基準

一般開示基準は、基本的にISSBのサステナビリティ関連のリスク、および機会に関して開示すべき事項である「コア・コンテンツ」の内容を取り入れています。また一般開示基準の目的は、主要利用者が企業に資源提供を行うか否かなどの意思決定にあるため、当該企業のサステナビリティ関連のリスクや機会について、利用者に有用となる開示基準が求められます。

コア・コンテンツ

コア・コンテンツとは、次の4つの構成要素からなる開示事項です。

ガバナンス企業がサステナビリティや気候関連のリスクをどのような体制で管理しているか、そのプロセスや手続き等に関して、理解できるよう各種情報を開示する
戦略一般目的財務報告書の利用者が、企業のサステナビリティや気候関連のリスク・機会に対する戦略を理解できるような情報を開示する
リスク管理一般目的財務報告書の利用者が、企業の見通しに影響を与える見込みのある気候関連のリスクや、それに対しての管理をどのように行うのか理解するための情報を開示する
指標と目標サステナビリティ関連のリスク及び、機会に関連する評価をどのような指標で判断し、目標(ターゲット)を達成できるのか理解できるう情報開示する

出典:サステナビリティ開示テーマ別基準第 1 号 一般開示基準

気候関連開示基準

気候関連開示基準は企業の見通しに影響を与える可能性のある、気候関連のリスク・機会についての情報を開示します。一般開示基準と同じく、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標に関する開示を提供することが求められます。目的は気候関連のリスクや機会の、管理・監督するためのプロセスや手続きを理解できるようにすることです。

気候関連開示基準の内容の特徴として、気候レジリエンスの評価を行うためのシナリオ分析や、以下の7つの産業横断的指標、温室効果ガス排出の開示などが挙げられます。

産業横断的指標

  • 温室効果ガス排出
  • 気候関連の移行リスク
  • 気候関連の物理的リスク
  • 気候関連の機会
  • 資本投下
  • 内部炭素価格
  • 報酬

世界のサステナビリティ開示基準に関する動向

国際基準のISSBは、全般的な開示要求事項(IFRS S1号)及び、気候関連開示基準(IFRS S2号)を2023年に最終化しました。これにより主要国はそれぞれ以下のような取り組みを開始しています。

米国 

2025年1月米国は州議会に対し、年間売上高10億ドルを超える企業に2027年以降に段階的にScope1.2.3の温室効果ガス排出量の報告を義務付ける法案を提出しました。今後は、議会での審議が見込まれています。ただしトランプ政権の樹立により、米国の気候変動対策に関しては先行きが不透明な状況です。

英国

2024年12月、英国政府の諮問機関である「UK Sustainability Disclosure Technical Advisory Committee(TAC)」が、ISSB基準とほぼ同一の基準を採用することを公表しました。早ければ2026年1月1日以降に開始する会計年度より適用が始まる予定です。

カナダ

カナダにおけるサステナビリティ開示基準の設定主体である「CSSB(Canadian ustainability StandardsBoard)」は、2024年12月、ISSB基準に整合するサステナビリティ開示基準の最終化を公表しました。将来的に、適用を義務付けるかどうか、義務付ける場合の適用対象企業・適用開始時期については検討予定となっています。

SSBJ基準の情報開示義務化の内容・時期

情報開示義務化内容・時期

ここではSSBJ適用に際して企業が対応すべきポイントを、対象企業や義務化の時期、そして開示項目が多義に渡る気候基準の内容から解説していきます。

気候関連データの開示

気候基準は開示項目が詳細なため、留意しなくてはなりません。例えば温室効果ガス排出の絶対総量を、サプライチェーン排出量であるScope1.2.3それぞれの区分について開示する必要があります。また測定は国際的な温室効果ガス排出量の算定・報告基準である、GHGプロトコルに従います。

また気候基準は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の指標に準拠しており、開示項目は以下のようになります。

  • Scope1.2の温室効果ガス排出量について、連結会計グループに関するものと、その他の投資先に関するものとに分解して開示する
  • Scope2は「ロケーション基準」による排出量を開示する
  • 主要利用者の理解に情報をもたらすために必要な契約証書に関する情報がある場合は、当該契約証書に関する情報を提供するが、マーケット基準によるScope2 の排出量開示で代用も可能
  • Scope3については、Scope3基準にあるカテゴリにしたがって、カテゴリ別に分解して排出量の情報を開示する

出典:サステナビリティ開示テーマ別基準第 2 号 気候関連開示基準

このように気候基準ではScope1.2.3の専門的な知識を必要とするため、企業は排出量を算定・集計するシステムの導入や、外部の専門家への依頼を検討することが重要です。

Scope1.2.3とは

前述したScope1.2.3とは、サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を分類するための枠組みです。

【Scope1】 事業者が燃料の使用や工業プロセスにおいて、自社が直接排出した温室効果ガス排出量のこと

Scope1とは?Scope2・Scope3との違いや算定方法を解説

【Scope2】 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴い間接排出された温室効果ガス排出量のこと

Scope2とは?Scope1・Scope3との違いや算定方法について解説

【Scope3】 Scope1、Scope2以外の間接排出された温室効果ガス排出量のことで、15のカテゴリがある

Scope3(スコープ3)とは?概要や算定方法を分かりやすく解説

SSBJ基準の対象企業と義務化時期

SSBJ基準の草案は、2025年6月までに最終化する予定です。SSBJ基準は東証プライム上場企業が対象であり、金融商品取引法に基づく法定開示など、金融庁の審議会にて現在も議論が進められています。

金融庁はプライム市場上場企業の時価総額が3兆円以上の企業に、2027年3月期からSSBJ基準を義務化することを検討しています。さらに2028年3月期には、1兆円以上の企業に適用、2029年3月期には5000億円以上の企業にも適用、将来的にはすべてのプライム企業に義務化の適用を拡大する見込みです。

義務化時期

出典:サステナビリティ開示及び保証に係る動向(金融庁)

経過措置

SSBJ基準では、義務化初年度の開示に限る措置として、以下のような経過措置が設定されています。

  • 義務化初年度の開示では、気候関連以外のサステナビリティ関連のリスク及び機会や、Scope3排出量の開示は任意
  • 比較情報の開示をしないことが可能
  • GHGプロトコルや、法域の法令等が要求している以外の測定方法による温室効果ガス排出量の開示も可能
  • Scope3の内容を開示しないことも可能

SSBJ基準開示のプロセス

SSBJの基準開示のプロセスは、主に以下の3つのステップからなります。

1.情報収集

開示基準で求められる情報をできるだけ具体的に収集し、分析を行います。リスクの特定や評価、管理手法の検討、ビジネスへの影響、適応戦略の策定などが含まれます。

2.判断・対策

収集した情報と分析をもとに、リスクの判断や情報を適切に管理・開示するための対策を実施します。そのためには情報開示のための社内体制を構築したり、必要に応じて専門家と相談し連携を取ったりなど、有効で確実な対策を練ることが必要です。

3.情報開示

収集した情報とそれによる対策を基に、開示資料を作成します。これにはガバナンス体制、サステナビリティ戦略、リスク管理体制、具体的な指標や目標などを含みます。重要性のある(material)情報を作成した開示資料を社内で確認し、有価証券報告書などで一般に開示します。

まとめ

日本における企業のサステナビリティ情報開示の基準を策定する組織「SSBJ(サステナビリティ基準委員会)」について、さまざまな角度から具体的に解説しました。SSBJのサステナビリティ開示基準は、2027年3月期から義務化が検討されています。

持続可能性や気候変動対策は重要な課題であり、大企業やグローバル企業だけではなく、今後は中小含めたすべての企業に求められていく可能性があります。

本記事でSSBJの知見を深め、持続可能性の高い企業としての一歩を踏み出してはいかがでしょうか。
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