
松井 大輔
(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応
要約
- GHG Protocol の Corporate Standard 改定案では、準拠の条件として Scope3 の算定・報告が必須化される方向が示された
- 具体案として、Scope3 は 「required scope 3 emissions」の95%を報告(除外は最大5%) という定量基準が提示されており、除外の扱い・根拠の残し方が実務の焦点になり得る
- これは現時点では進捗資料の段階で、正式な公開草案は2026年半ば、最終版は2027年末目安とされている
「準拠」の前提が変わる可能性がある
GHG Protocol の Corporate Standard(組織のGHGインベントリ算定基準)は、企業のScope1・2の算定における土台として広く参照されてきました。一方で、Scope3は、従来の Corporate Standard では任意とされる場面が多く、企業によって範囲や粒度がばらつきやすい領域でした。
今回公表された Phase 1の進捗資料では、このギャップを埋めるために、Corporate Standard 準拠の条件として Scope3 の算定・報告を求める方向性が示されています。
まだ確定した新ルールではなく、あくまで改定プロセスでの提案段階ではありますが、もしこの方向で固まれば、開示の前提は実務的に一段変わることになります。
95%ルールが示す実務インパクト
進捗資料や技術作業部会(TWG)の資料では、Scope3 について 「required scope 3 emissions」の少なくとも95%を報告し、除外は最大5% とする考え方が提示されています。これは、「できる範囲でやる」から、「一定の網羅性を担保したうえで、例外は定量的に管理する」へ寄せる設計です。
さらに、些少(de minimis)な排出の扱いも、5%の除外枠の中で位置づけ、合理的に5%を超えないことを前提にする考え方が示されています。
結果として、今後はどのカテゴリをどこまで含めるかだけでなく、なぜそこを除外できるのか、どう推計したのかという説明可能性・証跡の設計が、算定品質の中心に置かれやすくなります。
スケジュールと、今からやるべき備え
今回の資料では、改定案の完成版ドラフトを2026年半ばに公開意見募集( public consultation )にかけ、最終的な第3版の公表は2027年末を見込む、というロードマップが示されています。
したがって、実務上は、公開草案が出てから慌ててデータを集めるのではなく、公開前から Scope3 の「山」を把握しておくことが重要です。
具体的には、概算でも構わないので Scope3 のカテゴリ別排出プロファイルを作り、上位95%を占めるカテゴリのデータ収集を先行させることが合理的です。その際には、一次データ・二次データの使い分け、サプライヤー依頼の設計、推計ロジックの統一といった観点も肝要です。
今回の改定が確定した瞬間に必要になるのは、算定そのものよりも、どういった根拠で除外と判断したかといった証跡であり、ここを先に整えることが制度変更によるリスクを低減することにつながります。
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