企業のカーボンニュートラル取り組み事例と現状解説

松井大輔
松井大輔

株式会社ゼロック 代表取締役 監修

目次

日本は現在「2050年にカーボンニュートラル宣言」「野心的な目標として2030年に温室効果ガスを46%削減する」ことを宣言しています。

カーボンニュートラルの取り組み企業事例

そして、この目標に向けて、政府、国、企業、自治体など様々な組織、団体が脱炭素社会に向けて色々な取り組みを進めています。

この記事では、日本や世界の企業が取り組んでいるカーボンニュートラルの具体的な事例やメリットについて解説します。

CO2の削減や目標設定など脱炭素に向けた施策にこれから取り組みたい企業や経営者、ご担当者の方はぜひご覧ください。

企業を取り巻くカーボンニュートラルの状況

日本では企業が排出する温室効果ガスが約80%を占める

日本の排出量主体別内訳
2018年度温室効果ガス排出量分析より引用

経済産業省が公表している、2018年度温室効果ガス排出量分析によると、日本で排出されているCO2のうち、約80%が企業から排出されており、残りの20%は家庭から排出されているとされています。

つまり、日本がカーボンニュートラルを目指す上で、企業の取り組みのインパクトは非常に大きいと言えます。

企業はサプライチェーン排出量の算定と削減が求められている

SCOPE1-3の概要

企業が排出する温室効果ガスについて、目標設定や削減を進める際にはサプライチェーン排出量で考えるのが、一般的です。

サプライチェーン排出量はSCOPE1,2,3の3つに分かれており、算定方法はGHGプロトコルという国際的なルールによって定められています。

企業規模やビジネスモデルによって、SCOPE1~3の排出量割合やSCOPE3のカテゴリごとの排出量に特徴がでやすくなります。

例えば、様々な企業から部品や原材料を調達して最終製品を製造している大企業は、自社による直接排出よりも上流や下流のSCOPE3の排出量が大きくなる傾向があります。

カーボンニュートラルの達成を考える上では、自社の排出量の特徴に合った削減計画や施策の実施が重要です。

範囲
SCOPE1自社内部での燃料の燃焼により直接排出される温室効果ガスの排出量
SCOPE2電力会社などの他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出量
SCOPE3事業者の上流にある購入物の生産、輸送、ならびに、事業者の下流に位置する製品の輸送、使用、廃棄等での全体的な間接温室効果ガスの排出量(Scope1、Scope2以外の間接排出)
Scope1、2、3の範囲一覧

関連記事:GHGプロトコルとは?排出量算定はGHG削減の第一歩

企業がカーボンニュートラルに取り組む3つのメリット

企業がカーボンニュートラルに取り組む3つのメリットを解説します

続いて、企業がカーボンニュートラルに取り組むメリットについて説明します。

1:投資家・金融機関からの評価向上

まず1つには、投資家からの評価向上が挙げられます。

特に、世界の機関投資家は「Climate Action 100+」や「Net-Zero Asset Owner Alliance」など気候変動への対応を企業に求める団体を設立しており、総額で数千兆円規模の運用資産を背景に、企業に対して脱炭素に向けた行動をとるよう要請しています。

米ニューヨーク州の退職年金基金は、運用ポートフォリオのカーボンフットプリントを2040年までにゼ
ロにする目標を発表。

日本でも、日本生命保険が投資先について「2050年に全体でCO2排出量がゼロ」にすることを目標に掲げています。

2:サプライチェーンリスクの軽減

2つ目は、サプライチェーンリスクの低減です。

近年では、ビジネスパートナーである取引先企業に対して、排出削減を求める動きが拡大しています。

その理由は、投資家の評価基準やSBT等の排出削減ルールが、自社が排出する温室効果ガス(Scope1、Scope2)のみならず、サプライヤー等のサプライチェーン上の排出(Scope3)についても対象としているからです。

米IT大手のヒューレット・パッカードは、2025年までに80%の物資をSBT認定を取得した企業から調達することを表明しています。

また、大手小売りチェーンのターゲット社も、2023年までに80%の仕入れをSBT認定を取得している企業から行うと表明しています。

SCOPE3の削減目標として、サプライヤーへのSBT目標設定を掲げるSBT認定企業
環境省HPより引用

3:消費者や従業員からの評価向上

カーボンニュートラルの取り組みは、消費者や自社の従業員を含めた個人からの評価の向上にも繋がります。

日本に限らず、消費者は製品やサービス購入の判断基準として、品質や価格だけではなく、社会の持続可能性への影響を重視するようになってきています。

特に、Z世代と呼ばれる若い世代では「環境に優しい」など、持続可能な商品については「価格が高めでも買う」と考える割合が年々増加しています。

サステナブル調査結果
SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブックより引用

また、カーボンニュートラルの取り組みにより、働いている社員のモチベーション向上にも繋がります。

2022年6月に楽天が実施したアンケート調査で、日本で勤務する会社員1,600人に対し「SDGsへの取り組みが活発な企業で働きたいと思いますか?」と質問したところ、回答者の6割以上が「SDGsへの取り組みが活発な企業で働きたい」と回答しています。

企業のカーボンニュートラルの取り組み

それでは次に、企業が実施しているカーボンニュートラルの具体的な取り組みについて説明していきます。

以下は、温室効果ガス排出量削減の方法以外の取り組みという観点で紹介します。

SBT認定

SBTロゴ

SBTとは、「Science Based Targets」の略で、5~10年先を目標年として、企業が設定するパリ協定に整合した温室効果ガス排出削減目標のことです。

SBT認定を取得することで、パリ協定に整合する持続可能な企業であることをステークホルダーに対して
分かりやすくアピールすることができます。

SBTは認定取得がそれほど難しくない割に、世界的な認知度や影響度が高くカーボンニュートラルの取り組みとしては非常におすすめです。

参加企業数は世界で2000社を超えており、年々増加しています。

関連記事:SBTとは?メリットや申請の流れをコンサルタントが詳しく解説

RE100

RE100ロゴ

RE100とは「Renewable Energy 100%」の略称で、事業活動における「使用電力」を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアチブを指します。

企業にとって、投資家や消費者といったステークホルダーに対して、自社の環境への取り組みをアピールしていく必要性が年々と高まっていく中で、使用電力を100%再エネ由来のものにすると言うのは最もわかりやすい対外的な宣言の一つです。

RE100の参加企業は、2023年10月時点で世界で421社、日本の企業数は84社で世界第2位という状況になります。

関連記事:RE100とは?概要やメリットについて3分で解説!

TCFD・シナリオ分析

TCFD

TCFDとは、気候関連財務情報開示タスクフォースのことであり、英語では「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」と呼ばれています。

簡単に言うと、企業等に対して気候変動による事業へのインパクトや、財務上の影響の開示を求める国際的な組織のことです。

参加企業数は世界で4,227社となっており、日本では1,211の金融機関、企業、政府等が賛同表明しています。(2023年2月時点)

なお、2022年4月から東証プライム市場ではTCFD提言に基づく気候変動リスクの情報開示は実質的に義務づけられるようになっています。

関連記事:TCFDとは?環境コンサルがわかりやすく解説

CFP・エコリーフ・LEED認証(一例)

上記で紹介した3つの取り組みは、代表的なカーボンニュートラルの取り組みですが、企業による環境ラベルの取得もまた、有効な取り組みの一つです。

環境ラベル

関連記事:【環境ラベル一覧】マークの意味やビジネスへの活かし方

CFP(カーボンフットプリント)

CFPとは、Carbon Footprint of Productsの略称で、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでに排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示するラベルです。

CFPはLCA(ライフサイクルアセスメント)手法を活用して、環境負荷を定量的に算定します。

関連記事:カーボンフットプリント(CFP)の商品比較【企業例一覧】

エコリーフ

エコリーフはLCA手法を用いて、製品のライフサイクル全ての環境情報を定量的に開示する環境ラベルです。

カーボンフットプリントは気候変動のみを対象としている一方、エコリーフは気候変動の他、酸性化、富栄養化、資源消費等から3つ以上の影響領域を開示しています。

LEED認証

LEEDとは、米国グリーンビルディング協会が開発・運用を行っている、建物と敷地利用についての環境性能評価システムです。

省エネと環境に配慮した建物・敷地利用を先導するシステムということで、Leadership in Energy and Environmental Designの頭文字をとり、LEED(リード)と名付けられました。

LEED認証は、環境に配慮した建物の認証制度のなかで、世界でもっとも利用されている認証のひとつです。世界の認証件数は86,081件(2020年7月時点)で、件数がもっとも多いのはアメリカで69,318件となっています。

企業のカーボンニュートラル取組み事例

サントリー

サントリー

◆目標

2030年までに全世界のサントリーグループでの自社拠点でのGHG排出量を50%削減

具体的な取り組み

  • SBT認定取得
  • 日本国内の生産研究拠点で購入する電力を、100%再生エネ由来に切り替え
  • 「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」でCO2排出実質ゼロ工場を実現
  • 効率的な配車とあわせてトレーラーによるさらなる大型化輸送を推進

タケダ

タケダ

◆目標

2040年度までに、事業活動に起因するすべての温室効果ガス(GHG)排出量をカーボンオフセットなしでゼロにする

具体的な取り組み

  • 自社によるSBT認定取得
  • サプライヤーの24%がSBT目標を設定
  • 2021年度にはGHG排出量を前年比で3%減らし、基準年である2016年度比では27%の削減を達成
  • 大阪、光、泉佐野、湘南、成田の各拠点で100%の再生可能エネルギー電力を購入し、年間30%のCO2排出量を削減

アップル

アップルロゴ

◆目標

2030年までにサプライチェーン100%カーボンニュートラル

具体的な取り組み

  • 製品には低炭素の再生材料を使用
  • 当社施設でのエネルギー使用削減100%再エネで企業運営
  • 森林や自然に基づくソリューションに投資

パタゴニア

パタゴニアロゴ

◆目標

2025年までにサプライチェーンを含むビジネス全体にわたってカーボン・ニュートラルを達成

具体的な取り組み

  • 使用電力を100%再生可能エネルギーに置き換える
  • 製品、パッケージには再生可能・リサイクルした素材のみを使用する
  • 1% for the Planetを設立 売り上げの1%を環境保全に寄付する

カーボンニュートラルでリスク回避と事業機会の獲得を目指す

カーボンニュートラルでリスク回避と事業機会の獲得を目指そう

本記事では、カーボンニュートラルに取り組む方法やメリットを説明してきました。

今や大企業だけではなく中小企業もカーボンニュートラルが求められる時代になっています。

また、カーボンニュートラルへの取り組みは、サプライチェーンからの除外や政府による規制といった事業リスクの回避(守り)、顧客や投資家に対するアピール(攻め)という2つの観点で重要になります。

本記事でもご紹介しましたが、特にSBTはカーボンニュートラルの取り組みの第一歩として、「守り」と「攻め」の観点で非常におすすめです。

SBTの取得は、英語での対応と排出量の算定に専門性が必要なこともありますので、自社での取り組みに自信がない方はぜひ弊社株式会社ゼロックにお問い合わせください。

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