TCFDとは?コンサルタントが分かりやすく解説!

目次

TCFDとは?

TCFD=気候関連財務情報開示タスクフォース

TCFDとは

TCFDとは気候関連財務情報開示タスクフォースのことであり、英語では「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」と呼ばれています。

簡単に言うと、企業等に対して気候変動による事業へのインパクトや、財務上の影響の開示を求める国際的な組織のことです。

TCFDは2015年にG20からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)により民間主導のタスクフォースとして、設置されました。

TCFD報告書
TCFD報告書

賛同数は日本が世界で最多

TCFDの賛同企業数をみると、日本は2022年6月24日時点で962社が賛同しており、2位のイギリスの455社に対して、約2倍の企業が賛同を表明しています。

また、賛同している企業の内訳をみると、他の国では金融機関の賛同が多いのに比べ、日本では非金融機関の賛同が多いことが特徴です。

日本の企業が世界の投資家を意識して、気候変動に関する情報開示を積極的に進めていることがわかります。

TCFD賛同企業数
出典:環境省

TCFDが注目される背景

気候変動による経済損失が世界で拡大している

TCFDが注目される背景には大きく2つあります。

1つは気候変動による、経済的な被害・損失が広がっており、今後も増加することが考えられていることです。1998年~2017年の間の自然災害による経済損失額は世界全体で約330兆円にも上り、損失の大きさを国別で見ると、日本は3位となります。

出典:日本気象協会

つまり、気候変動が事業に与える影響は大きく、その影響を織り込んだ上で経営戦略や事業方針を定めていくことが必須と言える状況になっています。

TCFDが設置された目的は端的に言うと、気候変動に対して「強靭な経済の実現」と「金融市場の中長期的な安定」を確保することです。

ESG投資の拡大

2つ目の理由は、利益だけでなく、持続可能性や環境問題への取り組みを重視する企業が評価されるESG投資が拡大しているためです。

世界のESG投資は継続的に増加しており、2020年時点で世界全体では103兆ドル、日本では336兆円まで拡大しています。これまで、企業はCSR報告書やサステナビリティレポートと言う形で、社会貢献や環境問題に関する取り組みを開示していましたが、気候変動が財務に与える影響を開示している企業は多くありませんでした。

ESG投資拡大
出典:金融庁

上記で説明した通り、気候変動が経営や事業に対して大きな損失を与える影響が大きいため、投資家が企業を判断するためには、各企業に対して気候変動がどのようなインパクトを与える可能性があるのかが重要な情報になります。

つまり、TCFDは投資家が求める情報を企業に対して、開示を求める動きと言うことができます。

TCFDで開示が必要な4つの情報とは?

TCFDでは、企業の経営・運営の中核的要素として、『ガバナンス』・『戦略』・『リスク管理』・『指標と目標』の4つの要素を挙げており、これらに対して気候関連情報を開示するように求めています。それぞれ一つづつ概要について説明していきます。

ガバナンス

「ガバナンス」とは、「統治・支配・管理」を示す言葉です。企業におけるガバナンスは「健全な企業経営を目指す、企業自身による管理体制」を指します。

TCFDでは、企業に対して気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンスの開示を求めています。

具体的に開示を推奨される内容は、下記のとおりです。

  • 気候関連のリスク及び機会についての取締役会による監視体制の説明する
  • 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割を説明する

戦略

後ほど説明する「シナリオ分析」とも関係しますが、気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画への重要な影響を開示するものです。

具体的に開示を推奨される内容は、下記のとおりです。

  • 組織が選別した、短期・中期・長期の気候変動のリスク及び機会を説明する
  • 気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する
  • 2℃以下シナリオを含む様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえ、組織の戦略のレジリエンスについて説明する

リスク管理

「リスク管理」は気候関連のリスクについて組織がどのように選別・管理・評価しているかについて開示するものです。

具体的に開示を推奨される内容は、下記のとおりです。

  • 組織が気候関連のリスクを選別・評価するプロセスを説明する
  • 組織が気候関連のリスクを管理するプロセスを説明する
  • 組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理においてどのように統合されるかについて説明する

指標と目標

「リスク管理」は、気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する重要な指標と目標を開示するものです。

具体的に開示を推奨される内容は、下記のとおりです。

  • 組織が自らの戦略とリスク管理プロセスに即し、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開示する
  • Scope1,Scope2及び該当するScope3のGHGについて開示する
  • 組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績について説明する

TCFDが企業にとって重要な3つの理由

プライム市場でTCFD情報開示が「義務化」された

2022年4月、東証市場再編後のプライム市場上場企業に対して、気候変動によるリスク情報の開示が実質的に義務化されました。(開示しない場合は、その理由を説明する必要があります。)

また、金融庁では2023年以降に有価証券報告書を出す開示する企業に対象を広げるかの議論も始まっており、今後はスタンダード市場・グロース市場上場企業の方も関係してくる可能性があります。

TCFDに対応しないことが「リスク」になりうる

冒頭で説明した通り、今や気候変動が経営や事業に与える影響は大きくなっており、経営戦略や事業方針、資金調達の面で無視できない要素です。

実際に、世界経済フォーラム(WEF)「グローバルリスクレポート2021」では、「異常気象」や「気候変動への適応」が環境リスクとして上位に挙げられています。

つまり、TCFDに取り組む中で、気候変動による影響を把握した上で、経営や事業のシナリオを作成・分析することは、経済合理性にかなっているということになります。

また、大手金融機関の中では融資の条件にTCFDの開示を必須にしている組織もあり、資金調達の観点でもTCFDに対応することの重要性が増しています。

TCFDに取り組むことでCDPの回答につながり企業価値が向上する

CDPの設問にはTCFD提言の開示推奨項目が反映されており、TCFD提言に対応することがCDPの設問回答にも繋がり一石二鳥となります。

CDPはESG投資を行う機関投資家や購買企業の要請を受けて、企業に対して質問書を送付し環境情報開示を促進・評価する活動を実施しています。

質問書はTCFD提言の開示推奨項目に準拠した内容となっており、企業の気候変動に関するリスク、機会、影響についての情報を求めているため、TCFDに対応することがCDPへの質問回答の準備にもなり、ひいては企業価値を向上されることにつながるのです。

TCFDのシナリオ分析とは?

シナリオ分析でリスクと機会を見える化する

TCFD 提言では、企業として開示すべき情報を4つの項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に整理しています。

このうち、「戦略」の項目においては、「2℃以下シナリオを含む様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえ、組織の戦略のレジリエンスについて説明する」と記載があり、気候変動という長期にわたる不確実な課題に対して、シナリオ分析をすることでリスクや機会について見える化が推奨されています。

シナリオ分析は大きく6ステップ

シナリオ分析については、詳細に書くと説明が長くなってしまうため省きますが、ざっくりと下記のような6ステップで進めます。

  1. ガバナンス整備
  2. リスク重要度の評価
  3. シナリオ郡の定義
  4. 事業インパクト評価
  5. 対応策の定義
  6. 文書化と情報開示

初めてシナリオ分析を行う企業は進め方が分からないと思いますが、環境省が取り組み方や他社事例などをまとめた資料を公表しているので、詳細について知りたい方は下記のページを参照ください。

TCFDを活用した経営戦略立案のススメ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド ver3.0~

TCFDに対応して脱炭素経営を進めよう

TCFDに対応して脱炭素経営を進めよう

TCFDの概要や背景について説明しましたが、いかがでしょうか。

これまで、気候変動対策はCSRの一環として取り組まれてきましたが、TCFD提言によって、経営や事業に与えるインパクトを財務情報に落とし込み、それを開示させる動きが加速しています。

また、TCFDは国際的な枠組みとなりつつあり、TCFDのフレームワークが他のルール形成の土台となる動きも出てきています。

ただ、TCFDは実際に取り組むとなると、特にシナリオ分析については少々ハードルが高いのも事実です。弊社ではTCFDをはじめとした、企業の脱炭素経営の推進を支援しています。TCFDに限らず、脱炭素経営やGXについて、何かお困り事があればぜひご相談ください。