SBTi(SBTイニシアチブ)とは?認定取得のメリットや流れについて解説!

目次

企業に脱炭素が求められる昨今において、単に自社内で温室効果ガス削減に努力するだけでなく、対外的にも宣言を行い、ステークホルダーに認知してもらうことも重要です。

この記事では、温室効果ガス削減の国際的イニシアチブの1つであるSBTiについて、紹介していきます。

SBTi認定を取得したい、企業として脱炭素に向けた行動をしたいけど何をしたら良いかわからない、という方は是非ご覧ください。

SBTi(SBTイニシアチブ)とは?

SBTi(SBTイニシアチブ)とは?

SBTi(SBTイニシアチブ)の概要

SBTiとは、「Science Based Targets Initiative」の略で、5~10年先を目標年として、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のことです。SBTイニシアチブ、SBTと記載されることもありますが、ほぼ同義で使われています。

この削減目標はパリ協定により掲げられた水準(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(Well Below 2℃:WB2℃)に抑え、また1.5℃に抑えることを目指すもの)と整合されたものであることが求められます。

なお、2022年7月15日以降の申請分については、「5~10年先」までに、「気温上昇1.5℃水準以下に抑える」ための目標であることが必要です。

以前よりも、期限的にも、水準的にも高い目標が求められているところからも、脱炭素が世界的に緊急度の高い課題であることが分かります。

環境省HPより引用

1.5℃目標を達成するためには、年率4.2%の温室効果ガス削減、つまり5年後が目標年なら21%、10年後が目標年なら42%の削減が求められますので、企業としては大きな覚悟が必要です。

SBTi(SBTイニシアチブ)発足の歴史

SBTiは単独の機関ではなく、CDP・UNGC・WRI・WWFの4つの機関が共同で運営しています。

SBTiは、毎年9月にニューヨークで開催されている気候をテーマにした世界最大規模のイベント「Climate Week NYC」の中で元となる考え方が誕生しました。

2014年の「Climate Week NYC」は、現在注目されている国際的イニシアチブや機関が次々に誕生し、気候変動分野にとって特別な1週間となりました。

企業や投資家の温暖化対策を推進している国際機関やシンクタンク、NGO等が構成機関となって運営しているプラットフォームである「We Mean Business」もその一つです。

「We Mean Business」は10のコミットメントを発表しています。「科学的根拠に基づく目標設定の採用」・「炭素価格の導入」・「再生可能エネルギーへのコミット」・「政府の気候変動政策に対する企業のエンゲージメント」・「受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)としての気候変動情報開示」・「2020年までに全てのサプライチェーンから商品生産に起因する森林破壊を撲滅」・「エネルギー生産性向上へのコミット」・「水安全性の向上」・「世界で最も持続可能な燃料のための市場の成長」の10個です。

この中でも、「科学的根拠に基づく目標設定の採用」と「再生可能エネルギーへのコミット」は特に重視され、「SBTi」と「RE100」が発足へと繋がりました。

組織概要
CDP・企業の気候変動、水、森林に関する世界最大の情報開示プログラムを運営する英国で設立された国際NGO。
・世界13,000社の環境データを有するCDPデータは590強の機関投資家のESG投資における基礎データとしての地位を確立
UNGC(国連
グローバル
コンパクト)
・参加企業・団体に「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野で、本質的な価値観を容認し、支持し、実行に移すことを求めているイニシアティブ。
・1999年に当時の国連事務総長が提唱し、現事務総長のアントニオ・グテーレスも支持。現在1万9000以上の企業・団体が加盟(日本は468の企業・団体が加盟(2022年3月時点))
WRI(世界資源
研究所)
・気候、エネルギー、食料、森林、水等の自然資源の持続可能性について調査・研究を行う国際的なシンクタンク。
・「GHGプロトコル」の共催団体の一つとして、国際的なGHG排出量算定基準の作成などにも取組む。
WWF(世界自然保護基金)・生物多様性の保全、再生可能な資源利用、環境汚染と浪費的な消費の削減を使命とし、世界約100カ国以上で活動する環境保全団体。

SBTi(SBTイニシアチブ)に参加する企業が年々増加

Science Based Targetsホームページから引用
Science Based Targetsホームページから引用

SBTiには、運営機関の審査を無事経た「認定」と、2年以内にSBT認定を取得すると宣言する「コミット」という2つの状態があります。

日本は世界3位の認定数であり、直近特に顕著に認定企業数が増えています。

世界的には食料品企業が多いですが、日本は電子機器や建設業の企業による参加が多いのが特徴です。

SBTi(SBTイニシアチブ)の要件

SBTiの要件

対象者

SBTiの取得対象は、特になくすべての企業・団体を対象にしています。

削減範囲

SBTiでは、自社の温室効果ガスだけではなく、サプライチェーン全体の排出量削減が求められます。サプライチェーン排出量は、Scope1Scope2Scope3の合計値で算出されます。

スコープ内容
Scope1自社内部での燃料の燃焼により直接排出される温室効果ガスの排出量
Scope2電力会社などの他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出量
Scope3事業者の上流にある購入物の生産、輸送、ならびに、事業者の下流に位置する製品の輸送、使用、廃棄等での全体的な間接温室効果ガスの排出量(Scope1、Scope2以外の間接排出)

なお、企業全体(子会社含む)のScope1及び2をカバーする、すべての関連する温室効果ガスが対象です。

ただし、Scope3がScope1〜3の合計の40%を超えない場合には、Scope3⽬標設定の必要はありません。

基準年・目標年

基準とする年はデータが存在する最新年とすることが推奨されています。また、目標となる年は申請時から最短5年、最長で10年とされていますが、長期目標の提出も推奨されています。

目標水準

項目目標レベル
Scope1,21.5℃︓少なくとも年4.2%削減
Scope3Well below 2℃︓少なくとも年2.5%削減

Scopeを複数合算(例えば1+2または1+2+3)した目標設定が可能ですが、Scope1+2及びScope3でSBT水準を満たすことが前提となります。

Scope1,2の⽬標は、セクター共通の⽔準としては「総量同量」削減とする必要があり、Scope3の⽬標は、総量削減・原単位削減・サプライヤー/顧客エンゲージメント⽬標のいずれかを満たす「野⼼的な」⽬標を設定することが求められます。

その他

  • 他者のクレジットの取得による削減はSBT達成のための削減に算⼊できない
  • 削減貢献量はSBT達成のための削減に算⼊できない
  • Scope2について、再エネ電⼒を1.5℃シナリオに準ずる割合で調達することは、Scope2排出削減⽬標の 代替案として認められる
  • 企業全体のGHG排出状況を毎年開⽰報告が必要
  • 最低でも5年ごとに⽬標の⾒直しが必要

SBTi(SBTイニシアチブ)認定のメリット

SBTiのメリット

投資家からの評価向上

SBTiは、「パリ協定に整合した形で温室効果ガス排出量削減に尽力している企業」ということを分かりやすく対外的にアピールすることができます。

特に機関投資家は環境や社会に対しての企業の姿勢を注視しています。

2021年9月には、計29.3兆ドルもの資産を運用する金融機関220社が、環境影響が大きい約1,600社に対して、SBTを設定するよう求めました。

日本からも日興アセットマネジメントや三井住友DSアセットマネジメントが参加しており、三井住友DSアセットマネジメント責任投資オフィサーの坂口淳一氏は、「今後SBTを設定できないことが企業にとって重大なリスク要因になる」とまで発言しています。

CDPでの評価が上がる

投資家からの評価と被る部分もありますが、2017年以降のCDP質問書ではSBT認定を受けていると、「リーダーシップ」の得点を獲得することができます。

CDPとは、英国の国際的な環境非営利団体(NGO)で、世界の企業に対し、二酸化炭素排出量や気候変動への取り組みに関する質問書を出すことで情報を収集・開示ことを主な活動内容としています。

CDPは多くの機関投資家らの支持を受け、世界の9600社もの企業がCDPの送る質問書に回答するまでに拡大しています。

評価基準SBT認定に対する評価
リーダーシップ4.1a, 4.1bの両方またはいずれかにおいて、1.5℃/WB2℃目標の場合3点獲得(フルポイント)、2℃目標の場合2.5点獲得
マネジメント4.1a, 4.1bの両方またはいずれかにおいて3点獲得
認識「科学的根拠に基づいた排出削減目標ですか?」の質問に対して、回答内容次第でであれば4.1a, 4.1bの両方またはいずれかにおいて1点獲得
情報開示「科学的根拠に基づいた排出削減目標ですか?」の質問に対して、回答を行うことで4.1a, 4.1bの両方またはいずれかにおいて1点獲得

社内の生産性向上の動機付け

SBTiは野心的な削減目標であるため、いかに社内の省エネをするかについて、真剣に議論していく必要があります。

中には既存の考え方や技術だけでは実現できない場合もあり、AI、IoTなどのテクノロジーを通じたイノベーションを促進することにも繋がります。

例えば、P&Gでは、従業員が省エネや経費節約に関するアイデアを共有するための”Power of 5”と呼ばれるプログラムを立ち上げ、これまで、2,500万ドル超の新たな省エネの機会を作り出しています。

政策やリスクに対応できる

世界全体の潮流を受け、日本においても、脱炭素の政策や補助金に大きく舵を切っています。

また、今後、企業に厳しい炭素規制を敷く可能性も大いにあります。

SBTi認定を取得し、温室効果ガス削減を実践することで、これらの流れに沿った対応を先んじて行うことができ、リスク管理の観点からも有効な手段です。

SBTi(SBTイニシアチブ)認定の流れ

SBTi認定の流れ

①Commitment Letterを事務局に提出(任意)

必須ではありませんが、まずコミットメントレターを事務局に提出します。

先述の通り、コミットとは2年以内にSBT設定を行うという宣言のことであり、コミットした場合には、SBT事務局・CDP・WMBにウェブで公開されるので、温室効果ガス削減に努力しようとしている企業であることは外部にアピールすことができます。

➁目標を設定し、申請書を事務局に提出

「Target Submission Form」という目標認定申請書を提出し、審査日をSBTi booking systemで予約します。

申請書の記載事項は以下の12項目です。

  • 目標の妥当性確認(次頁参照)に関する要望
  • 基本情報(企業名、連絡先など)
  • GHGインベントリに関する質問(組織範囲など)
  • Scope1,2に関する質問
  • バイオエネルギーに関する質問
  • Scope3に関する質問
  • 算定除外に関する質問
  • GHGインベントリ情報(Scope1,2,3排出量)
  • 削減目標(Scope1,2,3目標)
  • 目標の再計算と進捗報告
  • 補足情報 申請費用の支払情報

目標設定するためには、現状を把握することから始まりますので、基準年のScope1,2,3排出量を算定する必要があります。

算定する際は専門家と相談しながら、GHGプロトコル企業基準に則った方法で算定しましょう。

SBT事務局による目標の妥当性確認・回答(有料)

SBT事務局が認定基準への該否を審査し、メールで回答(否定する場合は、理由も含む)します。

項目内容
評価対象企業・一次審査(申請書の記載事項に問題が無いか確認するもの)を通過した企業
・発展途上国に本社が所在する企業は申請費用が免除
評価対象目標・目標を全てのSBT基準に照らして評価
目標認定申請書・空欄項目はNG
レビュー実施者・目標妥当性確認チーム(必要に応じてテクニカルワーキンググループやリーダーシップチームも参加)
提供されるフィードバック水準詳細なフィードバックが以下の形式で、評価の段階ごとに提供される
・申請内容が基準に合致していなかった場合に、非適合箇所に対処するための推奨事項を含む包括的な目標妥当性確認レポート
・公式決定文書
・リクエストに応じて、SBTiのテクニカルエキスパートとの60分間までのフィードバック
回答期間・妥当性確認が開始してから30営業日以内に発行

認定された場合は、SBT等のウェブサイトにて公表

企業には認定の日(SBT事務局からの資料送付時)から1か月以内に、SBTiウェブサイトでの公表日が割り当てられる。これは認定承認のメールで通知されます。

なお、企業がこの日付に合意しない場合、企業は認定された目標を6カ月以内に公開しなければなりません。

排出量と対策の進捗状況を、年一回報告し、開示

開示した後は、実効あるのみです。

上場企業は何も進捗がないと、株主総会等で指定をされてしまう可能性も発生してきます。

SBTiは結果ではなく、目標を設定した段階で外部に公開することに意義があります。

毎年開示ですので、先延ばしにすることも難しい仕組みになっています。

定期的に、目標の妥当性の確認

5~10年の目標ですので、当然大きな変化が生じる場合もあります。

少なくとも5年に1度は再評価を行い、必要に応じ目標を再設定します。

SBTi(SBTイニシアチブ)認定を行い、脱炭素を!

SBTi認定には専門的知識・知見が必要!

ここまでSBTiについて解説してきましたが、SBTiはあくまで目標設定ですので、1つのきっかけに過ぎません。

重要なことは、サプライチェーン排出量を算定のうえ、目標設定を行い、外部に公表することでその目標実行に責任を持つということです。

そして、その目標設定にあたって算出する現在の排出量算定は非常に重要です。

算出には専門的知識が求められることに加えて、よく見せようと解釈・算出をすると、グリーンウォッシュと見られかねない状況に陥ってしまいます。

株式会社ゼロックでは、国際基準に則ったScope算定はもちろん、削減のための脱炭素経営支援までワンストップで提供可能です。

本腰を入れて、脱炭素を実践したい企業様はもちろん、何か取り組みたいけど何からしたら良いかわからないという企業様もお気軽にお問い合わせください。