
松井 大輔
(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応
要約
- 欧州宇宙機関(ESA)が、宇宙システム向けのLCAガイドラインを全面更新
- ミッション / セグメント / 機器の3部構成
- 世界的に「ガイドラインの作成」がどの領域でも進むという実例
概要:宇宙産業の環境影響評価を定めた181ページのガイドライン

欧州宇宙機関(ESA)が、宇宙システム向けLCAハンドブックの第2版を公開しました。
宇宙開発などの環境負荷を考えるときは、「上層大気への直接排出」「長期R&Dや大型試験」「特殊材料」など、通常のLCA評価では明記されない宇宙特有の要素が多数存在します。
今回の第2版では、これらの明示的に扱えるよう、方法論と付録が拡充されています。
適用レベルは【ミッション】【セグメント(宇宙・打上げ・地上)】【機器】の三層構成で、初期段階の簡易的なLCAから詳細なLCAまで、宇宙開発の意思決定にLCAを活用できるような設計となっています。
新しいデータ品質評価(DQR)と報告テンプレート、結果の伝え方(グリーンウォッシュ回避)のガイダンスも収録され、他の領域のガイドラインの作成を検討している人も参考になる内容です。また、公表と同時にウェビナー資料も公開され、ESAの「Green Agenda」と連動した運用像が提示されました。
背景:「宇宙版LCAの標準化と“欧州流”設計統治の流れ」
ESAは2012年以降、Clean Spaceの下で宇宙ミッションや推進剤、素材のLCAに取り組み、2016年の初版とデータベース整備を進めてきました。今回の改訂は、その十余年の実務知見と、欧州委員会(DG DEFIS)と進める環境フットプリント(PEF/PEFCR)整合の議論を反映したものです。
宇宙産業は、量産ではなく多品種少量で長いR&D・試験を経るため、一般産業のルールをそのまま適用すると過小・過大評価が起きがちでした。第2版は、試験用クリーンルームや上層大気排出、R&D段階の扱い、カットオフ基準(重要物質の必須包含)など、宇宙分野に固有の論点を明確に位置づけています。ESAのウェビナー資料では、2030年までに自社起因46%、サプライヤー起因28%の排出削減を掲げ、ライフサイクル思考とエコデザインを制度的に組み込む姿勢が示されています。
コンサルタントによる解説
当社のコンサルタント含め、そもそも第1版があったことを知らない人が多いのではないでしょうか。
宇宙関係のLCAを実施する人はもちろん参考にするべき内容ですが、それ以外の人にとっても、とても興味深いガイドラインになっています。
まず知識として持ちたいのは、ここまで様々な領域で、その領域に合わせた算定のガイドラインが整備されているということです。
企業単位の算定(SCOPE3)は、企業ドメインによって大きくガイドラインが変わることはありませんが、製品やサービスのLCAになると、特にドメインによって二次データの扱いやバウンダリーの設定が重要になってきます。
PCRや自社CFPガイドラインの策定を検討している人は、このようなガイドラインが多数あることもぜひ念頭に置いてみてください。
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参考文献
- European Space Agency (ESA). ESA releases updated LCA Handbook for Space Systems (ESSB‑HB‑U‑005, Issue 2), 12 Jan 2026.
- ESA. Webinar: Introducing the ESA Space System LCA Handbook – Issue 2
- ESA. ESA LCA Database and Handbook: Framework for Life Cycle Assessment in Space, SDG portal, 25 Jan 2021
- European Commission DG DEFIS. A common framework for Environmental Footprint studies of European space activities(Workshop, 30 Jun 2022)












