
仲村元樹
株式会社ゼロック 取締役
要約
- 2025年12月3日、欧州議会が重厚産業製品の輸入に対するCO₂モニタリング強化を可決
- 2026年からの本格運用に向け、現地工場へのオンサイト監査や認定制度導入が検討へ
- 従来通り「年間50トン未満」の少量輸入者免除は維持されるが、「embedded emissions(製品に埋め込まれた排出量)」の報告・検証義務が強まり、大手・中堅の輸入業者は要注意
前回からの進展──“50トン免除”のまま、報告と信頼性を強化
※本記事は、以前公開したコラム「CBAM最新動向:50トン免除と購入開始時期」を踏まえてのものです。まだお読みでない方はこちらをご参照ください。
2025年12月3日、欧州議会は、鉄鋼・アルミ・セメント・肥料など、CBAM対象となる重厚産業製品の輸入に関し、CO₂ 排出量のモニタリング義務を大幅に強化する決議を可決しました。
これにより、単に輸入数量を申告するだけでなく、製造時に発生した温室効果ガス、いわゆる「embedded emissions(製品に埋め込まれた排出量)」 の報告と、将来的には 実際の製造拠点(工場など)への現地訪問(オンサイト監査)、および認定された機関による検証制度の運用が想定されています。
一方で、前回の制度改正で導入された、「年間輸入量50トン未満」の少量輸入者免除という数量基準は今回も維持される見込みです。ただし、この免除規定があってもなお全体の排出量の99%以上が報告義務の対象となるため、大手や中堅企業はこれまで以上に厳格な対応が求められます。
なぜ今、EUは「報告の信頼性」と「実務監査」を強めるのか
これまで European Commission(欧州委員会)と欧州議会は、2025年2月に示された「簡素化オムニバス規則」で、CBAM の負担軽減と柔軟化を目指しました。50トン免除や申告・証書購入のタイミング見直しなどがその典型です。
しかし、制度移行期間が終盤に近づき、CBAM の実効性を担保するため、形式的な申告だけではなく、実態に即した排出量データの信頼性を確保したいという声が強まってきました。とりわけ、輸入業者や製造拠点が多国籍にまたがる中で、「embedded emissions」の過小申告やデフォルト値の多用などが温室効果ガス管理の抜け穴になりかねないという懸念があったようです。
今回の議会決議は、この懸念に対処するため、「報告義務の強化」と「監査体制の導入」を両立させることで、輸入製品の環境負荷をより正確に“見える化”するための重要な一歩と位置付けられています。
日本企業にとっての“新たな試金石”
今回のアップデート内容は、特に大手企業や中堅企業にとって重要な意味を持ちます。今後、EUに輸出する製品の排出量報告義務が強化され、製造工程におけるCO₂排出量の把握が徹底されるため、これまで以上に排出量データを正確に管理する必要があります。
日本企業にとって重要なのは、サプライチェーン全体での排出量データの透明性を高めることです。特に、製品の製造段階から輸送まで含めた排出量を精密に把握し、正確に報告する体制を早急に整えることが求められます。
また、規制に対応するためには、現地の監査基準や認証制度に対応できる体制を構築することが重要です。特に、今後予定されているオンサイト監査(現地検査)や第三者検証(verifier/auditor)機関による排出量証明の信頼性を担保するためには、第三者検証機関に対応できる体制を早期に整備しておくことが必要です。これは、製品ごとに正確な排出量データを提供し、監査をスムーズに受け入れるために欠かせない準備となります。
さらに、少量輸入者免除の適用を受ける企業でも、将来の規制強化や対象品目の拡大に備えて、長期的なモニタリング体制の構築が必要です。これにより、今後のCBAM拡大や他国規制の変化にスムーズに対応できるようになります。
参考文献
- Parliament backs ‘carbon monitoring’ of heavy industry imports into EU. Euronews, 2025年12月3日
- European lawmakers back expansion of CO2 monitoring rules for heavy industry imports. Carbon Pulse, 2025年12月3日
- Carbon Border Adjustment Mechanism (CBAM). European Commission
- Yamano N, Haramboure A, Kögel C, Lalanne G. The potential effects of the EU CBAM along the supply chain. OECD Working Papers, 2025年












