
松井 大輔
(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応
要約
- SBTiが企業向けNet-Zero基準第2版を発表
- Scope3や進行中排出に関する新たな規定が追加
- 柔軟なターゲット設定のための枠組み追加・報告サイクルは明確化
脱炭素化目標達成に向けたSBTiの新基準
SBTi(Science Based Targets initiative)は、企業向けNet-Zero基準の第2版(V2)を公開しました。これにより、企業は今後ますます厳格かつ具体的な脱炭素化目標を設定し、進捗を報告することが求められます。
特に、新基準では進行中排出(Ongoing Emissions)やScope3(バリューチェーン排出)のターゲット設定の強化が盛り込まれ、企業はより柔軟かつ戦略的に脱炭素化を進める必要があります。
また、進捗報告と検証サイクルの明確化も求められることとなり、企業の透明性確保と責任ある行動がより一層求められます。
企業に求められる脱炭素化への新たなアプローチ
SBTiは、企業が科学に基づいた脱炭素化目標を設定し、実行するための国際的なガイドラインを提供しています。第2版では、Scope1・Scope2・Scope3の排出削減に加え、進行中排出(Ongoing Emissions)への対応も求められるようになりました。
これにより、企業は「2050年ネットゼロ」を目指すだけでなく、過渡期における排出削減方法やその後の除去措置を早期に検討しなければならなくなります。また、Scope3については、より詳細で柔軟なターゲット設定が可能となり、企業がバリューチェーン全体にわたる影響を評価し、対応するための手法が示されています。
脱炭素化を進めるための実行戦略
SBTiの第2版基準では、企業が脱炭素化を加速するための具体的なアクションが求められています。特に、新たに導入された「進行中排出(Ongoing Emissions)」への対応は、企業が2050年までに完全なネットゼロを達成することが難しい場合に、どう進捗を評価し、必要な対策を講じるかを明確にするための指針となります。企業は、この新たな枠組みに基づき、自社の排出量削減計画や除去技術の導入を早期に検討する必要があります。
また、Scope3排出のターゲット設定は企業のバリューチェーン全体に及ぶため、パートナー企業やサプライヤーとの協力を前提とした戦略が重要です。今後、これに関するデータ収集や改善策の策定が企業に求められることになります。さらに、報告・検証のサイクルが強化されたため、企業は進捗状況を定期的に公開し、目標達成に向けた透明性を確保することが必要となります。これにより、顧客や投資家からの信頼を得るとともに、規制当局からの評価も受けることができます。
特に日本企業においては、CBAMやEUDRをはじめとした欧州規制の影響を考慮しながら、国内外での規制適応を進めることが求められます。国際市場での競争力を高めるために、新基準への対応が急務となるでしょう。
近年、ネットゼロ目標を設定・認定した企業の数は急速に増加しており、SBTiによれば2023年時点で500社超だったネットゼロ目標企業は、2024年8月には1,112社まで増加し、2025年時点のターゲット・ダッシュボードでは約2,200社がネットゼロ目標を掲げています。こうした動きは、ネットゼロが一部の先進企業だけのテーマではなくグローバルで主流化しつつあることを示しており、日本企業にとっても新基準への対応を先送りできない状況になりつつあります。
参考文献
- Science Based Targets Initiative. “SBTi releases second draft corporate net-zero standard V2 for consultation”
- Science Based Targets Initiative. “What’s next for net-zero? An updated draft of the Corporate Net-Zero Standard V2”
- https://sciencebasedtargets.org/blog/500-companies-net-zero-ambition
- https://sciencebasedtargets.org/target-dashboard












