松井 大輔
株式会社ゼロック 代表取締役 監修
目次
GX(グリーントランスフォーメーション)とは?
GXとは「グリーン・トランスフォーメーション」の略称です。
2050年カーボンニュートラルに向けた温室効果ガス排出削減の取組を経済の成長の機会と捉え、排出削減と競争力の向上の実現に向けて、「経済社会システム全体を変革」しようという動きがGXです。
経済産業省の定義ですと、「国」や「社会」を対象とした言葉になりますが、最近では「企業」がGXを経営ビジョンに掲げる事例も多くなってきました。
既存の経営方針やビジネスモデルを変革した「脱炭素経営の推進」という意味合いでも使われています。
GXは経済産業省の「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」で提唱された言葉で、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて重要な概念とされています。
「SX」と「GX」は何が違う?
似たような言葉に、SX(サステナビリティトランスフォーメーション)という言葉があります。
「SX」とは、企業が「持続可能性」を重視し、企業の稼ぐ力とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図り、経営の在り方や投資家との対話の在り方を変革するための戦略指針です。
「GX」はESG(環境・社会・ガバナンス)の中の「E(環境)」にフォーカスした考え方です。
「SX」は「S(社会)」、「G(ガバナンス)」を含む社会全体のサステナビリティにフォーカスした意味合いとなります。
また、上記で説明したように、GXは「国」や「社会」を対象とした言葉になりますが、SXは主に「企業」を対象にした言葉となります。
ここはよく混同される言葉なので使い分けには注意が必要です。
関連記事:【経営者必見】ESG経営とは?投資家の評価を下げないために心がけるポイントを解説!
GXを実現するGXリーグとは?
GXリーグとは、GXに取り組む「企業群」が行政(官)・大学/学会など(学)・金融(金)と連携することで、新たな市場想像やルールメイキング、自主的な排出量取引を行うことを目的とした取り組みです。
経済産業省、野村総合研究所、博報堂が中心となって進めており、現在は「GXリーグ基本構想」が公表されています。
2023年度からの本格稼働に向けた実証を行っている状況となります。
GXリーグ基本構想は、GXリーグが目指す世界観やどのような企業群とともに取り組む内容やスケジュールなどの点に関する基本的な指針を示したものになります。
GXリーグの取り組み
- 2050CN(カーボンニュートラル) のサステイナブルな未来像を議論・創造する場
- カーボンニュートラル時代の市場創造やルールメイキングを議論する場
- 自ら掲げた目標に向けて自主的な排出量取引を行う場
GXリーグ参加/賛同企業
KDDI、三菱商事、ロッテ、日本マイクロソフト、三井住友フィナンシャルグループ、ローソン、東京電力、日本テレビ、東急不動産、電通、Google、丸紅、・・・など679社(2023年1月現在)
GXリーグに参加している賛同企業には名だたる大企業が名を連ねており、今現在も続々と増えています。
これまでの欧州の環境基準や成功例を受け入れる「受け身」スタンスからの脱却や経済界における危機感と本気度が見て取れます。
また、GXリーグ基本構想では、日本企業の環境投資を正当に評価する構造や日本から世界に対して、市場や新たなルールを創造していくことが世界観として語られています。
関連サイト:公式GXリーグ参画企業一覧
GXリーグが目指す「循環構造」とは?
GXリーグが示している「経済社会システム全体の変革」とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。
基本構想では、企業の取り組みから生まれた価値が提供される新たな市場の創造を通じて、生活者の意識・行動変容を引き起こすことと記載されています。
また、そこから企業の意識・行動変容につながる「循環」が起き、その構造の中で企業の成長や生活者の幸福、地球環境への貢献が同時に実現される世界を目指しています。
「経済社会システム全体の変革」の実現にあたり、特に重要とされているのは下記の3点です。
- 企業自らの排出削減
- 企業が自らに関連するバリューチェーンへの排出削減に向けて行動する
- 生活者が自ら能動的に選択できるようなGX市場の拡大
GXリーグでは、この3点に賛同する企業を募っており、下の図のような循環構造を導くための取り組みを行います。
GXリーグ参画企業に求められる考え方
GXリーグ参加企業には、自らの排出量削減に向けた取組だけではなく、サプライチェーンや、生活者、教育機関、NGO 等の市民社会など幅広い主体と協働し、炭素中立型の市場設計を先導する役割が求められています。
具体的には以下の3つとなります。
(1)1.5 度努力目標実現に向けた目標設定と挑戦・取り組みの公表
- 2050年カーボンニュートラルに賛同し、 2030 年の排出量削減目標を掲げ、その目標達成に向けたトランジション戦略を描くこと。
- 目標に対する進捗度合いを毎年公表し、実現に向けた努力を行う。
- NDC で表明した貢献目標(2030 年 46%削減)より野心的な排出量削減目標に引き上げる。
(2)サプライチェーンへの働きかけを能動的に行い、カーボンニュートラルを目指す
- サプライチェーン上流の事業者に対して、2050CN に向けた排出量削減の取組支援を行う。
- サプライチェーン下流の需要家・生活者に対しても、製品・サービスへの CFP 表示等の取組を通じて、付加価値の提供や意識醸成を行う。
- サプライチェーン排出についても、国としての 2050CNと整合的と考える2030年の削減目標を掲げ、その目標達成に向けたトランジション戦略を描く。
(3)グリーン製品の積極・優先購入等により、市場のグリーン化を牽引する。
- 生活者、教育機関、NGO等の市民社会と気候変動の取組みに対する対話を行、自らの経営に生かす。
- 自ら革新的なイノベーション創出に取り組み、またイノベーションに取り組むプレイヤーと協働して、新たな製品・サービスを通じた削減貢献を行う。
- 自らのグリーン製品の調達・購入により、需要を創出し、消費市場のグリーン化を図る。
GXリーグに関する最新情報は公式サイトもご参考ください。
関連サイト:公式GXリーグ
企業のGX「環境負荷の見える化」が第一歩
ここまで、GXの基本構想やGXリーグの概要について説明をしてきました。
GXリーグへの賛同やGXを推進していくためには、ざっくりと下記のような流れで、環境負荷を見える化した上で、想定される複数の温室効果ガス削減対策を投資対効果が高い順序で実施していくことが必要になります。
GXの流れ
見える化 ⇒ 削減ロードマップ策定 ⇒ 環境負荷削減
GXと脱炭素経営の進め方は基本的には同じであり、脱炭素経営をより多くの企業で、かつルールを明確にして経済界全体で取り組んでいこうという動きがGXリーグなのです。
具体的な取り組み | |
見える化 | SCOPE3、LCA(ライフサイクルアセスメント) |
ロードマップ策定(目標設定) | SBT、TCFD |
環境負荷削減 | RE100、カーボン・オフセット |
現在、多くの企業でGX、並びに脱炭素経営の機運が高まっており、日々弊社にも多くの問い合わせを頂いている状況ですが、共通して感じられるのはお客様の自社内に環境の専門家が足りていないということです。
大企業、中小企業のいずれにも言えることは、「環境負荷の見える化」が第一歩ということです。
弊社では、LCA算定支援、SCOPE3を始めとしたお客様のGX、脱炭素経営推進の支援をしておりますので、興味のある方はぜひ無料相談からお問い合わせください。