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英国が新たな気候開示基準「UK SRS S2」公表

公開日 2026.04.07 最終更新日 2026.04.07

松井 大輔

(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応

要約

  • 英国政府がISSBベースのサステナビリティ報告基準「UK SRS S2」を公表
  • 気候変動に関する情報だけでなく、それが財務にどのような影響をもたらすかも含めて開示する統合開示へ移行
  • FCAが上場企業への適用に向けて制度協議を開始

概要:気候情報が「環境対応」から「財務・経営判断」の材料へ

2026年2月、英国は国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準を踏まえた新たな気候関連開示基準「UK Sustainability Reporting Standard S2(UK SRS S2)」を正式に公表しました。

サステナビリティ関連財務情報の一般的な開示要件を定める「UK SRS S1」とあわせて用いられるもので、企業のサステナビリティ情報と財務情報を切り離して扱うのではなく、両者を結び付けて説明することを促す枠組みとして位置付けられています。

UK SRS S2では、気候関連の要因が短期・中期・長期にわたって、キャッシュフローや資金調達能力、資本コストにどのような影響を与えるのかを開示することが求められます。

対象となるのは、洪水や干ばつなどの異常気象による物理的リスクだけではなく、脱炭素化の進展に伴う規制強化や技術転換、市場の変化といった移行リスクも含まれます。

さらに、気候変動対応を通じて新たに生まれる事業機会についても開示対象に含まれます。

UK SRS S2が求める開示は、大きく四つの柱で整理できます。

ガバナンス取締役会や経営陣が気候関連リスクと機会をどのように監督し、経営判断に反映させるのか
戦略気候変動が企業のビジネスモデルやバリューチェーン、投資計画、事業継続性にどのような影響を及ぼすのか
リスク管理気候関連のリスクや機会をどのように特定し、評価し、優先順位を付けているのか
指標と目標温室効果ガス排出量や気候関連投資などの指標、排出削減目標やその進捗状況

特に温室効果ガス排出量については、Scope 1、Scope 2、Scope 3の区分に沿って、CO2換算トンで開示することが想定されています。

また、企業は気候シナリオ分析を活用し、自社の戦略や事業モデルが将来の気候変動に対してどの程度の耐性を持つのかを評価し、その考え方や結果を説明することが求められます。

なお、現時点で英国政府はUK SRSを任意利用可能な基準として位置付けていますが、FCA (英国金融行為規制機構)にて英国上場企業への適用に向けた協議を進めており、2026年秋に政策声明、2027年1月1日からの発効を目指しています。

背景:なぜ英国は新基準を打ち出したのか

英国がUK SRSを打ち出した理由は、気候やサステナビリティの情報を、投資家が比較しやすい「財務に結び付く情報」としてそろえたいという狙いがあるためです。

英国政府は、自国を「サステナブルファイナンスの世界的リーダー」にしたいと明言しており、有用で、高品質かつ比較可能な情報を整備する必要があるとしています。

英国はすでに早い段階から気候関連開示を進めてきましたが、国際基準であるISSBの登場を受けて、国際基準をそのまま参照するだけでなく、英国の制度や市場実務に合わせたUK SRSとして整備し、より国際整合的な枠組みへ移ろうとしているのが今回の流れです。

コンサルタントによる解説

企業にとって重要なのは、気候情報を環境部門だけのテーマとして扱わず、経営企画、財務、調達、事業部門を含めて横断的に整理していくことです。今後は、排出量の把握だけでなく、それが収益性や調達コスト、設備投資、サプライチェーン戦略にどうつながるのかを説明できる体制がより重視されると考えられます。

そのため、まずはScope1からScope3までの排出量データの整備と、リスク・機会の洗い出しを進めたうえで、重要な気候要因が自社の財務に与える影響を社内で整理しておくことが有効です。

英国市場に直接関わらない日本企業であっても、ISSBベースの開示の考え方は今後ほかの制度や投資家対話にも波及する可能性があるため、早めに考え方を取り入れておく意義は大きいといえます。

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