J-クレジットとは?仕組みやメリットについてコンサルタントが解説!

目次

CO2排出量を「クレジット(環境価値)」として扱う市場

CO2排出量を「クレジット(環境価値)」として扱う市場

J-クレジット制度とは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット(価値)」として国が認証する制度です。

「クレジット」は、ここでは「環境価値」と考えるとわかりやすいでしょう。JapanのJをとって、日本版のクレジット売買市場の制度のことをJ-クレジット制度と呼んでいます。

本制度により創出されたクレジットは、経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、様々な用途に活用できます。

クレジットの基本的な考え方は、再エネ設備導入や森林の適切な森林管理によるCO2排出削減及び吸収に対して価値を認めるというものです。

下記の図のように、プロジェクトや設備を導入しなかった場合に想定されるCO2排出量を「ベースライン排出量」と定義し、プロジェクトや設備導入後の排出量との差分を「J-クレジット」として認定します。

J-クレジットは中小企業等の省エネ・低炭素投資等を促進するとともに、クレジットの活用により国内の資金循環を生み出すことで、経済と環境の好循環を促進することが期待されています。

J-クレジット制度はこれからの脱炭素社会に必要不可欠な制度

令和3年10月に閣議決定された地球温暖化対策計画では、J-クレジット制度を「分野横断的な施策」としており、 併せてカーボン・オフセットの推進を「脱炭素型ライフスタイルへの転換」として位置づけています。(J-クレジット制度について)

また、J-クレジット制度は、信頼性・質の高いクレジット制度として認知されており、2050年カーボンニュートラルの 実現を目指す上でも必要な制度です。

政府は2030年度以降も活用可能な制度として継続性を確保するとともに、カーボン・オフセットや財・ サービスの高付加価値化等に活用できるクレジットを認証するJ-クレジット制度の更なる活性化を進めるとしています。

J-クレジット登録数は2030年度の目標は1500万t-CO2に

J-クレジット制度の登録プロジェクトは2022年6月30日時点で920件となります。

2013年の制度開始から毎年増え続けており、これまでにJクレジットで認証されたCO2の総量は累計で806万t-CO2となります。国はJ-クレジットの認定量に関する目標を設定しており、2030年度は1500万t-CO2(累計)を目標としています。

J-クレジット登録数

J-クレジット創出の注意点とは

J-クレジットでは、排出削減・吸収につなげる技術ごとに適用範囲、算定方法が及びモニタリング方法が詳細に定められており、「方法論」と呼ばれています。方法論は大きく、省エネ、再エネ、森林、工業プロセス、農業などにカテゴライズされており、下記の一覧が例となります。

項目方法論
省エネルギー      ボイラー導入、ヒートポンプ導入、空調設備導入、照明設備導入コージェネレーションシステム導入、未利用廃熱の発電利用、電気自動車又はプラグインハイブリッド自動車の導入、LNG燃料船・電動式船舶の導入、屋上緑化による空調に用いるエネルギー消費削減、自家用発電機の導入・・・など
再生可能エネルギーバイオマス固形燃料(木質バイオマス)による化石燃料又は系統電力の代替 、太陽光発電設備の導入、再生可能エネルギー熱を利用する熱源設備の導入、バイオ液体燃料(BDF・バイオエタノール・バイオオイル)による化石燃料又は系統電力の代替 、バイオマス固形燃料(廃棄物由来バイオマス)による化石燃料又は系統電力の代替、水力発電設備の導入、バイオガス(嫌気性発酵によるメタンガス)による化石燃料又は系統電力の代替、風力発電設備の導入、再生可能エネルギー熱を利用する発電設備の導入
森林森林経営活動、植林活動
工業プロセスマグネシウム溶解鋳造用カバーガスの変更、麻酔用N2O ガス回収・分解システムの導入、液晶TFTアレイ工程におけるSF6からCOF2への使用ガス代替、温室効果ガス不使用絶縁開閉装置等の導入、機器のメンテナンス等で使用されるダストブロワー缶製品の温室効果ガス削減
農業豚・ブロイラーへのアミノ酸バランス改善飼料の給餌、家畜排せつ物管理方法の変更 、茶園土壌への硝化抑制剤入り化学肥料又は石灰窒素を含む複合肥料の施肥、バイオ炭の農地施用

J-クレジット創出者の3つのメリット

①クレジット売却益を得られる

自社で省エネ設備や再生可能エネルギー、適切な森林管理など温室効果ガス削減を行っている企業はJクレジットの発行により、削減量や吸収量に応じてクレジット売却益を得ることができます。

企業の再エネ設備の導入には大きな投資費用が必要なことが多いですが、J-クレジットの販売により資金を得られることで、設備費用の補填をすることができます。

クレジット売却益

では、J-クレジットの販売によって、実際に得られる売却益はでどれぐらいなのでしょうか。クレジットを売却する方法はJ-クレジットプロバイダーによる仲介、クレジットの売出し、入札販売の3つがあります。

例えば、入札販売で再エネ発電によるクレジットを販売する場合、2022年4月時点で「3,278円/t-CO2」が落札価格の平均値となっており、需要の高まりに応じて年々増加しています。

みずほリサーチ&テクノロジーズによると、炭素税や排出量取引、ガソリンなどに課税するエネルギー税を合計した日本の「実効炭素価格」は30ユーロ(約4,000円)程度ですので、ほぼそれに近い価格で取引されていることになります。

②地球温暖化対策への取り組みをPRできる

J-クレジットを創出することで、地球温暖化対策へのアピールにつなげることもできます。

J-クレジットを販売して売却益を受け取った段階でそのクレジットによる「環境価値」の所有権は失いますが、クレジットを創出して販売した実績については外部へアピールしても問題はありません。

J-クレジットを創出した実績をCSR報告書や自社サイトでアピールすることで、ステークホルダーの自社ブランドイメージの向上や環境にやさしい企業という印象を訴求することができます。

地球温暖化対策への取り組みをPR

③新たなネットワークの構築

自社が創出したクレジットがどこかしらの組織に購入された場合、売却益に加えて新たなつながりという見えない資産を得られる可能性があります。例えば、食品メーカーが創出したクレジットが地産地消的に力を入れている企業や地方公共団体に利用された場合、新たな素材を使った新商品の開発や新たな販売チャネルの創出などネットワークの構築につながることもあります。

そういう意味では、クレジット創出の際にはこういった効果を期待した上で、どのような企業や組織に活用してもらいたいかを事前に考えて戦略的に創出していくことも重要かもしれません。

新たなネットワークの構築

J-クレジットの活用方法(購入者側のメリット)

続いて、J-クレジットの購入者側の活用方法について見ていきましょう。

J-クレジットを購入する基本的なモチベーションとしては、CO2の排出量削減の「枠」を購入することによるオフセットなわけですが、その具体的な活用方法について紹介します。

①カーボン・オフセットに活用する

日常生活や企業活動の中で、どんなに努力をしても発生してしまうCO2(=カーボン)を、省エネ導入や森林の管理により創出された他の場所の削減分で埋め合わせ(=オフセット)する取組のことをカーボン・オフセットと言います。

J-クレジットを購入することで、自社の取り組みや商品についてオフセットを行い「カーボンニュートラル」であることを外部へアピールすることができます。

例えば、自社の会議やイベントについて、参加する人の移動や、使用される電気・ガスから発生するCO2排出量を算定して同様のJ-クレジットを購入することで、実質「CO2ゼロ会議」にすることが出来ます。他にも、応援したい特定の地域で創出したクレジットを選ぶことで、地元地域の設備投資や環境改善を通じた地域活性化を後押したり、「森林由来」のクレジットを活用することで、カーボン・オフセットをしつつ、森林の適正な管理を応援することができます。

このように、オフセットの活用方法は幅広く自社の目的に合った使い方をしていくことが大切です。

②再エネ調達量としての活用

②再エネ調達量としての活用

J-クレジットは脱炭素経営として多くの企業が取り組む、CDP・SBT・RE100において、「再エネ調達量」として報告することが出来ます。

CDPとは

CDPは、投資家向けに企業の環境情報の提供を行うことを目的とした国際的なNGOのことです。気候変動等に関わる事業リスクについて、企業がどのように対応しているか、質問書形式で調査し、評価したうえで公表するものです。

SBTとは

SBT(Science Based Targets)とは、パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を下回る水準(well Below 2℃)に抑え、また1.5度に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことです。

RE100とは

RE100とは、事業活動で使用する電力を、全て再生可能エネルギー由来の電力で賄うことをコミットした企業が参加する国際的なイニシアチブです。

CDP・SBTでは、他社から供給された電力、熱(Scope2)に対して、それぞれ再エネ電力、再エネ熱由来のJ-クレジットを使用することができます。

その他にも、温対法の調整後温室効果ガス排出量や、調整後排出係数の報告であったり、省エネルギープロジェクトによるクレジットを省エネ法の共同省エネルギー事業の報告など、幅広い活用方法があります。

ただし、J-クレジット活用の際に、由来するクレジットにより利用する用途の制限がある点に注意が必要です。

具体的には下記のマトリクスの通りとなります。詳細な制約や条件については割愛するので気になる方は下記のリンクにて確認してください。

特に、CDP、SBT、RE100、温対法の調整後温室効果ガス排出量の報告については、特定の由来のクレジットしか利用出来ないため注意が必要です。

再生可能エネルギー(電力)由来再生可能エネルギー(熱)由来 省エネ由来   森林吸収由来    工業プロセス・農業由来 
温対法での報告   ○  ○  ○   ○  ○
省エネ法での報告   ✕  ✕  ○   ✕  ✕
カーボン・オフセットでの活用   ○  ○  ○   ○  ○
CDP質問書での報告   ○  ○  ✕   ✕  ✕
SBTでの報告   ○  ○  ✕   ✕  ✕
RE100での報告   ○  ✕  ✕   ✕  ✕
SHIFT・ASSET事業の目標達成   ○  ○  ○   ○  ○
経団連カーボンニュートラル行動計画の目標達成   △  △  △   ○  △
クレジット種別による活用先一覧

非化石証書・グリーン電力証書との違いは?

ここまでJ-クレジットについて説明をしてきましたが、実は同じような考え方で環境価値をクレジット化したものが「非化石証書」「グリーン電力証書」です。

脱炭素経営を進める上で、それぞれの違いについて理解した上でうまく活用していくことが望ましいです。

非化石証書 = 非化石電源で発電された電気の非化石価値を切り離して証書にしたもの

「非化石電源」とは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどの再生可能エネルギーと、原子力発電といった、天然ガスや石炭、石油などの化石燃料を使わずに電気を作る発電方法のことです。

非化石電源によって発電された電気は「CO2を排出しない」という価値があります。その価値を証書にして売買可能にしたものが、「非化石証書」です。

非化石証書は電力会社によって売買されており、電気と同じように「1kWhあたりxx円」という単位で売買されています。

    約定量   約定価格   約定会員数
非FIT非化石証書
(再エネ指定なし)
12億4680万kWh1.10 円/kWh14
非FIT非化石証書
(再エネ指定)
6億3073万kWh1.20 円/kWh18
FIT非化石証書5億0881万kWh1.30 円/kWh59
日本卸電力取引所の公開情報を基に作成

続いて、グリーン電力証書について説明します。

グリーン電力証書は風力や太陽光、バイオマスなどの再生可能エネルギーで作ったグリーンな電気が持つ「環境価値」をクレジットとして証書化したものです。

グリーン電力証書はオフィスや工場、イベントや商品・サービスなど様々なシーンで、電気のグリーン化への取り組みの手段として利用されており、企業や自治体の環境対策に貢献しています。

非化石証書との違いは再生可能エネルギー電源のみ認定対象である点と、J-クレジットと同様いかなる企業・団体でも直接購入が可能な点となります。

一方で非化石証書はすべての企業・団体ではなく、電力の小売電気事業者のみ購入できるという特徴があります。

上記2つとJ-クレジットを含めたそれぞれのクレジットの違いは下記の表の通りとなります。

証書名  転売  再エネ由来購入
非化石証書
×〇(例外あり)小売電気事業者
Jクレジット
企業、団体
グリーン電力証書
×企業、団体

J-クレジットを経営に活かそう

昨今、脱炭素経営に向けた取り組みは、企業が抱える主要な課題となっています。今回ご紹介したJ-クレジットは脱炭素経営を進めるための一つのツールであり、企業が定める目的によって制度を理解した上でうまく使いこなすことが重要になります。

また、現在、非化石価値取引市場についてオークションを行う実証実験が行われたり、国際的な枠組みやルールメイキングが活発に行われている状況です。そういった情報をうまくキャッチアップしながら自社の脱炭素経営を進めていって欲しいと思います。

弊社では、お客様のGXと脱炭素経営推進の支援を行っており、LCAやスコープ3、環境マーケティングに至るまで幅広くサービスを提供しています。

今回紹介したJ-クレジットやオフセットに関するご相談も受け付けておりますので、まずはお気軽に無料相談のご予約を頂ければと思います。