
松井 大輔
株式会社ゼロック 代表取締役 監修
目次
カーボンニュートラル実現や脱炭素化経営について、まずは何から取り組めば良い?とお悩みの方はぜひ、本記事で始め方を知り最初の一歩を踏み出していただければと思います。
カーボンニュートラル実現や脱炭素化経営について取り組みを検討している「経営者/責任者/ご担当者」の方はぜひご参考ください。
まずは現状を数値化

企業として、カーボンニュートラルや脱炭素化へ取り組むべきかどうかわからない、と困っている方はまだまだ多いようです。
取り組むべきかどうかをはっきりさせるために、まずは「温室効果ガス(二酸化炭素(CO2))が会社からどれくらい排出/吸収されているのか算定して具体的な数字に落とし込む必要があります。
この算定作業は、取り組むべき方向性を見極めるための重要な最初のステップです。
そこで今回は、その手前の段階である「どの程度本格的に算定するべきかどうか?」をざっくりと把握するところからわかりやすくご説明したいと思います。
温室効果ガス/CO2排出量
算定する対象は主に二酸化炭素(CO2)や温室効果ガスをどれだけ排出しているのか、まずはその数字を算定する必要があります。
二酸化炭素(CO2)については温室効果ガスに含まれるため、以後は「温室効果ガス」で統一して説明していきます。
二酸化炭素(CO2)と温室効果ガスの違いについては参考記事もご参考ください。
温室効果ガス/CO2吸収量

温室効果ガスの排出量と同時に、吸収量も測る必要があります。
カーボンニュートラル実現への取り組みでは、温室効果ガスの排出量と吸収量の差し引きをゼロの状態にすることが目的となるためです。
温室効果ガスの排出が多い場合でも、吸収量によってはすでに必要な基準を達成している可能性があります。
現状把握で取り組む必要性を明確に
温室効果ガスの排出量と吸収量が明確になると、カーボンニュートラル実現に取り組む必要があるかどうかはもちろん、急いで対応が必要なのか、じっくり準備を整えるべきかなど、企業としての方向性も見えてくるでしょう。
また、必要かどうかという判断軸の他にも、取り組むことへのメリットも把握しておくことをおすすめします。
算定対象を把握する
まずは環境省が公開している資料やデータを確認しながら、算定対象となる項目が自社に関連しているかどうかをざっくりと把握します。
おそらくこの時点で
- 大規模に取り組む必要がある
- 取り組む必要がある
- 取り組みが必要かどうか微妙なライン
- 現状では取り組む必要なし
- 取り組む必要性は全くない
といった取り組み方への現状が確認できると思います。
項目の詳細や対象となる温室効果ガス(サプライチェーン)排出量については
こちらの詳細記事もご参考ください。
参考記事:Scope3(スコープ3)とは?概要や算定方法を分かりやすく解説
現状から目的を立てる

先ほどの現状(算定前の必要性)が把握できれば、温室効果ガス(サプライチェーン)排出量を算定するための具体的な目的を立てやすくなります。
「算定する段階で目的が必要?」
「カーボンニュートラルの実現が目的では?」
と思われるかもしれません。
企業にとって最適な目的設定とは経営メリットと環境保護を両立させることだといえます。
カーボンニュートラルの実現は、世界が目指す持続的な目標・目的であり、企業の目的とは分けて考えることが現実的に取り組んでいける軸になってくれます。
目的と算定精度の関係
企業で掲げる目的によっては、温室効果ガス(サプライチェーン)排出量算定の「精度」にも影響します。
算定精度が変われば、取り組みの規模も変わります。
当然、規模が大きくなればコストや労力も増大してしまいます。
算定したデータは企業として様々なシーンで報告・公開していきますが、そこで必要になる数字の精度は企業の規模や業種、先の方向性などから最適化しなければなりません。
もしも目的(算定精度)を決めずに算定作業をスタートすれば、結果的に必要のない高い精度レベルで算定してしまい、費用や労力を使いすぎてしまうかもしれません。
一方で、必要な精度に届いておらず想定外の作業やコストがかかってしまう可能性も出てきてしまいます。
目的に基づいて適切な算定精度を決定し、コストと労力のバランスを取ることが重要となります。
社内の理解を得る

企業内で温室効果ガスのサプライチェーン排出量を算定していくためには、経営者自身の理解はもちろんですが、社内全ての部署や社員の協力が不可欠です。
先に掲げた目的(算定規模)によっては専門部署を立ち上げたり、専門家とタッグを組んで継続的に取り組む必要もあるでしょう。
社員や従業員が、自発的に環境負荷を削減する行動を取れるような環境を整えることも重要です。
カーボンニュートラル実現へ取り組むことで企業や社員にとってどういったメリットがあるのか、目的の先にある将来のビジョンをわかりやすく共有し、協力しあえる社内体制を整えていくことも大切なプロセスとなります。
自社内で対応できないことも
環境省などから、カーボンニュートラルの実現について詳しい資料やデータが多数公開されてはいますが、新しい取り組みには思った以上のコストや労力がかかってしまうものです。
自社内では難しい、と判断した場合はカーボンニュートラル実現や脱炭素化経営をサポート・支援しているコンサルタント/専門家と連携して取り組むことも検討してみると良いでしょう。
参考記事:【2022年】企業のCO2排出量削減方法19選!コスパ評価あり
コンサルティングを受けるメリット

環境問題やカーボンニュートラル実現、脱炭素経営をサポート・支援しているコンサルタント/専門家にサポートしてもらうことで、取り組みへの負担は大幅に減少します。
コンサルティングを受けるメリットとしては
- 正確で専門性の高いデータ
- 第3者による検証や評価で得られる信頼性
- 時間や労力の節約
- 戦略的な指導
- 規制要件や法的な基準を熟知
- 常に最新の情報で受けられるアドバイス
- 算定結果を基にしたデータ分析やトレンドの把握
など、業界によっては専門家は必須ともいえる存在になるでしょう。
カーボンニュートラルや脱炭素化経営に関しては、世界的な情報が日々更新され続けています。
常に最新情報を把握しているコンサルタントは、それだけでも非常に頼りになる存在です。
コンサルティングを受けるデメリット
多くのメリットがあるコンサルティングですが、気をつけておきたいデメリットも意識しておきましょう。
- コストがかかる
- 社内の情報を共有しなければならない
- 社内で取り組み状況を把握せず依存してしまう
- 業界との相性
といったことがデメリットとして考えられます。
コストがかかる
コストについては、メリットにおけるコストパフォーマンスをシミュレーションし、適切な費用になるようしっかり検討しましょう。
社内の情報を共有しなければならない
社内情報を共有するリスクは、社外との連携では避けて通れません。
契約の際に、心配な点や不明なことは明確にして安心・信頼できるコンサルティング企業や専門家を選びたいところです。
カーボンニュートラルや脱炭素経営について、素人にもわかりやすく情報を提供しているかどうか、企業のホームページや経営者が実施する公演やセミナーに参加してみるのも判断の手助けになるでしょう。
参考記事:「カーボンニュートラル」を体系的に学べるゼロックの無料学習ページ
社内で取り組み状況を把握せず依存してしまう
コンサルタントや専門家とは定期的に情報共有を行い、社内でも取り組み状況を把握しておきましょう。
状況を把握することは先に立てた目的の進捗共有にもなり、取り組みに対して継続的な社内のモチベーションにも繋がります。
また、企業内での自己解決能力や専門知識の発展を促進するためにもコンサルタントに依存しすぎないよう気をつけてほしいと思います。
業界との相性
カーボンニュートラルや脱炭素経営は比較的新しい分野であり、有名なコンサルティング会社であっても得意な業界や規模が偏っている場合があります。
自社業界との相性が悪い場合、業界特有の課題や制約事項・技術要件などに慣れていない可能性があります。
事前に自社業界への理解の程度や過去の成功事例などを参考にして、最適なコンサルティングパートナーを選ぶことが重要です。
参考記事:コンサルティング事例
早期取り組みはチャンス

カーボンニュートラル実現や脱炭素経営への取り組みは、世界的な動きであり影響を全く受けないという企業は、日本国内においてほぼ無いと言って差し支えないでしょう。
そして、一歩でも早く取り組みをスタートさせることで得られる恩恵には、多くの可能性が広がっています。
- 先行企業としてイメージUP
- 新たな市場の開拓
- 規制、法的要件の対応
- 効率化とコスト削減
新たな市場の開拓
カーボンニュートラルや脱炭素化に関連する製品やサービスは、今後ますます需要が増えていくことが予想されます。
新たな市場機会にもいち早く気付き、参入できる状態に整えておくことがポイントです。
規制、法的要件の対応
カーボンニュートラルや脱炭素経営に関する規制や法的要件はますます厳しくなる傾向にあります。
早期に取り組むことで、将来の変化に対応するための準備を進めることができます。
効率化とコスト削減
カーボンニュートラルや脱炭素経営への取り組みは、コスト削減と効率化につながります。
省エネや再生可能エネルギーの活用など、より長期のコストメリットを享受するためにも、早期の取り組みをおすすめいたします。
脱炭素に取り組まないリスク

温室効果ガスの排出量において、カーボンニュートラル実現や脱炭素化に取り組む必要がなかった場合でも、同業他社が取り組みを公開することで相対的に企業のマイナスイメージにつながる可能性があります。
また、世界の大口投資家はカーボンニュートラルや環境問題に取り組む企業への積極的な投資と、取り組まない企業からの資金引き上げを着実に進行させています。
今後は個人投資家にも広く意識が浸透し、ますます株価への影響が強まっていくことが予想されています。
たとえ温室効果ガス(サプライチェーン)排出量に問題がなくても、
「カーボンニュートラル実現への取り組みを行わないことそのものが、将来的に小さくないリスクを抱える可能性がある。」
ということを、ここまで読んでくださった皆さまには、知っておいてほしいと思います。