業界初「CIRCULAR FURNITURE」を支える—特注家具のCFP削減量算定方法論と算定ツールの開発

2026年4月、三井デザインテック株式会社様は、家具の設計から使用後の循環までを包括的に支援する新サービス「CIRCULAR FURNITURE」を開始します。この取り組みは、オフィスや宿泊施設等に設置される特注家具の設計・製造に加え、CFP算出、DPP実装、トレーサビリティから再資源化までを一気通貫で支援する“業界初”の取り組みです。本プロジェクトにおいて、弊社ではサービスの中核となる「環境負荷の見える化(CFP算定)」を、単なる“算定代行”ではなく“算定を仕組みとして内製化する”という形で支援させていただきました。
| 1. お客様 | 三井デザインテック株式会社 |
| 2. プロジェクトメンバー |
|
| 3. ご支援期間 | 6〜12ヶ月 |
| 4. ゼロックのご支援範囲 |
|
| 5. 方法論の第三者妥当性確認 |
|
新サービス「CIRCULAR FURNITURE」が目指す“家具の循環”とは
まずはじめに、皆様のご部署について教えてください。
三井デザインテックは、住宅・オフィス・ホテル・商業施設・スポーツ施設などの空間デザイン・設計・施工、リニューアル工事などを手がける会社です。
私、本田は、クリエイティブデザインセンターという部署で空間デザイナーとしてオフィス来客エリアやギャラリーなど企業のブランド発信にかかわる空間や、ビル・マンションの共用部などの空間をご提案しながら、クリエイティブデザイン推進室 サーキュラーデザイングループにも所属しています。
本プロジェクトメンバーの堀内と渡辺も、空間デザイナーとして業務を行いながら、同グループにも所属しています。
「CIRCULAR FURNITURE」はどのようなサービスですか?
「CIRCULAR FURNITURE」は、特注家具を対象に、設計・製造から、CFP算出、DPP実装、トレーサビリティ、再資源化までを包括的に支援する新サービスです。
複数の専門パートナーと連携し、従来の「製造・使用・廃棄」という線形プロセスを、回収・再資源化へとつなげる循環型ライフサイクルへ転換する点が特徴です。
具体的には、循環しやすい家具の設計・製造を当社が担い、その家具のCFP削減量が、ゼロックさんと開発したツールにより算出されます。また、CFPを含む各種情報はDPPとして統合され、使い終えた家具の回収・資源マッチング・再資源化までを連携して実現します。

2050年までにグループ全体で温室効果ガスネットゼロを目標に掲げる三井不動産グループの一員である当社は、街づくりにおける環境との共生宣言「& EARTH for Nature」における重点テーマ「自然資源を循環させる」を具体化する取り組みの一つとして、設計者・製造者としての「デザインする責任」「つくる責任」を見つめ直しています。
資源循環の必要性を強く認識する中で、まずは私たちが設計し製造する特注家具の領域からこの取り組みを始めています。
また、国土交通省は、2028年度から新築建築物に対して、ライフサイクル全体の環境負荷の定量把握・評価を義務付ける「建築物LCA制度」の導入を検討しています。初期段階では家具が制度の対象に含まれないことも予想されますが、中長期的な目線で家具のGHG削減や資源循環促進に取組む意義は大きいと思っています。

“1000種類の家具を、1つ10分以内で算定可能に” —— 内製化を前提としたCFP削減量の算定
今回のプロジェクトのテーマや重視した点を教えてください。
CIRCULAR FURNITUREでは、既存の特注家具と比較して環境に配慮した設計・循環を目指しています。今回のプロジェクトの目的は、そのような特注家具の基本設計のタイミングで、当社のデザイナーがCFP削減量を算定できる仕組みを作ることにありました。
その中で重視したのは、算定したCFP削減量を外部に開示するにあたり、いかに信頼性のある情報としてお客様に受け取っていただくかという点です。特に、今回対象とした特注家具は、「物件ごとに個別にご提案するアイテム」であったため、都度外部の専門家の算定支援や検証を受けることが現実的ではありませんでした。
今回はゼロックさんにご提案いただきながら、特注家具向けのCFP削減量「算定方法論」を策定することで、どのアイテムでも外部の方に共通して算定根拠やロジックを開示できるようにしました。また、この算定方法論は、ISOに準拠した第三者検証を受けることで、より信頼性を高めることを目指しました。
また、LCAを熟知していない担当者が多種多様な特注家具のCFPを繰り返し算定するという必要性から、柔軟性や拡張性を持たせた算定ツールを作成し、いかに算定の負荷を減らせるかという観点も重視しました。

方法論策定や算定ツール作成の中で難しかった点や課題はありましたか?
算定の「妥当性」と「簡易性」の両立が最も難しかったです。通常は専門家が多大な時間をかけて算定するところを、今回は1製品あたり10分程度で算定することを目指しました。
正確性を求めすぎると設計者の情報入力やマニュアルが煩雑になるため、必要な算定品質と算定負荷のバランスを取る作業は、最後までゼロックさんに根気強くご対応いただきました。
LCAに関する考え方はゼロックさんから逐一丁寧なご説明をいただけましたが、逆に我々側の課題として、業界特有の専門用語や、当たり前すぎて言語化できていない慣習を整理し、ゼロックさんと共有する必要がありました。この初期の問題がツールの構成に直結するため、最初のすり合わせ段階では思い至らなかった不整合の解決にも、ゼロックさんと共に知恵を絞って取り組みました。
特に、幅広い対象の特注家具を適切にカテゴライズし、様々な形状やマテリアルを記号化して当てはめる作業は、後々のツールの使い勝手を最大限に考慮しながら慎重に検討を重ねました。

ゼロックが担った「妥当性×実用性」の両立
コンサル企業の選定にあたり重視された点や、その中で弊社を選んでいただいた理由があれば教えてください。
今回の取り組み自体が初めてで、どういう会社があるか全然分からなかったので、まずは、とにかくHP等でどんな会社があるのかを調べることからスタートしました。
しっかりスピード感を持ってプロジェクトを遂行しつつ、ちゃんと使えるものが出来上がるのかという実用性と、環境負荷の算定や情報開示の領域で信頼性のある会社かどうかという観点で、何社かに資料請求や実際にお話をさせていただきました。
その中で、ゼロックさんとお話しさせていただき、こちらの思いや質問に対して、すごく丁寧に的確に答えていただけたところが信頼できると感じました。
また、ご提案書の形で支援内容やアプローチの方法を具体的にプレゼンテーションしていただけたことも大きかったです。資料の内容も良かったですし、総合的に判断してゼロックさんとであればプロジェクトを前に進められるイメージができました。

堀内健人氏

実際に弊社の支援を受けてみて、コミュニケーション面や成果物への満足度をお聞かせください。
プロダクトメーカーの作る家具とは違い、私たちが算定しようとしている特注家具は作り方も材料の選び方もプロジェクトごとに変わります。その特性を打ち合わせのたびに深くご理解いただき、柔軟性と妥当性、UXのバランスをとりながら進行いただけたゼロックさんのコミュニケーション力に大変感謝しています。
私たちのやりたいことを把握したうえで、「できることと」、「できないこと」、「やる必要がないこと」についてうまく線引きいただき、丁寧にフィードバックを繰り返してもらえた点が良かったです。
出来上がった算定ツールについては、これからも定期的に更新を続けていくことになりますが、その点でもこれまで重ねてきた相互理解があれば乗り越えていけると確信しています。
御社の社員様向けに算定ツールの説明会やLCA研修を実施しましたが、こういった取り組みに対して社内でどのようなお声がありましたか?
算定ツールは、使い方を説明すれば入力自体は正しく実践できることは、何度も重ねた入力テストで確認ができていますが、算定の理論や知識についてはやはり難しいという声が多いです。
この仕組みや新サービスの意義については、社員が説明を受けるだけでは十分理解されにくく、自ら学ぼうとする姿勢がなければ正しい理解ができないですし、結果としてお客様にも的確な説明ができません。内容を身近に感じ、意欲的に取り組んでもらうためには、より理解を深め自分ごととするための施策が必要だと感じています。

「CIRCULAR FURNITURE」のその先へ
「CIRCULAR FURNITURE」について、今後の展開やアップデートに向けた課題などありましたらお聞かせください。
まずは、2026年4月から本格提供を開始し、将来的には内装空間全体のサーキュラリティを実現したいと考えています。
CFP算定ツールについては実務を通じて追加で算定したいアイテムや材料などの不足する要素が必ず出てくるため、アップデートを検討していく必要があると感じています。
また、サーキュラーエコノミーは、自社だけの取り組みでは本質的な解決にならないということにも直面しています。前述のとおり、内容を進化させていくことはもちろんですが、本サービスの業界内の連携や対象を家具だけではなく内装材に広めるなどの対応は考えていきたいと思っています。


三井デザインテック株式会社 ニュースリリース
https://www.mitsui-designtec.co.jp/wpctrl/wp-content/uploads/pressrelease_mdt_20251203.pdf



