COVID-19によるエネルギー起源GHG排出量の影響調査

SPEED研究会様

目次

概要

COVID-19により、ロックダウン等世界的に大きな行動変容が起こりました。テレワークの増加やが外出自粛によりどの程度脱炭素が進んだか科学的に調査しました。

また、経済の落ち込みに伴う「グリーンリカバリー」が叫ばれる中、具体的な事例を国内海外問わず調査し比較しました。グリーンリカバリーによる将来のシナリオ変化にも着目しました。

最終的には、本研究成果についてエコプロ2020にて発表しました。

調査目的

COVID-19 による世界規模の感染症リスクの蔓延は、健康・医療に加えて、経済や社
会、そして環境を含む様々な側面で大変革を起こしています。毎年 700 万人の生命を脅か
す都市の大気汚染は各地で大きく改善し、500 億トン排出される温室効果ガスは一時 2 割
削減され、再生エネルギーへの転換に対する気運が急速に高まっています。このような効果
が見られる一方で、医療廃棄物や食品ロス等の廃棄物は不適切に扱われ、再生事業の遅延な
どが起きています。元々水不足の地域は感染対策がさらに困難なものになっています。深刻
な経済の停滞は森林破壊や乱獲へとつながっており、生態系の衰退に加えて新たな人獣共
通感染症のリスクが高まることが懸念されます。
いま、世界各地で環境学者が様々な研究成果を科学論文を通じて報告しています。世界規模
の大転換のなか、どこまで環境科学は解明しているのか、しっかり見極めることが新常態の
サステナブル経営を推進するうえで必要不可欠と考えます。

COVID-19と環境研究 -1000の科学論文からみた環境科学の現状- より抜粋

日本や世界の脱炭素目標は、簡単な目標ではありません。IPCCの1.5°目標にしても、Business As Usualでは達成が困難であることが指摘されており、IEAによりコロナショック前に予測されていたGHG排出量シナリオでは、今後も排出量が増え続けるシナリオが描かれていました。

ただ、それも当然であり、過去数十年にわたり世界全体のGHG排出量は増え続けているからです。

そんな中、誰もが予想していない、かつ、世界的にとても大きなインパクトのあるコロナショックがおきました。環境側面に注目するのならば、誰もが一度は思ったことのあることが、予期せず起きてしまったのです。

  • 「みながエネルギーを利用しない生活をしたらどうなるのか?」
  • 「飛行機に乗らないとどれくらいCO2は削減されるのか?」
  • 「人間の<我慢>により、どの程度地球環境は改善されるのか?」

今回のCOVID-19による短期的な影響の把握は、環境側面でいえば世界的実証実験ともいえるかもしれません。

また、「グリーンリカバリー」が叫ばれることで、長期的な目線にも影響を与えています。

今回私たちは、COVID-19によるエネルギー分野への影響と、グリーンリカバリーを含めた長期的な影響について調査を実施しました。以下では、調査内容の簡単な概要を紹介します。

電力需要の変化

ロックダウンにより電気需要が最大20%減少

Decrease of mobility, electricity demand, and NO2 emissions on COVID-19 times and their feedback on prevention measures より

COVID-19で最も大きい「制限」は、ロックダウンでしょう。2020年の上半期では、世界各地で感染の広がりとともにロックダウンが実施されました。

その結果、世界の電力需要は2019年比で減少し、多いところでは約20%の減少を見せています。逆に言えば、多い地域でも20%ほどの減少にとどまっており、日本のように5%未満の国もあります。いかに生活の基本となる電力需要を抑えることが難しいかを表しているのではないでしょうか。

ロックダウンの制限においてこの結果であることから、GHGの削減目標を50%とするのならば、活動量を下げることでは実現が難しく、原単位を下げることが重要であることがわかります。

家庭の電力需要のピークシフト

Electricity demand during pandemic times: the case of the COVID-19 in Spain より

COVID-19では、家庭の電力需要が大きく変化しました。その理由はもちろん、テレワークの増加です。

今まで、家庭における電力需要は朝と晩に集中していましたが、テレワークの増加に伴い、昼の電力使用量が大きくなっています。

この情報は、家庭向けの太陽光発電システムにおける自家消費率にも関わってくるため、今後どのような生活様式が一般的になるのかによって、国のエネルギー政策も変化することが想定できます。

再生可能エネルギー比率

各国のエネルギー比率を調査した結果が上のグラフになります。

日本の再生可能エネルギー比率が他国に比較して低いことがわかります。

また、2020年の赤い線をみるとわかる通り、過去の年と比較して再生可能エネルギー比率は増えている傾向にあることがわかります。

特にEUでは、原子力発電ありの場合の割合で約70%に達しており、日本と比較して50ポイントほど大きい割合になっています。

なお、再生可能エネルギーの割合が増加した理由は主に2つあります。

  • (COVID-19関係なく)再生可能エネルギー自体の普及を進めていること
  • COVID-19により、電力需要が減少し調整可能電源が削減されたこと

特に2つ目の理由は、再生可能エネルギーのデメリットとも表裏一体のため注意が必要です。

長期的な影響

投資家の反応

Renewables 2020, IEA より

COVID-19の長期影響を評価するうえで最もわかりやすい指標は、株価でしょう。株価は、将来の収益等も加味されるため、その数値の変動は将来に対する皆の総意を含んでいます。

下側の図は、日経平均やナスダックといったインデックスの推移を表しており、上側の図はエネルギーセクターごとに分割した株価の推移を表しています。

下図のインデックスを見ると、短期的にはどこの株価も減少に転じましたが、比較的すぐ回復するインデックスが多いことがわかります。

上図をみると、さらに傾向が明らかです。もともとコロナショック以前においても、再生可能エネルギーセクターの株価は上昇傾向にありました。コロナショックを経てさらに加速し他のエネルギーセクターと比較してこの期間優位であったことがわかります。

エネルギーに関する将来予測

World Energy Outlook 2020, IEA より

グリーンリカバリーの投資額が増えていることからも、世界的にさらなる脱炭素の流れが見込まれます。

そこで、2020年にIEAが予測したシナリオが上図です。

まず、エネルギーの需要は世界的に増えることが見込まれています。世界の人口は2050年ほどまで伸びることが想定されていますので、当然の結果と言えるかもしれません。

ただし、「リカバリーの速度」によっては、2019年の需要に戻るのに数年の差がでるとしています。

エネルギーMIXに関しては、今後も再生可能エネルギーの増加が見込まれています。

また、特徴的なことは、石炭火力については、2019年の実績値に今後戻ることがないことが見込まれていることです。とはいえ、2019年を1とすると2030年においても90%以上は発電規模を維持しているため、劇的に減少するようなことにはならない想定がされています。

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