バイオ由来製品のLCA算定・開発戦略

コンサルティング会社様

目次

概要

現在研究開発段階のバイオ由来製品について、LCA算定を実施するだけでなく、環境負荷削減に向けた開発の戦略シナリオや、社会全体での環境負荷削減効果を評価しました。

開発段階の製品のため、ラボベースのデータや海外の文献をもとにインベントリを作成し、バイオ由来製品で問題となりがちな「直接土地利用変化」「関節土地利用変化」の考慮や、帰結的LCAを実施しました。

製品の開発戦略を含めて、普及段階における削減効果も検証しています。

バイオ由来製品の重要性

バイオプラスチックの導入割合

地球規模のLCAを実施して地球の入出力を捉えるならば、ほとんどの問題は化石燃料の採掘をなくすことで解決します。

もちろん、化石燃料は地球が長い年月をかけて蓄えたエネルギー源であるため、かなり便利な物質です。そのため、機能的に代替不可能なものも多く、代替が可能だとしても、代替した場合のほうが環境負荷が多くなってしまうことも少なくありません。

そこで、これらの化石燃料を代替する技術開発と、それによる環境負荷の定量が求められています。

化石燃料の主な用途は、ガソリンといったエネルギーと、プラスチックといった製品です。プラスチックは、軽く成型がしやすいため、私たちの身の回りの様々なところで利用されています。

本事例では、開発段階におけるバイオ由来の製品についての環境負荷の定量を実施し、国内のGHG削減にどの程度貢献するか、また更なる削減を可能とするポイントがどこにあるかを明らかにする評価を実施しました。

バイオ由来製品を対象としたLCAの特徴

カーボンニュートラル

カーボンニュートラル概念図

バイオ製品の最も基本的な特徴は、C源が化石燃料とは異なるという部分です。

バイオ由来製品の場合、製造段階で吸着したC源については、以下のどちらかで計算を進めることがほとんどです。

  • 吸着時にマイナス計上をし、放出時にプラス計上をする
  • 吸着時にも放出時にも計上しない

ただし、ライフサイクルを通すと製造過程や使用段階で炭素の出入りが起きる場合もあるため、特に計算には注意をする必要があります。

土地利用変化

バイオ由来製品の特長の2つ目は、土地を耕したりすることによる環境影響の計算を含む場合があるということです。LCAでは、「土地利用変化」という概念で語られます。

土地利用変化は計算に含めない場合も多いですが、場合によってはバイオ由来製品の負荷に小さくない影響を与えるため、算出をしておくほうが議論が進みやすい傾向にあります。

土地利用には「直接土地利用変化」と「間接土地利用変化」の2つが規定されていますが、今回の算定では2つそれぞれの計算を実施し、環境負荷の幅を計算しました。

削減貢献量とConsequential LCA

Market information in life cycle assessment, Weidema B P, 2003

本事例では、バイオ由来製品が市場で広まった際にGHG排出量がどの程度削減されるかの算定も実施しました。

削減貢献量についての細かい話はここではしませんが、重要なことは社会全体に与える影響を評価しなければならないことです。

LCAでは通常「活動量 × 原単位」によって環境負荷を計算します。また、このときの「原単位」は、活動量が何であっても変わりません。例を挙げると、時速20㎞で走る人がいたとき、1時間走ると20㎞の距離を進み、2時間走れば40㎞の距離を進みます。この時の「20km/h」が、原単位に相当します。

このようなLCA手法を、AttributinalなLCAといいますが、それと並列する考え方として、ConsequentialなLCAが存在します。

ConsequentialなLCAのポイントは、「差分」で物事をとらえることにあります。

ここについても正しい説明は省きますが、イメージとしては、「1時間で20㎞を走れるからと言って、100時間で2000㎞を走れるとは限らない」を計算に落とし込む手法です。実際には体力が消耗するでしょうし、睡眠もとらないと難しいでしょう。

バイオ由来かつ開発途中の製品の場合、例えば年間の生産量を20万トンと見込んだとき、その20万トン分の生産に耐えられる原材料の調達が今の計算のまま可能か?ということを考慮する必要があります。

本事例では、バイオ原料の密度や現在の利用状況のデータによるConsequentialなLCAも実施することで、将来拡大したときにおいても実現できる環境負荷の算定を実施しました。

開発段階でのLCA活用

過去データによらないLCA

一般的にLCAは、過去の実データを基に環境影響を算出します。

しかし、バイオ由来製品は開発段階であることも多く、一次データの取得が困難なこともあります。

また、原単位として用いる二次データについても、バイオ由来を想定していないことも多いため、実プロセスに沿わせるためのアダプテーションが必要になるケースがあります。

今回の事例についても、以下のようなプロセスを経てインベントリデータを作成しました。

  • ベースラインとなる化石燃料由来製品と、バイオ由来製品のライフサイクルフロー図の比較
  • ライフサイクルフロー図の異なる部分について、一次データの取得
  • 一次データが入手できないもしくは調達先が未決定の場合、原単位データベースを調査
  • 原単位のユニットプロセスを上流までさかのぼり、実プロセスに合致しているか確認
  • 実プロセスに合致していない部分については、海外の論文や化学式を基にインベントリ作成
  • 最終的な結果の計算
  • 結果について、既存の二次データや文献値と比較し結果を解釈

立地戦略への活用

開発段階においてLCAを実施することのメリットは、立地戦略の時点から環境影響を活用できることです。

特に、バイオ由来製品や電力を使うプロセスが多いような製品においては、立地により環境影響は大きく個おtなります。

本事例でも、日本、海外複数地域におけるシナリオを用意し、土地利用変化による差や、農作物の製造プロセスの効率の差、利用するエネルギーの差などを踏まえ、値の違いを確認することができました。

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