IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは?企業の対応も解説

松井大輔
松井大輔

株式会社ゼロック 代表取締役 監修

目次

IPCCのイメージ

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは、WMO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)が設立した気候変動に関する科学的データを分析・集約している組織です。

気候変動に関する各国の政策に非常に大きな影響力を持っています。

この記事ではIPCCとはどういった組織なのか、日本をはじめとした各国政府の政策にどのような影響を与えているのか、企業がそれらにどのように対応していくべきなのかを説明します。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは?

IPCCホームページ
出典:IPCCホームページ

そもそもIPCCとはどのような組織で何をしているのでしょうか。まずはIPCCについて簡単に説明します。

IPCCとはどんな組織なのか

1970年代になると、科学の進歩や産業の発展に伴って、人為的要因による気候変動が問題視されはじめました。

1979年に第一回世界気候会議が開催されると、国際的に気候変動に関する研究が活発になり、1985年にオーストリアのフィラハで地球温暖化に関する初めての世界会議(フィラハ会議)が開催されるにいたりましました。

このフィラハ会議を契機に、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的に、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって1988年に設立されたのがIPCC(気候変動に関する政府間パネル: Intergovernmental Panel on Climate Change)です。

IPCCは地球温暖化に関する科学的側面をテーマとした政府間の検討の場であり、これまでに6回発表された報告書は世界の国の政策や世論に大きな影響を与え、気候変動枠組み条約や京都議定書の議論においてもっとも信頼できる最新の 科学的・技術的知見を提供しているとみなされています。

2022年3月時点で195ヶ国と全世界の多くの国が参加しており、気候変動に関する政策に非常に大きな影響力を持っています。

IPCCは何をしている

IPCCには世界中の国から多くの科学者が参加し、関連研究や文献などを調査して報告書を作成しています。

IPCC組織図
出典:気象庁(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/)

IPCCには、3つの作業部会と1つのタスクフォースが設置されています。

第Ⅰ作業部会(WG1)は気候変動の科学的根拠、第Ⅱ作業部会(WG2)気候変動が社会や自然環境に与える影響、第Ⅲ作業部会(WG3)は気候変動に対する対策をそれぞれ調査しています。タスクフォースでは国別の温室効果ガスの排出状況やその測定・評価方法の調査を行っています。

簡単に言えば、世界中の気候変動に関する研究のデータを取りまとめて政策立案の指針となる報告書を作成するのがIPCCの主な役割です。

IPCCの評価報告書について

IPCCの活動で最も重要と言えるものは評価報告書の作成です。1988年の設立以来、気候変動に関する基礎研究から最新の情報までをまとめた評価報告書を作成しており、2021年から2023年にかけて公開された第6次評価報告書(AR6)が最新のIPCC評価報告書です。

IPCC評価報告書は3つの作業部会がそれぞれ取りまとめるものと、それらを総括する「統合評価報告書」で構成されています。なかでも統合評価報告書は、政策者向けの要約を含み、気候変動対策の指針として扱われます。

IPCC参加国はIPCC報告書を基に気候変動に対する政策を立案します。また、IPCCの報告書や提供するデータは「京都議定書」や「パリ協定」といった国際的な取り組みの根拠にもなります。

このようにIPCC評価報告書は世界の気候変動対策に関する政策に大きな影響力を持っています。

IPCC評価報告書が世界に与える影響

気候変動枠組条約締約国会議(COP)

IPCC評価報告書は世界中の国々で気候変動対策に関する政策の指針として扱われます。このためIPCC評価報告書は世界的に大きな影響力を持っています。

IPCC評価報告書に基づいた国際的な取り組み

IPCC設立の2年後、1990年には最初のIPCC評価報告書が公開されました。この報告書では「人為起源の温室効果ガスがこのまま大気中に排出され続ければ、生態系や人類に重大な影響をおよぼす気候変化が生じるおそれがある」という警告がなされました。

IPCC評価報告書の発した警告は世界的に大きな注目を集め、環境問題に関する社会的な意識を生み出しました。

1992年には国連総会で「気候変動に関する国際連合枠組条約」が採択され、これが現在の気候変動(温暖化)に対する国際的な取り組みの基礎となっています。気候変動に関する国際連合枠組条約には200近い国が参加し、有名な「京都議定書」や「パリ条約」も締約国会議で採択されたものです。

こうして世界中の国で温室効果ガス(CO2)の排出量・吸収量の目標値が定められ、人為によりに排出される温室効果ガスの排出量削減や、温室効果ガスを吸収・分解する生態系等の保護といった取り組みがはじまったのです。

IPCC評価報告書に基づいた日本政府の取り組み

日本は世界の温室効果ガス(CO2)排出量で5位であり、全体の3.15%を排出しています。このため日本の温室効果ガス排出量を抑えることができれば世界的にも大きな成果といえます。

京都議定書で定められた温暖化対策の目標を達成するため、1997年には内閣府に地球温暖化対策推進本部が設置され、1998年には「地球温暖化対策の推進に関する法律」が制定され、日本政府でも本格的な温暖化対策が始まりました。

2021年に決定した最新の地球温暖化対策計画では、2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すことになっています。そしてその大部分がエネルギー起源のCO2とフロン類です。

この目標に向かい、日本政府は温室効果ガスを排出しない太陽光や風力をはじめとしたクリーンエネルギー発電の推進や、省エネルギー技術の開発・普及の支援、温室効果ガスを吸収する森林資源の保護、代替フロン素材へ切り替えといった政策を多方面で展開しています。

また、冷暖房にかかる電力を削減するためのクールビズやウォームビズといった新しいスタイルの提案や環境問題に関する意識の醸成にも取り組んでいます。

IPCC評価報告書から考えられる企業の取り組み

企業の取り組み

このように、各国の政策に大きな影響力を持つIPCC評価報告書に対し、企業はどのように向き合えばよいのかを考えてみましょう。

拡大する企業の責務

近年では平均気温の上昇や、これまでにない豪雨などによる水害など、気候変動が実際に我々の生活に影響するレベルに達してきています。このような時代、温室効果ガス削減などの温暖化対策に考慮した事業経営はすでに当たり前のといっていいでしょう。

省エネやリサイクル等の一般的なエコ活動だけでなく、自社の事業と連携した環境保護に関わる事業の展開や、資金面を含む環境保護活動への支援といったより積極的な活動が求められる様になってきています。

特に新たに発生した環境問題や最新の対策にいち早く取り組んだ企業は業界のなかで環境保護意識が高い優れた企業としてのイメージとポジションを獲得していくことになります。

最新のIPCC評価評価報告書である第6次評価報告書(AR6)は2023年3月に統合評価報告書が公表されたばかりですが、新たな中長期的な目標が示され最新の気候変動研究がまとめられている重要なものですので、いち早く内容を確認し企業の事業計画に盛り込むことが求められます。

企業の担当者が確認すべきポイント

それでは、最新のIPCC第6次評価報告書(AR6)の内容でどのような事項が企業の活動に影響するのでしょうか。

まず、温暖化を1.5℃以内に抑えるという目標を達成するために、排出する温室効果ガスを2030年には43%削減、そして2035年には60%削減(いずれも2019年比)が必要であることが示されました。これにより日本政府も今後2035年に向けた温室効果ガス削減目標を策定し公表するはずです。

これまで政府の削減目標に合わせて2030年までの削減目標を掲げていた企業は、さらに2035年までを含めた新たな目標を検討しはじめる必要があります。

また、需要側(消費者)が行う排出量削減対策がこれまで以上に重要な事項として取り上げられていることもポイントです。第Ⅲ作業部会報告書では、新たに需要対策に関する章が設けられ、消費者の変化によって温室効果ガス排出量を大幅に削減できる可能性が示されました。

つまり、個々人がよりエコな商品やサービスを選択したり環境に優しい生活スタイルに移行することが重要であるということです。これまでも環境に優しいことをうたう商品やサービスはありましたが、今後はそうしたポイントがより重視されていくことが考えられます。

この他にも各企業ごとの事業に内容ごとに影響を受ける項目が様々に考えられます。

さらに詳しいIPCC第6次評価報告書の内容については以下の記事で解説していますので合わせて参考にしてください。

まとめ

IPCCが公表するIPCC評価報告書や提供するデータは気候変動対策に関する非常に重要な指針となるものです。環境対策が企業の責任と考えられる時代、その内容を把握し、企業の目標として取り組んでいく必要があります。

しかし、気候変動は現在進行系で起こっており、環境問題に関する研究も日進月歩です。そのため、定期的に更新されるIPCC評価報告書や日本政府の政策などに対応していくには専門的な知識も不可欠となってきます。

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