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カイコ由来タンパク質のLCA算定 – バイオテック企業が目指す世界の健康と食料課題の解決

近年、フード領域でも「環境に良いはず」という感覚的な主張ではなく、投資家・消費者・取引先に説明可能な定量データが求められる局面が増えています。

Morus株式会社様は、日本では昔からなじみのあるカイコ由来のタンパク質素材を展開する中で、環境価値を根拠ある形で示し、同時に製造プロセス改善の意思決定にもつなげるため、自社製品のLCAに着手されました。

本プロジェクトでは、機能単位を「タンパク質1kgの提供」とし、一般的にある牛・豚・鶏などの肉類だけでなく、ドライホエイやソイ/PEAプロテイン、クロレラといった複数の比較対象と並べてカイコパウダーのGHG排出量を評価しました。

さらに、カイコパウダーの製造方法や歩留まりなど複数のシナリオごとに分析することで、ホットスポットと将来の改善可能性を把握しました。最終的には、投資家・取引先への外部開示を想定した影響結果とISO14044を参照した報告書を作成しました。

お客様Morus株式会社
ご担当者様代表取締役 佐藤 亮氏
食品科学責任者 藤井 あゆ氏
ご支援期間4カ月
ゼロックのご支援範囲データ収集支援
LCA算定・分析
LCA報告書の作成
評価対象製品カイコパウダー(3種類製法ごと)
比較対象製品牛枝肉
豚枝肉
鶏枝肉
ドライホエイ
ソイプロテイン
PEAプロテイン
クロレラパウダー

研究起点のフードテックが「市場」と接続するために——Morusが目指す素材開発

まずは、Morus様の事業について教えてください

Morusは、カイコ(蚕)を起点としたバイオ原料の研究・開発を行う、日本発のバイオテック企業です。5000年以上の歴史をもつ養蚕という伝統産業と、大学をはじめとする最先端技術を融合させることで、新たな素材産業を創出することを目指しています。

信州大学との共同研究を背景に創業し、現在は食品・サプリメント・ヘルスケア領域を中心に、カイコ由来の高機能バイオ原料を国内外へ展開しています。

私たちが掲げるビジョンは、単なる「昆虫食」や代替たんぱくの提供だけではなく、科学的根拠に基づいた栄養価と機能性を通じて、健康課題や環境課題の解決に貢献することです。日本のなかで養蚕業は衰退しつつありますが、これを付加価値の高い素材産業に変換し、持続可能な形で社会に実装することを目指しています。

今回LCAの対象としたカイコパウダーはどのようなものですか?

カイコの幼虫を原料として粉末化した食品・機能性素材が、カイコパウダー「MorSilk® Powder」です。この製品には、必須アミノ酸を含むアミノ酸バランスの優れたたんぱく質をはじめ、シルクタンパクや、桑葉由来のDNJなど、健康維持に寄与するとされる成分も含まれています。

意外と言われることが多いのですが、カイコは桑の葉のみを食べる単食性という特性をもっており、このパウダーも抹茶のような自然な風味と色合いになります。そのため、抵抗感のある方が少なく、食品や飲料への応用もしやすいことがわかっており、弊社原料を使った、サプリメントやパウダーは国内外で徐々に愛用者が増えてきている状況です。

「環境に良いはず」を、投資家・取引先に説明できる形へ——LCAへの着手と企業戦略への活用

代表取締役 佐藤 亮氏

今回LCAに取り組んだ背景や経緯を教えてください

私たちのようなバイオテック企業にとって、環境価値の訴求は創業当時から問題意識にあったため、LCA自体はずっとやりたいと考えていました。特に、海外マーケットを主軸としているため、投資家や消費者からの目も日本より強いと感じています。

一方で、事業が立ち上がるまでの期間は、LCAに十分なリソースを割けなかったのが実情でした。今回、実際にデータがたまってきたことと、NEDOのプログラムである「DTSU(ディープテック・スタートアップ支援事業)」に採択されたことを機に、投資家や取引先とのコミュニケーションの材料にも活用できると捉え、着手が前進しました。

実際にLCAを始めるときに重視した点はありますか?

まずは何よりも、外部に見せられる妥当な数値を作るということです。

特に私たちの製品は、肉から他の昆虫食まで、比較される製品がたくさんあります。その中で、自社製品の優位性を示すことは大変だと思っていたので、国際規格などにも詳しく、海外でも通用するLCAをしてくれる企業にお願いしたいと思っていました。

私もLCAについては調べることはありましたが、流行りなのか、本当にできるのか不安な企業が多い印象をうけました。その中で、ゼロックさんは大学や国のLCA事業なども経験されているため、事前の打ち合わせから信頼して進めることができました。

今回のプロジェクトでどのような成果がありましたか?

実際に自社製品が優位なことは想定していましたが、どのくらい優位かが見えたのは面白かったです。また、どの製造方法であれば優位に立てるかや、この製品相手だと負けてしまうということもわかりました。

さらに、LCAは「外に示す」だけでなく、製造プロセスの投資判断にも直結します。私たちは、生産プラント建設も見据えていたので、どの工程が支配的かを把握し、どれくらいの改善ポテンシャルがあるかも把握したいという思いがありました。ここを分析・判断できることはとてもありがたかったです。

想定外のメリットとして、自社内にLCAの知見がたまりました。プロジェクトでは、データ収集から算定まで、都度説明をしていただきながら進めていただいたことで、実務を担う担当者のLCAの理解が大きく進みました。今後結果の更新や値の活用も簡単になったと感じています。

「1分で説明できるインパクト評価」を企業成長につなげる

今回のLCA結果の使い方を教えてください

最近は、上場企業以外でもインパクトレポートを公開する企業が増えてきています。私たちも、LCAを組み込んだ情報開示を積極的に進めていきたいと思っています。

特にスタートアップでは、いかに短い時間で自社の説明ができるかが重要です。今回のLCAデータは、投資家や営業相手に「1分で説明できる形」へ翻訳していきたいですね。

また、今回は、仮定を置いて計算する部分もいくつかありました。生産設備が拡充するタイミングで、より正確なデータを使った再算定もしてみたいなと思います。そのほうが、結果もよくなる見込みですし、より外部に対してアピールになると思っています。

最後に、今後のMorusが目指すビジョンを教えてください

創業から現在までの期間で、研究開発フェーズから社会実装フェーズに進むことができました。今後中長期では、解くべき課題を環境や健康だけではなく、食の安定供給(食料・栄養の安全保障)まで広げて捉えています。

その上で、まずは健康リテラシーの高い層に受け入れられる品質で市場を作りながら、将来的にはコストを下げ、より多くの人が手に取れる価格帯へ広げていく──「本当に足りていない人(栄養不足の層)」に届けるのが、10年スパンの大きな目標です。

左から、Morus佐藤氏、ゼロック松井
グリーンウォッシュ連絡窓口
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