LCA(ライフサイクルアセスメント)の機能単位について簡単に解説
公開日 2025.10.27 最終更新日 2025.10.27

松井 大輔
(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程
製品の環境負荷を図るために重要なLCA(ライフサイクルアセスメント)の算定には、機能単位が必要です。機能単位とは、評価する製品の機能や性能を製品の機能を明確にして、一定の数値単位で表すことです。
本記事ではLCAにおける機能単位について、定義や必要性をわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
LCAの機能単位とは

LCAの実施者は、製品の機能単位を明確に定義し、計量可能なものとする必要があります。ここではLCAの機能単位の定義や、重要性について解説していきます。
LCAとは
「LCA(ライフサイクルアセスメント)」のライフサイクルとは、原料の調達から製造、流通、使用、廃棄、リサイクルまでを含めた、製品の一生を指します。企業の事業活動における環境負荷を定量化し、可視化する手法なため、ライフサイクル全体の各段階における環境負荷低減に向けた対策を取ることが可能です。
LCA(ライフサイクルアセスメント)については、こちらに詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?わかりやすい徹底解説
機能単位の定義
機能単位に関して、国際規格であるISO14040では以下のように規定しています。
- LCA の調査範囲を設定する際には、製品の機能(性能特性)の仕様を明確にする必要がある
- 機能単位は、この特定機能を定量化するもので、目的や調査範囲に整合しなくてはならない
- 機能単位を導入する主な目的の一つは、入力や出力のデータを正規化(数学的な意味で)する基準を提供するためであり、そのため機能単位は明確に定義され、定量可能である必要がある
参照:再生可能エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関する LCA ガイドライン
ISO14040
ISOとは、スイスにある「 International Organization for Standardization(国際標準化機構)」の略称で、主な役割は国際的に通用するISO規格を制定することです。国際的な取引をスムーズにするために、世界中で同じ品質、同じレベルの製品やサービスを提供するための国際規格、ISO規格を定めています。
ISO14040とは、製品やサービスにおける環境への影響を、ライフサイクル全体で評価するためのLCA手法の「原則と枠組み」を規定しています。LCA の目標と範囲の定義や、ライフサイクル インベントリ分析 (LCI) フェーズ、ライフサイクル影響評価((LCIA) フェーズ、ライフサイクル解釈フェーズなどの使用条件などが含まれています。
機能単位の重要性
機能単位は、製品システムが提供する機能を定量的に表すために重要な役割を果たします。機能単位はLCA算定者が自由に設定することが可能であるため、LCA算定を実施する目的に照らして機能単位の設定が適切でないと、LCA算定実施の意味さえ薄れてしまします。
例えば、飲料メーカーがペットボトル飲料水A(500ml/本)・B(600ml/本)におけるLCA算定結果の比較をしたいと考えた場合、機能単位を「1本」に設定してしまうと、容量自体が異なるため、比較が目的であれば適切とは言えません。ここで機能単位を「1ml」に設定すると、容量あたりのLCA算定結果で比較ができるため、ペットボトル1本あたりの容量を大きくすることでどれくらい環境影響に変化があるのか等が検討できるようになります。
機能単位の具体例

先述の通り、機能単位は、LCA算定者がその目的に応じて自由に設定します。販売単位や物理的単位はもちろん、使用期間、品質値等でも設定可能です。
ここでは機能単位の具体例をいくつか挙げましょう。繰り返しになりますが、評価対象製品に対する機能単位は下記例に限りません。あくまでLCA算定の目的に照らして、機能単位が適切であるかをよく検討することが重要です。
| 評価対象製品 | 機能単位例 |
| ・オフィスビル | 1棟・60年使用あたり |
| ・ガソリン自動車 ・EV自動車 | 10万㎞走行あたり |
| ・腕時計 | 製品1本あたり |
| ・セルロースファイバー断熱材 ・ロックウール断熱材 | 1m2・k/w(熱抵抗値)あたり |
| ・飲料用ペットボトル容器 ・飲料用ペーパー容器 | 1mlあたり |
適切なLCA算定・機能単位設定は専門家に依頼を
LCAを行うためには製品の機能単位を設定する必要があり、それにはISO規格についての専門的な知識が不可欠です。LCAは環境影響を定量的に評価できる優れた手法であるからこそ、自社にとって有益となるようなしっかりとしたLCA算定を行うことが求められます。
自社で内製化が難しい場合は、LCAの専門知識豊かな外部のコンサルタントに依頼し、適切な機能単位を設定するのも有効な手立てです。
まとめ
LCA手法に不可欠な製品の機能単位について、わかりやすく解説しました。LCAは企業の環境評価を包括的に把握し、長期的な環境経営戦略の策定に非常に有効です。今後、国内でも多くの企業がLCAに取り組むことが予想されます。
株式会社ゼロックは、専門的な知見を活かし、LCAや機能単位について支援を行うことが可能です。そのほかにもSDGs/脱炭素経営/グリーンウォッシュなど環境に関するさまざまなご相談を承ります。
ぜひ、お気軽に株式会社ゼロックへお問い合わせください。








