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ISSBがIFRS S2を限定的に改訂:Scope3(カテゴリ15:投融資)の開示範囲を明確化

公開日 2026.02.06 最終更新日 2026.02.13

松井 大輔

(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応

要約

  • International Sustainability Standards Board (ISSB)はIFRS S2のGHG開示についてターゲットを絞った修正を公表し、解釈のブレが出やすい点を明確化した。
  • 中核は、Scope3 カテゴリ15(投融資)について、測定・開示を「financed emissions」に限定できることの明確化である。
  • 日本ではサステナビリティ基準委員会(SSBJ)がISSB修正に対応する公開草案を公表し、2026年1月28日まで意見募集を行っている。

何が変わったのか

今回の修正は、IFRS S2のGHG排出開示のうち、実務負荷が大きい論点に絞って要件を明確化・緩和したものである。最大のポイントは、Scope3 カテゴリ15について、開示対象を「企業の投融資に帰属する排出(financed emissions)」へ限定できることを明確にした点である。これにより、デリバティブ等を含むより広い“金融活動全般”の排出までを無理に取り込み、算定の一貫性が崩れる状況を抑える狙いが読み取れる。

併せて、financed emissionsの内訳を産業別等に分解して示す際、従来想定されていた特定の分類体系(GICS)に限らず、有用な情報を提供できる代替分類体系の利用を認める方向が示されている。金融機関にとっては、開示の比較可能性と社内データ整備の現実性のバランスを取りやすくなる変更である。

なぜ「限定的な緩和」なのか

ISSBのメッセージは、要件を大きく後退させることではなく、厳格性を保ちながら「実行可能なルール」に寄せることである。カテゴリ15はデータ源が多岐にわたり、算定境界が曖昧になりやすい領域であるため、ルールが曖昧なまま適用すると、企業間比較が効かない一方で作業だけが膨張しやすい。今回の修正は、そのボトルネックを“定義”と“境界”の明確化で解消する位置づけである。

また、管轄(jurisdiction)によってGHG算定手法や係数(例:GWP)に法令・制度上の制約がある場合に関する救済(relief)の明確化も含まれる。グローバル基準と各国制度の“衝突”を手当てし、形式的な不適合を避ける意図があると整理できる。

動向を踏まえた対応ポイント

日本の開示実務に直結するのは、SSBJがISSB修正を踏まえた公開草案を出している点である。コメント期限が2026年1月28日と明記されており、国内基準の整備が具体的なスケジュールで進んでいる状況である。

実務としては、金融機関・投資関連事業を抱える企業は、まずカテゴリ15の対象を「financed emissions」前提で再整理し、データ収集単位(商品・ポートフォリオ・投資先粒度)と算定ロジックを統一するのが近道である。非金融の事業会社であっても、投融資・年金・CVCなどを持つ場合はカテゴリ15が“影響の大きい例外領域”になり得るため、Scope3全体の中でどこまで取り扱うかを早めに設計しておくべきである。

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参考文献

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