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ニュース解説

EU環境主張規制、2026年9月適用へ

公開日 2026.07.10 最終更新日 2026.07.31

松井 大輔

(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応

要約

  • 2026年9月27日からEUで環境主張規制が適用開始へ
  • 違反時は各加盟国法に基づく差止め・制裁金等の対象に
  • 日本企業も欧州向け広告・包装・EC表示の見直しが必要

概要:「環境にやさしい」という表示が、法務・環境部門の確認対象へ

EUの改正指令「Directive (EU) 2024/825」により、消費者向けの環境主張に関するルールが強化されます。各加盟国での国内法化を経て、2026年9月27日から新たな規定の適用が始まります。

今回の改正は、単に「環境にやさしい」という表現を使いにくくするものではありません。EUの不公正商慣行指令(UCPD)と消費者権利指令(CRD)を改正し、消費者向けの広告、商品パッケージ、ECサイト、店頭表示などにおける環境主張を、より厳しく管理するものです。

特に注意が必要なのは、「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」などの一般的な環境主張です。こうした表現は、同じパッケージやWebサイト上で、主張の内容を明確かつ目立つ形で具体化するか、EUエコラベルなどで認められる優れた環境性能を示せない場合、禁止対象となる可能性があります。詳細な算定資料や認証情報への導線としてQRコード等を使うことは考えられますが、主張の内容そのものをQRコード先だけに委ねる表現は避けるべきです。

また、製品のバリューチェーン外のGHGオフセットに依拠して、製品を「カーボンニュートラル」「CO2ニュートラル」などと訴求する行為も、禁止類型として明記されています。

日本企業にとっても、欧州向け製品のパッケージ、現地ECサイト、販売代理店の販促資料で使われる環境表現を見直す必要があります。

確認すべき表示なぜ注意が必要かよくある表現例日本企業が確認すべきこと
あいまいな環境表現何が環境によいのか分からない表現は、問題になる可能性があります。「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」何が、どの範囲で環境によいのかを、同じ媒体上で説明できるか
独自の環境マーク根拠や認定の仕組みが分からないマークは、消費者に誤解を与える可能性があります。自社独自の「エコ認定」マーク誰が、どの基準で認定しているのかを説明できるか
カーボンニュートラルという表示オフセットだけで、製品自体の排出がゼロになったように見せる表示は、問題になる可能性があります。「カーボンニュートラル製品」「CO2ニュートラル」実際に排出を減らしたのか、クレジットで相殺しているのかを分けて説明できるか
一部だけを強調する表示一部の部材や工程だけの特徴を、製品全体の特徴のように見せると問題になる可能性があります。「リサイクル材使用」「低炭素素材を使用」どの部材に、どのくらい使っているのかを明確に示しているか
将来の目標を使った表示実行計画がない将来目標は、実現性を疑われる可能性があります。「2030年までに環境負荷ゼロへ」目標、期限、具体的な取組、進捗確認の方法があるか

背景:環境表示は、広告表現から証跡管理の領域へ

欧州では、環境配慮をうたう商品やサービスが増える一方で、消費者が本当に比較できる情報になっていないことが課題とされてきました。今回の改正指令、いわゆるECGT指令は、根拠が不十分な環境主張や、実際よりも環境性能が高いように見せる表示を、消費者保護の観点から規制するものです。

規制の対象は、原則としてB2C、つまり消費者向けの商業コミュニケーションです。企業間取引だけで使われる資料や、投資家向けのサステナビリティ報告書そのものが直ちに対象になるわけではありません。ただし、そこで使った環境データや表現を、ECサイト、商品パッケージ、広告、店頭POPなどの消費者向け媒体に転用する場合には、表示内容として確認が必要になります。

違反した場合の執行は、各加盟国の消費者保護当局や裁判所が、国内法に基づいて行います。事案によっては、表示の差止め、広告・パッケージの修正、行政処分、制裁金、消費者救済などの対象となる可能性があります。複数加盟国にまたがる広域的な消費者法違反では、売上高を基準とした制裁金が問題となる場合もあります。

なお、Green Claims Directive、いわゆるグリーンクレーム指令は、環境主張の立証や第三者検証をより具体化する別提案です。本稿で取り上げているDirective (EU) 2024/825とは分けて理解する必要があります。

したがって、欧州へ製品を展開する日本企業は、自社サイトだけでなく、現地販売会社や代理店が使う環境表現まで含めて確認することが重要です。環境主張をする前に、どの媒体で、誰に向けて、どの根拠に基づいて表示しているのかを整理しておく必要があります。

コンサルタントによる解説

日本企業への影響は、欧州子会社や現地販売会社だけに限られません。日本本社が作成したサステナビリティ報告書、統合報告書、LCA・CFP算定結果、Scope3算定結果の表現が、欧州向けの広告、商品ページ、パッケージ、展示会資料、店頭POPなどに転用される場合には、消費者向けの環境主張として確認が必要になります。

まず行うべきことは、欧州向けに使われている環境表現の棚卸しです。「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」「低炭素」「CO2削減」「カーボンニュートラル」「リサイクル材使用」などの表現について、どの製品に、どの媒体で、誰向けに使われているのかを確認する必要があります。

そのうえで、主張ごとに根拠資料を紐づける必要があります。LCAやCFPは、環境主張を裏付ける有力な根拠になり得ます。ただし、算定結果があるだけでは十分ではありません。機能単位、システム境界、比較対象、配分方法、使用した排出係数、データ品質を説明できる状態にしておくことが重要です。ISO 14040、ISO 14044の考え方に沿って、主張と算定範囲の対応関係を整理しておけば、広告審査や取引先からの照会にも対応しやすくなります。

日本で同一内容の法令導入時期が公表されているわけではありませんが、環境省も2026年3月に環境表示ガイドラインを改定しており、国内でも根拠を示せる環境表現への関心は高まっています。今後は、「環境によい」と広く訴求するのではなく、「どの範囲で、何が、どれだけ改善したのか」を説明できる表示へ移行することが求められていく可能性があります。

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参考文献

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