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GHGプロトコル、脱炭素努力を正当に評価する枠組み「AMI」ホワイトペーパーを公開

公開日 2026.04.24 最終更新日 2026.04.24

松井 大輔

(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応

要約

  • GHG ProtocolがAMIのホワイトペーパーを公表
  • 「実排出の削減」と「クレジット・証書による貢献」を分けて示す方向へ
  • 60日間のパブリックコメントを開始、2028年に最終規格を公表

概要

GHGプロトコルは、2026年3月31日、「アクションおよび市場メカニズム(AMI:Actions and Market Instruments)」フェーズ1の結果をまとめたホワイトペーパーを公開し、60日間の情報提供要請(RFI:Request for Information)を開始しました。 これは、従来の「Scope 1~3」の物理的排出量インベントリ(算定範囲)には収まりきらない企業の気候変動対策の実質的な影響を、どのように算定し報告していくかを検討する重要な第一歩です。パブリックコメントの受付は2026年5月31日までで、草案は2027年第3四半期に、最終規格は2028年に策定される予定です。

なぜ今新たな枠組みが必要なのか

近年、企業の脱炭素の取り組みは、Scope1〜3に基づく直接的な排出削減にとどまらず、カーボンクレジットの活用や再エネ証書(再生可能エネルギー電子証書)の調達、SAF(持続可能な航空燃料)の導入、さらにはサプライチェーン内外での削減投資など、多様な手段へと広がっています。

一方で、こうした取り組みの多くは、従来の「Scope1〜3」の物理的排出量インベントリの枠組みでは十分に表現しきれないという課題が指摘されてきました。

例えば、次のようなケースです。

・カーボンクレジットを購入したが、これは「自社の排出削減」と言えるのか

・サプライヤーの省エネ投資を支援したが、その効果を自社のScope3削減として

 どこまで説明できるのか

・SAFや再エネ証書を使った場合、実際の排出量と環境価値の活用をどう切り分けて示すべきか

上記のケースでは、「実排出の削減」と「クレジット・証書による貢献」が区別されておらず、その結果、企業側は自社の気候変動アクションの意義を適切に説明しづらく、投資家や顧客にとっても、各社の取り組みの質や信頼性を比較しにくい状況が生じていました。こうした曖昧さは、グリーンウォッシュへの懸念にもつながっています。

このような問題意識を背景に、GHG Protocolは、従来の排出量インベントリを補完する形で、企業の気候変動アクションが現実世界にもたらす影響をどのように整理・報告すべきかについて、新たな枠組みの検討を開始しました。

AMIで提案されている新たな報告構造

今回のホワイトペーパーでは、従来のGHG排出量インベントリを土台としながら、それに加えて実際の排出量と企業のアクションによる影響を分けて示しています。

具体的には、従来の「物理的な排出量インベントリ」に加えて、3つの新たなステートメントを追加する「マルチステートメント型」の開示構造が検討されています。

① Physical GHG inventory・企業の事業活動およびバリューチェーンに直接紐づく温室効果ガス排出量を報告
・現在のGHG Protocol(Scope1〜3)に基づく基本的な排出量算定の枠組み
② Market-based GHG inventory・契約や調達条件に基づいて排出量を捉える考え方 ・既にScope2で用いられている「マーケットベース手法」を拡張
③ GHG impact statement・企業の活動による広範な影響を定量化
④ Non-GHG indicators・GHG排出量では表現できない指標を整理するための枠組み

本文では、企業への具体的な影響を直接整理したものではありませんが、現行のGHG報告の課題と、それを踏まえた新たな開示の方向性を示しており、今後の制度変更や実務への影響を読み解くうえで重要な位置づけにあります。

今回の情報募集に対するパブリックコメントの受付期間は、2026年5月31日までの60日間です。意見提出はオンライン調査票を通じて行う形式となっており、RFIの特設ページには、回答者向けの参考情報も掲載されています。

GHG Protocolは、コメント期間終了後、寄せられた意見の概要を公表し、主な論点や見直しが想定される項目を整理する予定です。その後、2027年第3四半期にドラフト基準案の公開協議が予定されており、最終規格の公表は2028年を見込んでいます。

コンサルタントによる解説

今回のAMIは、すぐに新たな義務を課すものではありません。ただし、実務上はかなり重要なシグナルといえます。なぜなら、今後の企業の脱炭素開示は、「どれだけ排出したか」だけでなく、「どのような手段で、どのような影響を生み出したのか」まで分けて示す方向へ進む可能性があるためです。

特に、カーボンクレジット、再エネ証書、SAF、サプライヤー支援などを活用している企業では、実際の排出削減と、市場メカニズムを通じた貢献を混同せずに整理することが、今後の説明責任の中核になっていくと考えられます。

現時点ではまだ検討段階にありますが、今回のホワイトペーパーは、今後の開示実務において、排出量そのものだけでなく、削減の実態や貢献の中身まで問われる時代が近づいていることを示しているといえます。

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参考文献

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