
松井 大輔
(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応
目次
要点
- EUエコラベルの利用が拡大、ライセンス保有者の半分以上が中小企業(SMEs)
- EUエコラベルが付与された製品数・ライセンス数はいずれも増加
- 件数の増加に伴い、対象製品の見直しも進む
EUエコラベルとは
EUエコラベルは、EUが運営する公式の任意型環境ラベルです。1992年に始まった制度で、製品やサービスについて、原材料の調達、製造、使用、廃棄までのライフサイクル全体で環境負荷が比較的小さいと認められたものに付与されます。欧州委員会は、消費者、流通、小売、企業、調達担当者が、より持続可能な選択をしやすくするためのラベルだと位置付けています。
EUエコラベルは、単なる自己宣言ではなく、製品群ごとに定められた基準を満たす必要があり、企業が環境配慮を市場で伝えるための仕組みとして使われています。欧州委員会によると、その基準は独立した検証を前提に設計されており、市場にある製品のうち概ね上位10〜20%の持続可能性水準を目安としています。
2026年、EUエコラベルはさらに拡大
欧州委員会が2026年4月15日に公表した最新情報によると、2026年3月時点でEUエコラベルが付与された製品は116,692件、ライセンス数は3,541件に達しました。また、その97%は欧州経済領域 (EEA) 域内に根ざしており、制度が欧州市場の中で着実に広がっていることが示されています。
2025年9月からの半年間で見ると、製品数は7%増、ライセンス数は5%増でした。欧州委員会は、こうした伸びを、企業や消費者、小売事業者の間で、環境配慮型製品への関心が高まり続けていることの表れと説明しています。
サービス・消費財分野で広がるEUエコラベル
EUエコラベルは、洗剤、塗料、紙製品、繊維製品、家具、観光宿泊サービスなど、さまざまな製品・サービス群が対象になっています。公式カタログも公開されており、すでに多くの製品やサービスが市場に流通しています。
2026年3月時点の内訳を見ると、ライセンス数ベースでは観光宿泊が27%で最多、続いて硬質表面用洗浄剤13%、ティッシュ製品8%、屋内清掃サービス8%となっています。
一方、製品数ベースでは塗料・ワニスが33%で最大で、ティッシュ製品18%、繊維製品10%、家具9%が続きます。つまり、サービス分野と消費財分野の両方で制度が広がっている、という見方ができます。
中小企業にも広がる環境ラベル
注目したいのは、EUエコラベルが大企業だけの制度ではない点です。欧州委員会によれば、ライセンス保有者の約61%は中小企業(SMEs)です。
環境ラベルというと、負担が大きく一部企業しか対応できない印象を持たれがちですが、EUエコラベルは実際にはより広い企業層に浸透していることがわかります。
件数の増加だけでなく、基準の見直しも進んでいる
今回のニュースで重要なのは、単に件数が増えていることだけではありません。EUエコラベルは、対象製品群や評価基準の見直しも継続しています。
2025年には塗料・ワニスの基準が改定され、新たに水性エアロゾルスプレー塗料が追加されました。さらに、洗剤・洗浄製品は2026年末、観光宿泊サービスと屋内清掃サービスは2027年末の採択を見込んで見直しが進められています。
コンサルタントによる解説
今回のニュースの本質は、EUエコラベルの件数増加そのものではありません。より重要なのは、EUで「環境に良い」を示す基準が、任意ラベルであっても市場の共通言語になりつつあることです。
EUエコラベルは、ISO 14024 Type Iに準拠した多基準・第三者確認型の環境ラベルで、EUの公式サイトでも、グリーンウォッシュ対策や、今後のサステナビリティ表示・グリーンクレーム対応の文脈の中でその役割が示されています。
今後は日本企業にとっても、EU向けの販売や調達に関わる場面で、環境主張を「言ったもの勝ち」にするのではなく、ライフサイクルベースで第三者確認に耐える環境情報をどう整えるかがより重要になります。今回の動きは、環境配慮をPRではなく、市場で通用する説明責任へ変えていく流れの一つといえそうです。
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参考文献














