
松井 大輔
株式会社ゼロック 代表取締役 監修
目次
「EPD Hub」とは何かをご存じでしょうか。
「EPD Hub」とはアイルランドの「EPD Hub 社」が運営するEPD の検証機関のことです。EPDとは、環境負荷を把握するためのISO準拠の環境認証ラベルのことで、日本語で「環境製品宣言」と呼ばれます。
今回は国際的な環境認証ラベルである「EPD Hub」について概要からメリット、取得の流れまで解説していきます。「EPD Hub」について知りたい方は、ぜひご一読ください。
EPD Hubとは

EPD HubのEPDとはなんなのか、日本にある「SuMPO EPD」とは何が違うのかを解説していきます。
環境製品宣言「EPD」とは
EPD(Environment Product Declaration)は、1998年にスウェーデンで施行された環境製品宣言のことで、国際規格であるISO 14025に準拠するタイプ III 環境ラベルです。 環境ラベル IIIは環境負荷の良しあしを表すのではなく、環境情報を定量的に表示するものです。
EPDは製品やサービスにおける環境負荷を、LCA手法により第三者が検証し、透明性の高い比較可能なデータを標準化して文書化します。電子機器や食品、化学製品、建築材料など、幅広い産業分野で審査登録が可能です。
EPDについてはこちらの記事に詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
EPD(製品環境宣言)とは│SuMPO EPDについても解説
LCA(ライフサイクルアセスメント)手法とは
EPDにおいて行うLCA手法とは「ライフサイクルアセスメント」のことです。LCAの手法では、製品やサービスの素材や原材料の調達から、製造、流通、消費、廃棄に至るプロセス全体の環境負荷を評価することが可能です。定量的な評価を行えることが最大の特徴で、これにより、比較や最適化の検討を行うことができます。

出典:EPD(Environmental Product Declaration)とは(SuMPO EPD)
LCAについてはこちらの記事に詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?わかりやすい徹底解説
EPD Hubとはアイルランドの EPD プログラム運営機関
EPD Hubはアイルランドにある「EPD Hub社」が運営しています。EPD Hub は、 ISO 9001 認証を取得しており、高い品質管理基準を実現しています。情報に対する検証は利益相反のない独立した個人、または団体であることが求められますが、EPD Hub では検証者の完全な独立性を確保していることが特徴です。
参照:EPD Hub
国内環境ラベル「SuMPO EPD」との違い
日本には、EPDと同じくLCA手法に基づいた「SuMPO EPD」という環境ラベルがあります。製品やサービスの、全ライフサイクルを通じた環境への影響に対する情報を、定量的に開示することができます。製品分野によっては、海外認証制度の加点項目とすることが可能なため、グローバル企業にとって有効な環境ラベルです。
SuMPO EPDとは
SuMPO は、さまざまな製品・サービスを対象とする情報開示のフレームワークであり、製造拠点、仕向け先などに関わらず、世界中の事業者が加盟可能なEPDプログラムです。製品のライフサイクル全体の評価はもちろんですが、サプライチェーン上流のみの評価や情報開示を行うこともできます。
具体的に言うと、製品の素材サプライヤーから、最終製品セットメーカー、使用済み製品の回収事業者まで含めて、SuMPOのプログラムを活用し、透明性の高い情報開示を行うことが可能です。
SuMPO EPDとEPD Hubの違い
SuMPO EPDとEPD Hubの違いや特徴を下記の表にをまとめました。
名称 | どこの環境ラベルか | 対象製品・サービス | 国際規格 | 企業活用 |
EPD Hub | 海外のEPD(アイルランド) | 建設・電気製品・製造製品エネルギー供給・建築環境等のサービス | EN 15804+A2・ISO 21930・EN 50693・ISO 140n67に準拠 | 国際的に広く環境宣言を行いたい企業に最適 |
SuMPO EPD | 日本のEPD | 日用品その他の工業製品、耐久消費財、食品その他の農林水産業製品、サービスなど、あらゆるものを含む | ISO14025・ISO/TS14027に準拠 | 主に国内における環境宣言に最適 |
SuMPO EPDについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をぜひご覧ください。
SuMPO EPDとは?意味やメリット、取得方法まで詳しく解説【企業事例】
EPD Hubのメリット
ここではEPD Hubのメリットをご紹介します。
海外では取得を義務化
欧州や米国では環境活動に取り組む企業に対して、公共調達において具体的なメリットがあるように基準が作成されています。そのため調達基準において、LCA の実施やEPDの活用の義務化が増え、日本でもEPDへの関心が高まり、取得数が急速に増加しています。EPD Hubは国際的に信頼性の高い検証機関の為、活用する企業が多くあります。
国際基準環境ラベルの重要性
EPDは国際基準の環境ラベルです。環境への配慮を示す重要な手段として、世界中で使用されており、認知度や信頼性が高いという特徴があります。消費者にとって、環境に配慮した製品やサービスを選ぶ際の指標となり、環境意識の高まりや消費活動に対する行動変容へと繋げるための大きなポイントとなります。
第三者によるLCA検証の重要性
EPD の最大の特徴は製品やサービスのLCAにおける情報について、第三者による検証を受ける必要があることです。これにより、EPD の正確性と信頼性が確保され、関連する PCR (Product Category Rule)の要件に準拠していることが保証されます。EPD Hubの第三者検証は、EPD Hubが認定した専門性や信頼性の高い検証ジェネレータが行います。
PCRとは、ISO14025や、ISO/TS14027に準拠した透明性の高いプロセスを経て策定される、製品カテゴリーごとに共通したLCAの算定ルールのことです。
EPD Hubのルールの概要

EPD Hubは、一般的なプログラム指示と単一の製品カテゴリルールにより管理されています。2024 年から発効された新しい規則は、ECO プラットフォームおよびフランスの規制に合わせて更新されています。
ここでは検証プロセスやサポート範囲、選ばれる理由について解説していきます。
EPD Hubの検証プロセス
EPD Hubのプロセスには次のような手順が含まれます。
- EPDジェネレータによる事前検証
これは必須要件です。
- メーカーによる内部レビュー
これは明らかな間違いを避けるために推奨されています。
- EPD Hubによる第三者による検証
これも必須要件となります。
EPD Hub は暫定的に、事前検証プロセスが進行中のツールからの EPD も受け入れます。
EPD Hubのサポート範囲
EPD Hubのサポート範囲は次の5つの分野です。また、EPD Hub は、ISO 14025、EN 15804+A2、ISO 21930、EN 50693、ISO 14067 などの標準に準拠した情報の公開をサポートします。
- 建設製品
- 電気製品
- 製造製品
- エネルギー供給
- 建築環境サービス
EPD Hubを選ぶ理由
EPD Hubが国際的環境ラベルとして選ばれるのは、信頼性の高い EPD の検証制度として公開することが可能だからです。なぜならEPDには、すべての建築製品をカバーする共通のPCRが存在します。。さらにデジタル化された算定、および検証フローにより時間とコストを削減可能です。そして欧州を中心に急拡大しており、グローバル市場での認知度が高いことも大きな要因でしょう。
EPD Hub取得までの流れ

ここではEPD Hubの流れをわかりやすく解説していきます。
必要なデータを収集
EPDの検証を行う製品やサービスに対して、それらを製造する際の原材料やエネルギー使用量などの情報を収集し、1年間の輸送に関わるデータも収集します。
収集したデータをインポートする
すべてのデータを指定のテンプレートに入力し、ソフトウェアにインポートを行います。
製品のLCAの算定を実施
インポートしたデータから、製品やサービスにおけるさまざまな環境負荷を自動で算定します。
EPD申請書類提出
レポートを作成し、EPDの申請書類とともに認証機関に提出します。
EPD Hubが認定した第三者が検証
EPD が公平で標準化された比較可能な情報として公開されるために、EPD を定義する国際規格 ISO 14025では第三者による検証を義務付けています。そのため提出された申請書類はEPD Hubの認定ジェネレータが検証を実施します。
EPDHubサイトで情報公開
検証が終了し発行されたEPD文書は、EPD Hubのウェブサイト上で公開され、誰もが閲覧することができます。
EPD Hub活用事例
ここではEPD Hubの認証を受けた企業の活用事例をご紹介します。
朝日ウッドテック株式会社
朝日ウッドテック株式会社は、カーボンニュートラルを推進するために、挽き板フローリング「オール国産材」(住宅用「LiveNaturalプレミアムオール国産材」、土足用「メッセージハード オール国産材」の両方を含む)において、アイルランドのEPD Hub社のEPD Hub認証を日本で初めて取得しました。
出典:挽き板フローリング「オール国産材」が商品単体の環境負荷情報の認証「EPD Hub」を日本の登録で初めて取得。(朝日ウッドテック株式会社)
ケイミュー株式会社
ケイミュー株式会社は、窯業サイディングおよびスレート屋根材において、国内初となる環境認証ラベルEPDを取得しました。EPD hubにて合計10製品の認証を受けました。
ファーストウッド株式会社
ファーストウッド株式会社は、住宅業界のリーディングカンパニーである飯田グループホールディングスのグループ会社として持続可能な社会の構築や、豊かな地球環境を次世代に残していきます。環境負荷削減につながる取り組みを行い、自社製造の「LVL」で、環境製品宣言(EPD)を取得しました。
出典:当社製造の「LVL」でファーストウッド株式会社が環境製品宣言(EPD) を取得(ファーストプライウッド株式会社)
まとめ
持続可能な経済活動を行うためには、企業は事業活動における環境負荷を積極的に軽減していく必要があります。
EPDをはじめとした環境宣言の取り組みを行うことは、環境への貢献に繋がり、企業の環境価値を高めます。
本記事でEPD hubについての知見を深め、自社に有効な環境ラベル取得への取り組みを実施してはいかがでしょうか。
株式会社ゼロックでは、環境ラベル認定取得まで専門分野からのサポートが可能です。
ご興味がある企業担当者の方はぜひ、お気軽にお問い合わせください。