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ecoinventとは?世界で活用されている環境データベースを解説

公開日 2025.04.08 最終更新日 2025.04.08

松井 大輔

株式会社ゼロック 代表取締役 監修

LCI(ライフサイクルインベントリ)データベースであるecoinventをご存じでしょうか。ecoinventとは、スイスに拠点を置く非営利団体が開発提供しているデータベースです。欧州を中心に海外で広く活用されており、透明性の高いデータベースとして注目されています。

今回はecoinventについて特徴からメリット、また国内のLCIデータベースであるIDEAとの違いなど、わかりやすく解説します。

ecoinvent(エコイベント)とは

ecoinvent(エコイベント)とは

ここではecoinventの概要から設立された目的や背景を解説していきます。

ecoinvent Database(エコイベントデータベース)とは?

ecoinventとは、LCA(ライフサイクルアセスメント)における環境負荷を研究・実施するためのLCI データを提供するグローバル データベースです。

ecoinventのデータベースには、あらゆる業界のあらゆるプロセスや、活動における環境への影響に関する情報が公開されています。LCA に対する標準化された透明性の高いアプローチを提供しているため、ecoinvent データベースは、研究者や企業、政策立案などに活用されています。

具体的には、経済活動に関連するエネルギーと物質の流れ、温室効果ガス排出量、および資源消費に関する一貫した最新のデータを提供しています。また農業、エネルギー生産、製造、輸送、廃棄物管理など、幅広い分野をカバーしているのが特徴です。

ecoinventのデータベースを通じ、一般消費者は企業の環境の持続可能性に関して、信頼性が高く関連性のある情報にアクセスすることが可能です。

ecoinventの歴史と目的

ecoinventの目的は、環境評価のための包括的で一貫性があり、透明性のあるLCI データベースを作成することです。さらにLCA コミュニティ向けに透明性と信頼性のあるデータベースの開発促進を目指しています。

1990 年代初頭、スイスのさまざまな組織が協力して公開 LCI データセットを作成し、スイスのサプライ チェーンに重点を置いた「BUWAL250 データ プール」が誕生しました。同時に、信頼性の高い LCA データの需要が高まり、1990 年代後半に ecoinvent プロジェクトが結成されました。 

最初のecoinvent データベースは2003 年にリリースされ、その後、更新と大幅な改訂がなされ、2007 年にバージョン2が発表されました。

2013年にリリースされたバージョン3では、世界的に使用するための技術基盤と方法論が強化されました。2013 年、ecoinvent は独立した非営利団体となり、環境評価のための高品質なデータを世界規模で提供しています。現在ecoinvent は、世界で最も広く使用されている LCI データベースです。

ecoinvent活用の流れ

ここではecoinventのデータ送信プロセスについてご紹介します。

1. ecoinventに問い合わせ

データセットの種類に関する情報を明記し、問い合わせを行う。

2. 提出ファイルを作成する

提出に必要なデータを収集し、ファイルを作成します。ecoinvent データセットは、一貫性と透明性のたかいデータであることが重要です。

3. 専門家によるレビュー

対応する分野の独立した専門家によって、データの品質やデータセット内のエラーや不一致をチェックされます。

4. 承認

データが承認されたらecoinvent データベースにリリースが行われます。

5. 公開

公開されユーザーがアクセス可能になります。

データベース費用

ecoinventのデータベースにかかる費用は以下のようになります。2025年4月以降、永久ライセンスは利用できません。そのため新規ユーザーは、商用モデルと教育モデルのサブスクリプション ライセンスを購入できるようになります。

費用内容
コマーシャル3,800ユーロから(1年目の料金)・名前付きシングルユーザーライセンス(1回限りの料金)
・2年目以降の年間メンテナンス料金は750ユーロ等
企業年間6,000ユーロから(年間サブスクリプション)・社内ユーザー向けに複数のライセンスを購入したい組織に利用可能
・5人以上の個人ユーザー向け等
開発者年間4,500ユーロから(ソフトウェアにecoinventデータを統合し、サブライセンスする)・ecoinventデータのサブライセンスを希望するソフトウェアツールプロバイダーに利用可能
・選択した LCIA スコアおよびソフトウェアツール
・ユーザーごとの年間サブスクリプション等
教育関係3,800ユーロから(1年目の料金)・LCI、LCIA、UPR、レポートを含むデータベース全体への無制限アクセス
・3つのシステムモデルにリンクされたデータ: カットオフ等

詳しくは、下記をご参照ください。

ライセンス(ecoinvent)

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは

LCA は、製品、プロセス、またはサービスのライフサイクル全体にわたる環境への影響を評価するために使用される方法論のことです。

LCI (ライフサイクルインベントリ分析)とは

LCIとは、前述したLCAによって対象製品やサービスを通じて排出されるCO2や、発生する廃棄物などの環境負荷物質の量を計算したデータのことを指します。

LCAについてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?わかりやすい徹底解説

ecoinventの特徴とメリット

ecoinventの特徴とメリット

ecoinventには以下のような特徴とメリットがあります。それぞれを詳しく解説していきましょう。

国際的で信頼性の高いデータを公開

ecoinventは、欧州のライフサイクルアセスメント(LCA)分野で非常に信頼性の高い重要なデータベースの役割を果たしています。厳格な品質管理プロセスのもと、最新の科学的知見や産業の現場からのデータが常に更新されています。そのため、透明性の高いデータとして多くの企業、専門家に信頼されています。

幅広い分野に対応

ecoinvent データベースには、さまざまな分野を網羅した 20,000 を超える信頼性の高い データセットが含まれています。たとえば、それぞれの分野に対応する影響カテゴリ には、「気候変動」、「人体毒性」、「水利用」、「土地利用」など のライフサイクル影響評価 (LCIA) スコアが用意されています。 そのためユーザーは、サプライ チェーン全体にわたって自社製品の影響を追跡し、その結果を把握することができます。

以下にecoinventの対応分野をまとめました。

農業、畜産、建築、建設、バッテリー、化学薬品、プラスチック、エネルギー、林業、木材、金属、繊維、パルプ、紙、輸送、観光宿泊、廃棄物処理、リサイクル、水道等

グローバルに活用が可能

ecoinvent では、世界平均生産量をカバーするグローバル データセットが作成されます。これらのグローバル データセットは、国際データに基づいて世界平均状況を正確に反映するように個別に作成されています。ecoinvent は、バックグラウンド データベースとして、選択した製品やサービスに最も関連性の高い地域での活動を網羅することを目指しています。そのため、地理的位置グローバル 、または世界平均生産量を表すその他の地域を使用して、グローバルレベルで活用が可能です。

ecoinventはグローバル企業に有用

ecoinventは国際規格に準拠

ecoinventのデータは、LCAに関する国際規格であるISO14040およびISO14044に準拠しているため、LCAの国際的なプロジェクトにも活用ができます。以下にそれぞれの特徴を簡単に明記します。

ISO14040LCAの基本となる規格である
ISO14044実務的に使いやすい形式である

さまざまな環境影響評価が可能

さまざまな環境影響評価が可能

ecoinventは、カーボンフットプリントをはじめとしてウォーター フットプリントなど、環境フットプリントに焦点を当てた評価も行っています。鉱物資源の利用状況やエネルギー使用状況など、あらゆる環境評価を行える点は、多義に事業活動を行うグローバル企業にとっては非常に有用性が高いといえます。

IDEAとの比較

国内にもecoinventと同様のLCIデータベース「IDEA」が存在します。IDEAとecoinventでは、具体的にどう違うのか比較しながら解説していきます。

IDEAとは日本の LCIデータベース

IDEAは、日本国内の製品やサービスの環境負荷情報を提供している国内最大のインベントリーデータベースです。⽇本国内のほぼ全ての事業における経済活動をカバーし、全データを「⽇本標準産業分類」「工業統計調査用商品分類」に基づいた分類コード体系で作成しています。日本の平均的な製造方法やサービスのデータであり、現在約5,300のデータセットを保有しています。

IDEA の特徴

原単位あたりの環境負荷量の数値を提供するだけでなく、各製品の製造プロセスの入出力データ(単位プロセスデータ)まで公開しています。さらにデータ品質も考慮可能で、日本の平均値をデータにしており、常に品質を評価し透明性が高く、信頼性が確保されたデータベースです。

IDEAの環境影響領域は以下の18領域です。

気候変動・オゾン層破壊・都市域大気汚・光化学オキシダント・酸性化・土地利用・鉱物資源消費・化石燃料資源消費・森林資源消費・水資源消費・人間毒性(発がん性)・人間毒性(発がん以外)・生体毒性(陸域生物)・生体毒性(水生生物)・富栄養化・電離放射線・廃棄物・騒音

IDEAのデータ作成の流れ

IDEAのデータ作成の流れは以下のようになります。

統計による積上げインベントリデータを作成する

エネルギー統計(石油等消費構造統計など)や、工業統計、各種動態統計、産業連関表などのデータを作成する。

プロセスデータによる積上げインベントリデータの作成を行う

実プロセスの調査やプロセスシミュレータの活用をおこなう。

既存インベントリデータからのデータ構築

国内外の報告書や論文などからデータを収集する。

料金形態

IDEAの料金形態は以下のようになっています。

【1年間】

一般企業(1ライセンス)20万円(税抜)
中小企業・社団・財団(1ライセンス)11万円(税抜)
社団・財団法⼈、省庁・⾃治体・NPO 等(1ライセンス)11万円(税抜)
アカデミー(1ライセンス)3万円(税抜)

IDEAと ecoinventの違い

IDEAと ecoinventの違いを表にまとめました。

項目ecoinventIDEA(日本版)
運営機関ecoinvent Association(スイス)国立研究開発法人産業技術総合研究所(日本)
言語英語日本語
データセット数約20,000以上約5,300
影響領域LCAI手法によって、気候変動の他、生物多様性、水資源消費等、全18領域以上気候変動の他、生物多様性、水資源消費等、全18領域
特徴・世界で最も広く使われているデータベース
・グローバル規模での主要産業(製造・農業・輸送・電力・廃棄など)を広くカバー。
・日本で最も使用されているデータベース
・⽇本国内のほぼ全ての事業における経済活動をカバーし、全データを「⽇本標準産業分類」「工業統計調査用商品分類」に基づいた分類コード体系で作成

参照:IDEA

まとめ

LCIデータベースであるecoinventについて、さまざまな角度から詳しく解説しました。また国内のデータベースであるIDEAとの違いもご理解いただけたのではないでしょうか。

いまやLCAを通じた環境負荷の公開は、持続可能な社会構築に対して責任を持つ企業にとって、必須ともいえます。しかしLCA手法に関しては専門的な知識が必要です。

株式会社ゼロックではecoinventやIDEAなどの活用や、LCAや環境評価に対して専門的な知識と経験から支援が可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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