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専門家コラム

埋もれている地域資源の価値を創出する “サーキュラーエコノミニー”の実践

公開日 2024.07.26 最終更新日 2024.08.15

江川 健次郎

有限会社
ウイルパワー

1 表題

有限会社ウイルパワー代表の江川です。

当社の活動「埋もれている地域資源の価値を創出する “サーキュラーエコノミニー”の実践 」について、お話いたします。

2 自己紹介

まず簡単に自己紹介をいたしますと、1991年に個人事業者としてリユース業を創業し、2001年に有限会社ウイルパワーとして現在に至ります。

現在、リユースショップ 「リユースマン」を岡山県倉敷市と香川県丸亀市で運営しています。

また、2015年から中古品・不要品を開発途上国に輸出を行なっています。

店舗名を昨年春に、「リユースマン」に変更しました。このリユースマンという名称はアメリカの消防士「ファイアーマン」に因んで付けてます。

アメリカでは、消防士は市民から尊敬を受け、子供たちのヒーローです。
リユースマンも ファイアーマンのような憧れる存在になることを目指して30年間使っていた店名を変更しました。

また、リユース業者の全国組織一般社団法人ジャパン・リサイクル・アソシエーションの代表理事と

家財整理業者の全国組織一般社団法人家財整理相談窓口の理事を兼務しております。

3 活動原点

当社の活動は、自分の仕事である循環ビジネスの存在価値を高めたいという思いが出発点です。

経済と言えば 生産・消費が経済の主流です。

経済を血液で例えると、生産が心臓から手足へ流れる「動脈」です。
手足から心臓に戻る「静脈」が循環ビジネスです。
誰もが知っているように、動脈と静脈がなければ、血液が循環しないので、人間は生きていけません。社会も本当は同じはずです。

しかし、「循環経済」の社会的認識は低いままです。

大量生産・大量消費で発展してきた日本では物が溢れ、利用価値のあるものが大量に廃棄されています。これらの廃棄物を日本特有の資源として活用し、世の中に役立つ仕組みをつくりたい。

循環ビジネスの良さや 存在価値を高めたい。

そして、自分の仕事に誇りを持ちたい。

もっとわかり易く言えば、一番身近な妻や子どもに「お父ちゃんカッコいい!」と思ってもらいたい!というのが活動の原点です。

4 活動目標

当活動の目標ですが、「活用されてない地域資源(モノ・人・思い)を役立ちに変えて、循環ビジネス、サーキュラーエコノミーの存在価値を高めること。そして、資源循環によって「元気で優しいまちづくり」を行なうことです。

SDGs目標で言えば、メインは11番「住み続けられるまちづくりを」と12番「つくる責任、つかう責任」にあたります。

当社は20年前から、ユニフォームの背中に「 リユース魂 We save The Earth」とロゴを入れています。

「俺らが地球を救うんじゃ!」という意気込みで仕事をしています。

5 日本のごみ事情

当社の活動を知ってもらう前に、サーキュラ―・エコノミーの背景である日本のごみ事情をお伝えします。

環境省の令和2年度の資料からですが、日本の家庭から排出される一般廃棄物の総重量は4,167万トン。わかり易く言えば、1日で大型トラック 1万1千台分、1時間で475台分のごみが出てるということです。

そして、焼却やリサイクルされ、364万トンが 埋め立てごみとして 最終処分されているのが実情です。

しかし、埋め立てできる最終処分場は増やすことが出来ないので、限界があります。今の状況から推定すると22.4年後には処分できなくなります。

日本のごみ処理費用ですが、ごみ処理事業の総経費が約2兆885億円です。ちなみに産業廃棄物の総排出量は単位が一桁多くなって、約3億8千万トンとなってます。

この現状を変え、ごみを捨てずに有効活用することができたら、社会や環境が良くなるはずです。

6 都市鉱山

そして、日本の街中に眠っているレアメタルなど有用な金属のことを都市鉱山と言いますが、1年間に使用済み小型家電の廃棄量がおよそ65万トンです。

小型家電には希少金属が含まれていて、有用な金属が28万トン、金額にして年間 およそ844億円分あります。簡単に捨てないでくださいね。

希少金属として、金の話をしますと、金山の金鉱石1トンから約5gの金が採取されてます。金脈を発見して、穴を掘って、鉱石を運び出し、製錬して、1トンあたりわずか5gしか金が取れないんです。

これを、携帯電話1トンに置き換えてみると、約280gも採取できるのです。

簡単に携帯電話を捨ててないでください。

7 日本の都市鉱山

では、日本にはいったいどれだけ、都市鉱山として金が眠っているかというと、約6,800トンです。

金額ベース65兆4,360億円です。ちなみに日本の2023年の国家予算が114兆3,800億円です。現在、世界の金の埋蔵量が4万2千トンだと推定されているので、世界の埋蔵量の16%が、日本の街中に存在しているということです。

8 ごみを資源循環させるには!

では、資源循環させるにはどうすれば、いいか!というと皆さん、よくわかっているとは思いますが、分別、選別をするかどうかで決まります。

分別により、リサイクルが可能です。簡単なことですけど、分別しないで集められたモノは資源じゃなく、ごみになってしまいます。リユースの場合は選別して、ごみと同じ扱いでなく、リユース品として取り扱わないと、ごみになってしまいます。

例えば、使用できるタンスを粗大ごみとして一緒に取り扱えば、回収した時にキズや壊れたりしてリユース品になりません。あくまでも商品価値がなければ、どんなに高価なものもごみになってしまいます。

9 活動内容

活動1  

そして、当社の活動内容をお話しします。
当社のリユースショップには、ここ10年ほど前から高齢化社会を背景に家じまいによる家財品の買取り依頼が急増しています。ただ家じまいからの家財品は 2.30年前から貯めこんでいた贈答品であったり、古い婚礼タンスなど、利用価値があるんだけど、国内で流通しない商品価値がないものが大半で、ほとんどの家財品が廃棄されています。当社はその利用価値のある家財品を選別して開発途上国へ輸出し、現地企業と連携して流通の仕組みをつくっています。高齢者の方は物のない時代を過ごしてきているので、捨てることに物凄く抵抗があります。

そのモッタイナイ思いを 海を越えて、現地の生活の向上と雇用に役立てています。 
2015年から今年の5月までに、輸出件数74件 約750トンの家財品をフィリピンやタイなどで海外リユースを行なっています。

海外リユースとして、国内の中古品・不要品を開発途上国に輸出する場合、新品商材と違い、品種・サイズ・形状・個数が不揃いで船舶書類の作成が煩雑になり手間が掛かります。また取引金額も低いので、非常に効率の悪い作業になります。

そこで、当社が独自開発したスマホを活用し画像と積載物を連動させる「海外リユースバン詰システム」を運用することで、船舶書類のインボイス・パッキングリストの簡略化によって海外リユースの促進と、コンテナの積載物を可視化することで国際問題化している廃棄物の不正輸出の健全化を図っています。

活動2 

店舗に設置しているリサイクルステーションで、家庭からの資源ごみ アルミ缶・スチール缶・ペットボトル・ダンボール・新聞・雑誌・古着を、地域住民の協力によって分別回収しています。9年間で資源ごみ1,021トンを地元のリサイクル企業と連携して再資源化しています。

特にコロナ禍になってから、ビール缶・缶酎ハイのアルミ缶と宅配の段ボールが急増しています。

毎週、大型トラックで3台から4台引取りに来ています。

活動3 

この9年間のリサイクルによる収益金が約650万円です。そのうち3割をNPO団体や福祉活動への寄付に充て、残りを高齢者・障がい者雇用に活用しています。この7年間で高齢者雇用は延べ1,800人、障がい者雇用は延べ2,700人になっています。廃棄資源を循環させることで、地域の活用されていない人たちに活躍の場をつくっています。

もったいない意識の高い高齢者の方には 選別を行なってもらい、障がい者の方には使用済み食器などのガラスや陶磁器を種類毎に分けてもらっています。

これは地道な作業で大変です。同じ作業を繰り返すことが得意な障がい者の方たちが居てくれて大変助かっています。

使用済み食器で言えば、1つや2つでは商品価値がなくても、大量に集まると価値が生まれます。

8年前から始めたリサイクルの収益金を福祉団体へ寄付する活動は、当初 偽善と思われるのがイヤで公表していませんでしたが、SDGsが浸透した4年前から公表を始めました。

このSDGsの世界観は、良いことを、胸を張って行っている といえるところが素晴らしいところです。

当社は、SDGsを知ってから、公表するだけでなく、表に出て、どんどん資源循環に関する活動を行うようなりました。これはSDGsが活動のキッカケです。

活動4

2年ほど前から始めた活動ですが、地元住民の協力のもと、読み終わった絵本を集め、岡山のNPO団体コミュニティフリッジや香川県の丸亀放課後留守家庭児童会を通じて子供たちに寄付活動を行なっています。2年半で1,252冊の絵本を届けることができてます。

そして、10年前から、当リユースショップで販売しているオフィス家具に限ってですが、リユースによるCO2削減効果を知ってもらおうとカーボンフットプリントとして、リユースすることで二酸化炭素の削減できる量を表記して、少しでも資源循環に興味を持ってもらうようにしています。

活動5

10年前から近隣小学校(ウチの駐車場から校門まで50mほどのところにある本当に近くにある小学校)なので社会科学習で当店に来てもらい、リユース・リサイクルの状況を伝えています。
子供たちは素直に話を聞いてくれて、後からお礼のお手紙までいただけるので、本当にこの活動を続けていきたいと思っています。ちなみに、この2年間はコロナの影響でおこなっていません。

活動6

2021年9月から、近隣小学校と連携して、コロナ禍で家計が厳しい家庭の援助を目的に、卒業生から使わなくなった学生服を在校生たちに使ってもらおうと「愛のリユース制服」の活動を始めました。

この活動は、まだ入荷する制服が少なく、欲しい人に行き渡らないので、まあこれから広めていく活動です。

活動7

2022年3月から、地元のスーパーと連携して、毎週日曜日に7店舗から賞味期限が短い食材を回収しています。集めた食材はNPO団体を通じて、生活困窮者44世帯に供給しています。

この活動も始めたばかりですが、これから広がっていきます。

2022年3月6日から2023年5月22日までの1年2か月間で3トン400㎏のフードロスの削減を生活困窮者支援に繋げてます。

活動8

2022年4月7日に「不要な物で世界を元気にする活動」を世界の貧国地域で生活支援を行なっている地元岡山のNPO団体アムダ社会開発機構と連携協定を結び、寄付希望者(個人・法人)がリユースマンに持ち込んだ不要品・中古品の査定額をアムダ社会開発機構がおこなう世界の貧困地域の支援活動に充てる仕組みを始めます。

これからの活動ですが、要らない物で世界を元気にできる仕組みに関わることができることが、非常に嬉しいことです。また、要らない物の査定が3000円以上であれば、税控除が受けれるんで、不要品が世界の役立ちに変わり、不要品寄付者に対してもメリットが与えられる点が気に入ってます。

10 最後 

今までお伝えした活動は、循環経済が社会に役立つことを実践している活動です。

資源を循環させようとしたら、分別や選別・取り扱いという手間が掛かります。だからこそ、資源循環は、「誰かのため」、「未来のため」、に行う「愛」があるんです。

強く言いたいのは「生産だけが経済じゃない!」んです。

活用されてない資源を活かして「元気で優しいまちづくり」ができる循環ビジネスは、とにかく凄いんです。このSDGs活動を通じて、ごみを捨てるから「ごみを活用する」文化にしたい。

そして、循環経済の地位の向上と存在価値を社会に知らしめる活動を私たちがけん引していきたいと考えています。

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