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ニュース解説

CBAM証書の初回価格は75.36ユーロ。日本企業に求められる今後の対応

公開日 2026.04.21 最終更新日 2026.04.21

松井 大輔

(監修者経歴)
東京大学 醍醐研究室卒業、株式会社ゼロック 代表取締役、東京大学 先端学際工学専攻 博士課程、EPD検証員、省庁事業や上場企業のLCA関連コンサルティング業務等幅広く対応

要約

  • 欧州委員会が、2026年Q1のCBAM証書価格を75.36ユーロで初公表
  • 2026年は四半期ごと、2027年以降は週次で価格が更新される運用に移る
  • 日本企業も、排出量データの提示と見積・契約条件の見直しを進める必要がある

概要:CBAM証書価格が初公表。排出量が実際のコストに

欧州委員会は2026年4月7日、CBAM証書の初回価格として、2026年1〜3月分に適用される75.36ユーロ/tCO2eを公表しました。

これまでCBAMは「まずは報告対応が必要な制度」と受け止められがちでしたが、今回の公表によって、排出量に応じて実際にコストが発生する仕組みであることが、よりはっきり見えるようになりました。つまり、製品の排出量が多いほど、将来の負担も大きくなるということです。

2026年のCBAM証書価格は四半期ごとに算定・公表され、各四半期の輸入分に対応する価格として扱われます。さらに、2027年以降は週次で価格が算定・公表され、証書の購入は2027年2月以降、CBAM Common Central Platformで行われる予定です。

法的な申告義務や証書購入義務を負うのは、EU側の輸入者、またはその間接通関代理人として認可を受けたCBAM申告者です。

ただし、EU向けに鉄鋼、アルミニウム、肥料、セメント、水素、電力などの対象品を供給する企業にとっても、排出量算定の精度、算定根拠を示せる体制、さらに価格変動を踏まえた取引条件の見直しは、これまで以上に重要になります。

CBAM証書価格はEU ETSの価格に連動して決まるため、今後は為替と同じように炭素コストの動きも継続的に把握し、製品ごとの採算管理に反映していく視点が求められます。

背景:CBAMは移行期間を終え、本格実施の段階へ

CBAMは2023年10月に移行期間へ入り、2025年末までは四半期ごとの報告が中心でした。2026年1月からは本格実施期間に入り、EUでは年間50トンを超えるCBAM対象品を輸入する事業者等について、認可取得が必要となる運用に移っています。

前回配信した記事でも触れたとおり、3月時点では「いつ価格が公表されるか」「証書の購入環境がどう整うか」が焦点でしたが、今回、その最初の答えが示されました。あわせて、欧州委員会は2026年1月上旬時点で、4,100超の事業者が認可を取得したと公表しており、制度対応はすでに実運用の段階に入っています。

つまり、CBAM対応は「制度を知ること」に加えて、「実際にいくらの負担になるのか」を見ながら判断する段階に入ってきたといえます。

時期(フェーズ)制度と証書価格の決まり方日本企業に求められる実務とアクション
2023年10月〜2025年12月(移行期間)【支払いは発生せず、四半期ごとの報告が中心】
CBAM報告書を四半期ごとに提出する期間。
【算定体制の整備】
対象製品の確認、排出量データの集め方、算定ルール、社内外の情報連携体制を整える。
2026年1月〜2026年12月(本格運用・初期)【四半期平均価格が適用】
各四半期の輸入分に対し、四半期終了後にEU ETSオークション価格の平均をもとに価格が公表される。Q1 2026の価格は75.36ユーロ/tCO2e。
【将来負担を見据えた予算化と契約条件の見直し】
2026年の輸入分は将来の証書購入義務につながるため、価格転嫁、契約条件、採算管理の考え方を見直す。
2027年1月〜(本格運用・定常化)【週次平均価格へ】
価格は週次平均で算定・公表され、証書の購入は2027年2月以降にCommon Central Platformで行われる。
【継続的な採算管理】
炭素コストを継続的に確認し、製品別・取引別の採算管理や価格交渉に反映する。

コンサルタントによる解説

今回の価格公表により、CBAM対応の重心は、「報告をきちんと行えるか」という手続き面の課題から、「そのコストをどう見積もり、取引条件にどう織り込むか」という、より実務的な判断へ移りつつあります。

日本企業が今、優先的に進めたい具体的な対応は、次の3点です。

・自社製品の対象CNコード(関税分類番号)の再確認
・実測値(一次データ)に基づく排出量データを、継続的に収集・管理できる体制の整備
・炭素価格の変動を踏まえた、見積もりや契約条件の見直し

特に注意したいのは、EU側の輸入者が申告主体であっても、日本のサプライヤーに対して「実際の排出量データ」や「算定根拠」の提示が、これまで以上に求められる可能性がある点です

。今後、CBAM証書価格はEU ETSの価格動向に連動し、2027年以降は欧州委員会が週次で価格を算定・公表する運用へ移行します。したがって、為替変動と同じように、炭素コストの動きも継続的に把握し、製品ごとの採算管理や価格交渉に反映していく視点が重要になります。

制度の根底にあるのは、排出量を減らす努力と、そのデータを説明できる状態を両立させることです。こうした対応を積み重ねている企業ほど、今後の価格交渉や取引継続の場面で、自社の状況を説明しやすくなると考えられます。

(注:本稿は2026年4月21日時点の公表資料に基づいて作成しています。制度の運用ルールや期限は、今後のEU側の見直しにより変更される可能性があります。)

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